支払いの話
寝っ転がって、ダラダラ映画を観ようと思ったのだ。
竜樹は映像関連の見放題サービスに入っていた。こういうサービスも、そういや継続されている。支払いは•••神様かな。
ページを開いて、一つ作品を選んで、と、そこで。
『鑑賞する人数は?』
『1人で』
『家族や友人で10人くらいまで』
『知らない人と10人くらいまで
ただでみせる』
『知らない人と10人くらいまで
何らかのお代をとってみせる』
『大体10人以上
ただでみせる
(人数は自動カウントします)』
『大体10人以上
何らかのお代をとってみせる
(人数は自動カウントします)』
んんんんんん?
今の場合、竜樹とニリヤとマルサとチリとミランとタカラ、6人で『家族や友人で10人くらいまで』だ。
「チリさん、みんなで映画観てみよう。何かスマホがまた改変されてるから、試しに。スクリーン出してもらえる?」
「おお!ハイハイ。ただいま。」
いそいそと魔法でスクリーンを空中に広げる。その状態の維持には、それほど魔法の力を使わないのだろうか。映画一本、2時間ほどこのままでも大丈夫だという。
チリは魔石が幾つか付いて、その周りを目盛りが刻みダイヤルになっている板ーーリモコンになるのかーーを取り出した。音とか光の調子を合わせている。そのリモコンにスマホの先をちょん、と合わせたら、チリリ、とスクリーン内の画面が揺れて、同期が完了した。
『家族や友人で10人くらいまで』
ピコン!
選んでみた。
『神様の「いいね」から3いいね払いました』
『現在の神様の「いいね」残高は、9996いいねです。』
ぶるるる。
メッセージだ。
映像を一時停止しておいて、メッセージアプリを開く。
ランセ神からだった。
ランセ
『やあ 悪い子たち。
こんどは どんな
映像を みられるのかな?
向こうの世界の 映像を
みるにあたって
向こうの 世界では
お代を 払うようだね。』
竜樹
「プロの人達は、苦労してお金をかけて作っているし、それで生活していますから。
そうですね、このスマホで、タダで観せて回ったら、なんだか、悪いかな。
作った人に、著作権て権利があるんですけども。」
ランセ
『そう そういう しくみ
面白いと思ってね。
神の「いいね」は
向こうの世界の ちょっとした
幸運となって 作った人に
支払われるよ。
お金での 支払いは
難しかったからね。」
竜樹
「おおー。ありがとうございます。」
幸運での支払い。ちょっとどんな幸運か興味あるな。
ランセ
『君の スマホの サービスや
通信費は 君の 一生分
前払い しておいた。
1いいね 使ったよ。」
一生分にしては、随分安い?支払いである。
ランセ
『通信が途切れたり
神の「いいね」獲得にばかり
一生懸命に ならないように
安め換算 しているよ。
ただ 大勢に 向こうの世界の
有料映像や 有料創作物を
みせるとなったら
人数に合わせて いいね支払いが
発生するよ。』
ランセ
『君が 死んだら
通信は 途切れるよ。
君という フィルターが
なくなって しまうからね』
竜樹
「俺も、それでいいと思います。」
ランセ
『さあ 映画?を
観ようじゃないか?
どんなのだろうね 楽しみだね!』
竜樹はメッセージアプリを閉じて、映画に戻った。
崖の上にある家に来た、お魚の女の子のアニメだ。
チリとミランが、最後、「言われたこと、忘れてる、忘れてる!」と騒いで、真剣に観てるマルサに「うるさい黙ってみてろ!」と叱責されていた。
タカラは、頬を真っ赤にして口を開けていたが、終わったとたん、ホーッと息を吐いた。ミランの「お茶をお淹れしましょうか」の言葉に、ビクンとしていた。
ニリヤは、まぶたをパチリともしないで、ベッドで竜樹の膝に乗っかりながら、じーっと観ていた。
ぶるるる。
ランセ
『ハム•••!ラーメン!』
ランセ神もお気に召したようである。