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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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対等な3人で


「ああ、ロテュス殿下。よく来てくれたね。」

広場のモニタースペースで竜樹は、転移で戻ってきたロテュスの頬に手を寄せて、ん?と不思議そうな顔をした。が。

ギュ!と目を瞑ったロテュスに、ふるる、と柔く振って視線を落とされたので、そして直後に、取り繕うように、にこ、と笑われたので。後で、後でか、と優先順位、まずはジェム達の所、布屋プティフールへ転移で送ってもらう事にした。


仲良し、に見える2人に、ルムトンとステューが、キャア!とほっぺに手、興奮して。

「羨ましい!」「美人と平凡!」

美女は美人とイコールであるが、野獣にはならない所が、竜樹である。

スタッフ一同が、音声や映像を調整したり子供達のイベントのタイミングを逃さないように見守ったりしながらも、微笑ましく、竜樹とロテュスの2人を見ていて、だけれど。


ロテュスの心だけは、1人、ホッとしたのとギザギザの痛みとに、泣いていた。


「転移お願いするよ。あのモニターのお店、大丈夫かな。ジェム達がお世話になったお店なんだけど、してない借金被せられて、潰されそうなんだって。」

「助けるのですね!」

ニコリ!と顔を上げて微笑んで。


ロテュスは、竜樹に会って、ザクザクぶわっ!と気持ちが盛り上がって、そしてスッと落ち着いたのが分かった。魔法のような、とはこの事か。

竜樹様がいてくれたら、自分は良い。良くなる。気持ちが汚れた自分だけど、すとん、と胸に落ちる。


「大丈夫です。転移できます。じゃあ行きましょう。」


「あっ待て、竜樹、俺ら•••!」

タカラとマルサ、護衛達が慌てたけれど、ロテュスは竜樹にギュッと抱きついて、転移してしまった。

竜樹に早く、ギュッとしたかった。



「モティフ親父さん?それから、フィルル奥さん、でしたっけ。初めまして、ギフトの竜樹です。あの、ちょっと待ってね。まだ人が揃ってなくて。ロテュス殿下、まだ転移何回かできる?」

布屋プティフールにて、問われた言葉に。

「何回でも出来ますよ。魔法は得意なんです。それに、竜樹様の為とあれば、その、何でもできます!」

驚き、動きも止まった店主と奥さんが、ええ?!と今にも言いそうな顔で。竜樹とロテュスを見ていて。

柔らかな色彩の布達。

ふんわり揺れる、揺れる、壁に掛かった反物の端、垂れた布。


竜樹の為に、何でもしたい。

できる事なら、何でも。


また竜樹と、転移しながら呼んでくる。商人の、クレール・サテリット氏、それから、スフェール王太后様とその護衛。

アシュランス公爵家にやっかいになっている、ヴェール侯爵家のアトモス。

モニターからの情報や、竜樹の行った事がある場所、そして会った事がある人物を特定して転移し、全員呼んでくる事ができた。竜樹が、ロテュスの、『エルフのまごころ』を飲んだから、2人には結びつきがあり、会った事がある人も紐付けられる。

魔法が得意で良かった。竜樹様のお役に立てる。


集めるべき人を集め終わり、そして。お役御免か、ふと息を吐く布屋プティフールにて。全員、裁断台の周り、椅子に座って、こちらを見ている。竜樹が話し始めるのを、待っているのに。

