チームジェム、慣れたお仕事
インタビューは無事終わり、護衛のテジェとマティータ編集長、フゥイユ記者とでちょちょいと打ち合わせをし。
その間、王子達は、新聞社のカメラなどを弄らせてもらって、お互いに写真撮影したり、楽しく遊んだ。
この、王子撮影の写真を使えたら使おう、撮影者が身近な、自然な写真がきっと表情も良いと、家で家族も撮影して常々思っていたカメラマンとも話し合い、遊ばせながら、結構熱の入った指導である。
「奨学生の件に関しては、新聞社でも前向きに検討致しますね。確かに優秀な人材が得られるのは、なかなか素晴らしい案です。ただ、新聞配りや販売でも子供などに支援はしているから、そことの兼ね合いもありますし。あとは、幾ら出すか、条件はどうするか、何人にするか、など、話し合いさせて下さい。」
「うむ!分かった!無理は言うまい。新聞社も経営があるのだものな。だが、良い知らせを待っているぞ、編集長!」
金貨と銀貨を手渡されて、わっと集まり、にっこにこの王子達である。
意気揚々と帰る道。
お仕事中だけど、もう帰るだけにしよう、だから屋台とかも寄ろう、と効率的に考え、時計も見て、あと1時間かぁ、とのんびり。ギリギリまで働こう、とかしないのだ。
一角ロバをパカポコ、寄り道しいしい、楽しく戻るのであった。
「何だよ王子達、余裕だなあ!」
「ちゃっかりお妃の応募。そして買い食い。俺たちも、これくらい余裕を持ちたいなあ。」
「いやいや俺たちはダメでしょ。やったら遊びすぎ言われちゃうでしょ。一生懸命なルムトンとステューで売ってるんだからさ。」
「そっか。他の皆もお仕事一生懸命してるしね。王子殿下達は、あれだなぁ、遊びも仕事になるっていうかなぁ。街中知って欲しいしね。」
竜樹のフォロー。
「確かに遊びも仕事だね。まあ、王子達は毎日、お国の為にって頑張ってお勉強しているから。たまにはこんなのも、良いんじゃないかな。」
「そっか、そっか。頼もしいね!」
「だね!」
そうなのである。遊びも仕事。
実際、この後、寄ったお店などは、王子様の寄り所、として、なかなか繁盛したし。
一角ロバの引き車家は、「あの殿下達の乗ったロバに乗りたい!」「ロバと写真撮りたい!」と人気になり、街中一周ロバツアーが順番待ちでいっぱい。
ロプ、ラプ、ネプの3ロバも、お花やリボンで飾ってもらい、可愛がられ、美味しいおやつを貰えるようになり、店主もにこにこ(良心的な値段なので、益々人気に)となったのだ。
王子達が遊ぶだけで、経済が活性化されるのである。
だからといって、遊んでばかりはダメですよ、とは、言わずもがな、誰も普段の王子達を知っているから、言わなかった。もし王子達が浮ついてきたら、誰かが忠言するだろう。
その繰り返し、時には褒めて、子供達は育っていくのであるし。
お土産を嬉しく貰いつつ。
笑った王様や王妃様。ワイルドウルフでも、後々まで王族親子、それぞれ一緒に、このお仕事に関係した放送、記事を楽しむ事になる。
そう、アイリスの事を含め、未来のお妃候補の、お話も。
「チームジェムは、何か手慣れてるね。」
「既に迷子を解決し始めてるじゃん。」
ルムトンとステューが言う通り、ジェム達は縦横無尽に大画面広場を歩き回る。
足が悪い、中ではお兄さんだけれどこういう街中でのお仕事探しには不慣れな、ネフレがいるから、ゆっくり加減で、またそれも。
ちょっと気になる、きょろきょろしている人がいれば話しかけるのに丁度良い。
リーダーのジェムは、的確な指示に頼りがいがある。
アガットは、いつも大人しいけれど、着実にするべき事をこなす、実力派。
ロシェは、めんどりのお世話好きな少年だけど、他の動物も好きなのか、犬の散歩人などにも好んで話しかける。お喋り上手。
プランはなかなかの気遣いさん。はしっこいから、話を聞くべき人物を見つけるのが上手い。
そしてネフレは片足が不自由、街中のお仕事に不慣れながら、皆の話を聞いて動くことで、期せずして何故こういう動きをしているのか、テレビ的にはとってもよく分かった。