竜樹はロテュスに向き直り、腰を抱くと。


「ロテュス殿下、ありがとう!そして、何故、殿下は涙ぐんでるの?」


ここが聞きどき!と、ぶっ込んできた。エルフ特有の美しい顔、赤くなり湿った目尻を、優しく指で撫でれば。


ロテュス王子は、ひゅ、と息を吸って、そして。

言いたくない、と思ったけれど、言わないでもっと性格悪くなりたくない、と胸張り裂けそうに。


酔っ払いのイーヴはとても嬉しそうに、笑っていた。蔑みの、醜い表情で、ロテュスの心を見透かして。

『そのラフィネって女が死ぬのを、アンタ待ってるって事じゃない!超性格悪う。』


ぎゅう。胸が痛い。

ぱくり、と口を開いた。


「わ、私、性格悪いから。って気づいたから。ラフィネさんが、死ぬのを、待ってるって、そんなのーーー酷いんだって。」


応えを待つ、審判を待つのは、誰でも心が痺れそうに恐ろしい。

震え、手をもじもじさせて俯く。


ラフィネさんも竜樹様も、きっと、ロテュスを、何て失礼な事を言う子なんだろう、でもまごころを飲んじゃったし、仕方ない、子供だし、って思ったに違いないーーー。



なのに、すぐに朗らかに。

あはは、と竜樹は笑った。


「そんなの俺も性格悪いじゃんね。ラフィネさんと仲良くしながら、ロテュス殿下もキープしてるんだもんね。性格悪い同志、仲良くしようよ。」


撫で撫で、と頭を撫でる。

弾かれたように頭を上げ、竜樹を見ると、いつもの、穏やかな、温かな眼差しが、ロテュスに降りていた。


あーーー。


「それに、ラフィネさんも、案外私も性格悪いのよ、って言うかもよ?子供達の未来を見てもらうのを、押し付けてるんです!なんて、言いそうじゃない?」

うっふっふ。竜樹は、ニパッと笑う。笑っちゃう。


だから、むぐ、と口を噤んだ。涙を堪えた。

竜樹様は、同じ所に、降りてきてくれる人。ラフィネさんだって、そうだ。ロテュスを、上から、失礼な子ね!なんて、言う訳なかった。

2人は、ロテュスを、ちゃんと対等に、未来の繋ぎ手として、見てくれてるんだ。


ラフィネと、竜樹と、ロテュスと。

不思議な関係だけれど、3人、手を繋いで、助け合って。


「竜樹様。竜樹様は、どうして私を、そんなに可愛がって下さるの?」


不思議。

ギュッと抱かれて、背中をポンポンされて、見上げたロテュスは、しっとり馴染んで。竜樹のショボショボした、人の良さそうな目に、視線を合わせた。


本当に不思議である。

勝手に、『エルフのまごころ』を飲ませて。

勝手に、人生を長くさせて。

怒ったって良かった。

だって、人ならば、仲の良い知り合いが皆、先に死んでしまうんだもの。ニリヤ殿下も、ジェムも、サンだって、可愛がっている子達も、見送らなくてはならない。それは、寂しくて、寂しくて、辛い事。

長生きを両手をあげて喜ぶような事をしなかった、竜樹なら、きっと長生きの良くない所も、思い至ったに違いない。

それで、ラフィネが死んだら後は一緒に、なんて、ずうずうしいロテュスに。


「可愛いから可愛いよなあ。家族になる子だもの。もう、何か、一緒に生きていくんだな、って納得しちゃったの。まごころもらって、ロテュス殿下の心が、俺の中に入ったから、かなあ。貰ったら、あげたい。俺の気持ちも。」

そりゃあ、ラフィネさんに対する、あー、赤ちゃん一緒に作りたいな、って気持ちとは、少し違うよ、まだ。

「でもね、不思議と、2人と、半分こに一緒だな、って気がしてる。2人と縁を結んでおいて、言う事でもないのかもしれないけど、俺、浮気はしないタチだよ。そんなに大勢に、気持ちが分けられない。助けて、助け合って、パートナーとして、甘えたり甘えられたり、引っ張ったり、引っ張られたり。ロテュス殿下がまだ子供で、そうしてとっても素直な気持ちの子だから、丁度良い所がリレーするみたいにして、一緒にいられるのかも、しれないね。」