「ジェム達、久しぶり。またこういう仕事もするようになったのか?あっちの方で、迷子がいたよ。子供、随分取り乱して、泣いて、周りの大人が困ってたみたい。」
若い、生成りのシャツを腕まくり、吊りズボンの男性が、いかにもお使いの途中です、って感じにせかせか歩きながらジェム達に話しかける。
「久しぶりだね!ビビ!街でのお仕事今日だけだよ、新聞売りがあるからね。でも、情報教えてくれて、ありがとな!行ってみて、親を見つけてやる事にするよ!」
「ああ、頼むぜ。全く可哀想な泣き声で、まいっちゃうからさ。」
お口をムン、とへの字にしたビビは、ジェムに銅貨1枚を、お印代わりに渡すと、じゃあ仕事があるから、とスタスタ歩いて去った。
迷子は全員で当たる。泣いている小さな男の子に、大人達が慰め困りきっている所、ジェム達、颯爽と登場。
「大丈夫か、泣くなよ。お兄ちゃん達が、一緒に親を探してやる。俺はジェム。」
「ロシェ。」「アガット。」「プランだよ。」「ネフレ、だよ。」
「お前のお名前、教えてみな?」
ぶっきらぼうだけど、優しいジェムが、頭をクリクリ撫でて、プランも背中を撫で撫でしてやりながら、聞けば、ぐすんと泣き止んで、濃緑髪の身なりの良い男の子は。
「•••ひっく。り、リチャール。お、おにいちゃ、たち、いっしょ、さがちてくれう?」
ポロン、とほっぺに涙、揺れる瞳でジェム達を見上げた。
「任しときな!すぐ見つかっちゃうんだから!」
ニカ!としゃがんでやって笑うジェムは、男前である。
「迷子の〜迷子の〜リチャールだよー!」
「側仕えのティロワー!リチャールいるよー!」
叫びながら、リチャールの手を取って、ホテホテ、広場の管理事務所まで歩く。そこなら放送もしてくれるので、広く情報が伝わりやすい。
ぐしゅん、と涙を拭うリチャールは、お兄ちゃん達とお手手を繋ぐと、フコ!と鼻息吹いて、ジェムを見上げてみたり、ティロワー、リチャールよー、と小さな声で言ったり、キョロキョロ見回したりした。
管理事務所に着く。
「おっちゃん、迷子の放送をお願いします。」
「おお〜!ジェム達か。久しぶりだなぁ!また街の中の事やんのかい?あんた達がいると、細々した事が助かるんだが、まあ、竜樹様のとこへいる方が、幸せだろうねえ。」
管理人のおじちゃんは、丸メガネをシワシワの目尻、更にシワっとさせながら、紙にサラサラ、と「リチャール、4才、側仕えティロワとはぐれて迷子」と書いて、それを見ながらーーメガネを遠く離して見つつーーポチ、と放送のスイッチが入り。
《ピンポンランローン♪ 迷子のお知らせを致します。リチャール君、4才、濃緑髪に仕立ての良い白いシャツ、広場で泣いている所を保護されました。側仕えのティロワとはぐれたそうです。お心当たりの方は、広場の管理事務所までーー》
最後まで放送しないうちに、10代後半かと思われる男の子が、はあはあと息を切らせて、汗をかいてバッと駆け寄ってきた。
「あっ!ティロワ!」
リチャール君が、ジェムと繋いだ手を振り払って、ティロワへ抱きつく。
「ティロワ、ティロワ、ひっく、うええあ!」
「リチャールぼっちゃま!ようございました、本当に!ああ!心臓が止まるかと思った!」
一件落着。
とはいかなくて、管理事務所の人に、ティロワは怒られた。子供から目を離すなんて、危険だよと。
家に帰っても怒られるだろうに、気の毒だが本当に危ないので、仕方がない。リチャールが攫われでもしなくて、本当に良かった、である。
ジェム達は、ティロワに。
「俺たちがリチャールをここに連れてきたんだ。もし良かったら、気持ちだけ、手元にある分から、少しもらう事できる?強制じゃなくて、お願いなんだけど。」
「俺たち、今、撮影やってるんだ。情報屋のお仕事をする、って番組なの。」
プランも説明をすると、息を落ち着かせたティロワは。
「それなら、私が使えるお金で、少しですけど、ごめんね?本当に助かりました。ありがとう。」
と、首にかけた、お財布袋から、銀貨1枚を差し出すのだった。
そんな風にして。
次は落とし物探索。
郷里のお母さんから貰った、大切な刺繍ハンカチを、多分広場で落とした、と涙ぐむ女性には、落とし物回収の子供達ーーいるのである。何でも拾って売る商売の子がーーへ紹介してやり、元々私の物なのに!とゴネる女性を説得して、落とし物回収の子供から買い戻して。
これは結局タダ働きになった。女性が、ハンカチ代以上は払いたくないと言ったので。
「こういう事もあるよ。こんなの良い方で、お金を請求すると怒り出して殴られる時もあった。今は撮影隊もいるし、良い格好してるから、殴りまではしないだろうな。」
「うん、安心だね。」
「タダで親切にしてもらえる、って良い事ではあるけど、あの頃の俺らは、それでご飯を食べてたから、何かをしてもらったらお金を払う、って、少しは考えてくれても良いかな、って思っちゃうね。」
「うん。俺たちが大人になったら、きっと、お小遣いくらいは渡せるような、大人になりてえな。」
「そんなに大金は、貰わないからねぇ。」
慣れすぎていて、切ないチームジェムである。
街中不案内で戸惑って休憩してる商人を、目当ての所へ案内してやり、銅貨5枚を。
そんなこんなをしてる内にも、昔馴染み達から、そしてまた、名前も知らないような色々な人から話しかけられ、また話しかけもし。
「ジェム君達は、ここで働いてて名前が売れてるから、沢山話しかけられるんだね。」
「頼りにされてたんだね!」
その都度、解決に導き、着実にお金を得ていった。
「ジェム、ちょっと良いか?」
ん?と呼ばれて、肉体労働系の男子達に囲まれるジェム達である。
あらら、と見てる方は緊張するが。
「あのさ、お前たち、新聞売りし始めてから、街中にいなかっただろ?その間にさ。」
「布屋プティフールが、とうとう潰れるか、って話になってんだよ。」
「あそこ、親切な親父さんで、俺らも小さい頃、世話になったからさ。ジェム達も散々、仕事貰ったり食い物貰ったりしたろ?」
「竜樹様に、店じまいの片付け金だけでも、始末をつけてやれないかって、聞いてみてくれねーか?不良在庫の布を買い取ったりさ、あの親父、まだ大事な、歴史ある布をとか言ってやがるからさ。」
ジェムは、目を見開いて揺らし。
「プティフールが!?じゃあ、トラムは•••。」
「おかみさんと、その実家に行くみたいだよ。今片付け中だ。あんなに親父さんと仲良かったのに、あの夫婦、トラムも布が大好きでさ。」
ぐす、と涙ぐむ男子達は、見かけは荒いが、気の良いお兄ちゃん達なようだ。
「俺たち、プティフールに行ってみる!」
大人しいはずのアガットが、最初に叫んだ。
「話、聞いてみよう!」
ロシェも、頷く。
「竜樹とーさに、お願いできるかは、分かんないけどさ。とーさ、それでなくても、俺たちのご飯の事で、稼ぐの大変そうだからさ•••。でも、トラムにも会いたいし。」
プランが、俯きながらも、お兄ちゃん達に。
「そうじゃねえだろ、プラン!」
ジェムが、プランの背中を叩いてやる。
「竜樹とーさに相談しなかったら、とーさは悲しむだろ!そういう人じゃんか、とーさはさ。まずは、俺たちで話を聞いて、出来る事があったらしてやって、竜樹とーさにも相談しようぜ。きっと、竜樹とーさは、高い所に飛べる人だから、俺たちなんかが迷ってる何かを、こんな事?ってくらいに、解決できる考えがあるかもしれねえよ。それに•••もし何も出来なかったとしても、竜樹とーさに相談して出来なかったら、仕方ねえよ。俺たちの命を、つないでくれたプティフールの親父だもの。」
俺たちも、出来るだけのこと、してやろうじゃん。
ジェムが意気高く、強い気持ちで宣言した。
プランが、顔を上げて、唇を噛んで。うん!と希望を持つ。
ジェムもプランも、そしてロシェもアガットも。その目は、竜樹を信頼して疑わない、守られる者の目。
竜樹はモニターで見ながら、ふふ、と誇らしく思う気持ちがした。
こんなに信頼してもらってるんだもの。何とかしてやりたい。
撮影隊を置いていく勢いのジェム達を、揺れる揺れる画面が追う。片足の悪いネフレも、必死で走って、ジェム達に、ごめんねネフレ、でも頑張って!と励まされていた。