これからも、よろしく、これから先、ずっとよろしく。


「•••3人で、仲良く、できる?」

「普通とは違うけど、きっとできるよ。ラフィネさんと、ロテュス殿下と、まあ俺で。」


ふわ、ふわわ、と満たされる。

口角が、自然と上がってゆくのが、分かる。

納得しちゃったのか。

じゃあ、しょうがないよね。

性格悪い3人で、仲良くしたら良いよね。


ニッコリと、ロテュスは。

笑顔で竜樹に抱きついて、そして満足して転移で、『酔い処イーヴ』へ帰った。

行きと帰りと、こんなにも気持ちが違うものか。



「ただいま〜!」

「ロテュス兄様!」

「兄様!」

「ああ!良い顔してるね、やっぱり竜樹様なら、お兄様を、お任せできる!」


うふふ。

ロテュスは、腕を後ろに組んで、ゆら、と身体を揺らすと、首を傾げて。

「心配かけて、ごめんね。竜樹様は、私をキープしてて、自分も性格悪いんですって。うふふ。」

ウィエ王女は、酒瓶を片付けながら、うん?と一瞬怪訝な顔をしたけれど。

「うんまあ、そうよね!だったらロテュス兄様がラフィネさんの終わりを待ってる位、なんて事ないわよね!」と笑った。

エクラ王子とカリス王子も、うんうん、と頷く。


「さあ、ここを片付けてしまいましょう。ちょっと考えている事も、あるからね。」

「はーい!洗い物、半端なくあるわよ、この酒場。昨夜から洗い物、してないのじゃない?」

「お料理用の仕入れなんかも、どうするのだろうね。ほとんど食料庫、空っぽだよ。」

「酒瓶の空いたのばっかりある。これ、何処かで回収するんじゃないのかなあ。」

ロテュス王子も、エクラ王子も、カリスもウィエも、王族であるが、ジュヴールで虐げられている生活で、身の回りの事は何でもやったし、それどころではなく王宮の下働きの手伝いをさせられていたので、荒れた酒場の片付けなど、朝飯前である。


はてな?ロテュス王子どうするのだろ?と思いながらも成り行きに、変わらず撮影する撮影隊達大人の間を縫って、倒れたテーブルも起こし、食べこぼしは綺麗に拭き、コップも食器も洗い。

汚れてシワシワの、空色小花のカーテンは浄化して、蒸気を当ててピンと伸ばし。

ねと、としていた床は、浄化した後、モップでゴシゴシ水拭き。さっぱりと。

片付けられていた、テーブルリネンを探し出し、カーテンと合わせたブルーと黄色のあしらいが効いた、可愛いけれどおとなしやかなクロスやマットなどを、ふんわり掛けて。

7卓28脚、カウンター5席の小さな店内は、酒の並んだ棚から天井、隅から隅まで美しく、ピッカピカに磨かれた。


「やったわ•••!」

「綺麗になるものだね!」

「やったね、ふう。」


小一時間も片付ければ、見違える、家庭的な雰囲気の呑みどころ、『酔い処イーヴ』が再生した。


見回して、ウンウンと満足の、腕まくりエルフ達は、次にイーヴの側にいくと。

「お酒、抜いた方が良いわね?」

「だね。竜樹様が、お酒は体内で毒みたいなもん、って言ってたから、毒消しの魔法で消えないもんかな?」

「やってみよう。失敗しても、悪い事がある訳じゃないもんね。」

フンス、とウィエ王女が腕を上げて、カウンターですやすや突っ伏しているイーヴの背中に手を当てて。


「お酒、解毒!」

キュワン!ピカリッ

光った手に、キュワワワ、とドドメ緑のモヤが集まる。きゅ!と握れば、モヤは液体となって、ウィエ王女の手を濡らした。トトト、と洗い場に、雫を垂らさないように向かって、汚れてない方の手で水道の栓を捻り、両手を洗う。

さあっ、と清められて、ふんわりしていたアルコールの匂いも、スッと消えた。


「う、うぅん•••。」

イーヴが身じろぎする。

睡眠不足は、魔法ではどうにもならない。本当ならこのまま、昨夜は飲み通しだったろうイーヴを寝かせておけば、普通に回復するのだろう。だけど。


「アムーレさんとお話させてもらおうか。私が聞いてこようかと思ったけど、人伝てより、直接聞いた方が、納得できるよね。」

だって、私だって、竜樹様に直接話を聞いたら、スーッと楽になったもの。この胸のしっくり感、満足感は、きっと好きな相手から、直接貰うもの。

ニッコリ、ロテュス王子の笑顔は、本当に天使のような、花の笑顔である訳なのだが、それは悪魔の笑顔かもしれなかった。


「ウン、ロテュス兄様、イーヴにちょっと怒ってるの?」

カリスが小首を傾げて聞く。

だって、どう考えても、イーヴに心地よい結果には、ならないだろう。直接アムーレから話を聞いたとして、誤魔化されるかキレられるか。


「そんな事ない•••事はないのかな?うふふ。私、性格悪いから、イーヴが望んでいるかもしれない、旦那様のアムーレとずっと一緒で、ずっと他の女性にビクビクしてなきゃいけないような、そんな愛の結末には、してあげたくないんだよね。」

「じゃあ、どうするの?」

エクラ王子が、イーヴの横、カウンターの椅子に座って、足をふり、とする。


ニッコリ、ニコニコ。

「幸せの、押し売りをしようと思います。」


目が覚めるように、香りをたてて、かろうじてあったお茶を、ゆっくりカリス王子が淹れる。その香りに、イーヴは、うう、ううん、とモゾモゾし出す。トントン、とロテュスはイーヴの肩を叩いて彼女を起こす。

束の間の楽園、眠りの国から引き上げさせて、現実と向き合わせる。


「ん•••んん!?アンタ達誰、あ、あ。さっき会ったエルフか。あー、眠い。でも何か、身体はスッキリね、おかしいわ•••あんなに飲んだのに。」

イーヴは、ゆるゆるのまとめ髪に手を突っ込むと、ボリボリ掻いて。

「アンタ達、面倒見てもらって、悪かったわね。もう帰っていいわよ。私も、もう少し寝るから。」

ふわぁ〜あ、と欠伸をして口を手で覆った。


「そういう訳にいかないんです、イーヴさん。さあお茶を飲んで?」

ロテュス王子の恐ろしい笑顔に、陶器の、やはり青と黄色が取り入れられたカップで勧められて。

あ、ありがと、かなんか言いながら、イーヴは温かい湯気に鼻を突っ込み、茶を啜った。


カウンターに手を置いて、イーヴの横、何なら肩に手が触れる程近くで、ロテュスは続ける。

「アムーレさんに、浮気なのかどうなのか、今後イーヴさんと、どうしていきたいのか、聞いて来ようと思っていたんですけど、やめました。」


ブフ。

イーヴがお茶を、軽く噴く。

口を甲で拭いながら、イーヴは、え、えええ?!と半目を瞬かせる。

「そ、そりゃ良かったわ。そんなの知りたくないわよ。」

正気に戻ったイーヴは、事を荒立てたくないようである。だがしかし。


「いえいえ。知らない訳にはいきません。私、幸せの押し売りするって決めたんです。だから。」


「今、アムーレさんとフランカさんを、ここに呼んできますね!あ、あと、2人の伴侶を持つ男に必要なものをアムーレさんに分かってもらうために、ラフィネさんにも来てもらいます!」


は、はあぁ!?


イーヴは目が覚めた。

お茶美味しいな。久しぶりに飲んだ。いやいや。現実逃避している場合ではない、このエルフ、何を言い出すのか。

「ちょっと、私はあの2人に会いたくなんか!それにラフィネって、誰よ!」


にん、と笑うロテュスは、やっぱり怒っているのかもしれない。

「ラフィネさんは、竜樹様の奥さんです。そして、私は、竜樹様の未来の伴侶です。妻と言っても良いでしょう。2人の妻を、不満を感じさせずに維持するには、足りないものがアムーレさんには多いんじゃないですか?私たちが話せる事なら、何でも話しますから、建設的な関係を築く為、話し合いを致しましょう!」


は、はあぁぁあ!?


「ちょ、まっ!」

待たないエルフ。笑顔のまま、シュインと転移して、寝巻きでフォークを咥えたままのアムーレと、そしてやっぱり、まだ寝巻きでコップを持った眠そうなフランカと。

ちょっと面白そうな顔をしている、辛子色スモックのラフィネを連れて。ロテュス王子はニコニコのまま、とう!と戻ってきた。


「エクラ、お茶を人数分用意して。ここで、イーヴさんとアムーレさんと、フランカさんの将来を見据えた、3人の伴侶の話をしましょうね。」


ぽろ、とアムーレの口から、フォークが落ちた。

若干、青ざめている。

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