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ヤダヤダ

ゆっくりと寝て、神の目騒動の次の朝。

竜樹は、肘のシワシワのところを、小さな手で、ふにふに触られて目が覚めた。フニフニ。


ニリヤは、コロンコロンしつつ、人差し指を咥えていた。カジカジ噛んでいるのを、そのままに、竜樹は、ふわーっと起きて、ニリヤを撫でた。

「おはよう〜。オシッコ行くか?」


「•••ヤダ。」


コロン、向こうを向いてモゾモゾ布団をいじっている。


「ヤなのか。」

「ヤダ。」


そうか、ヤか。


「おはようございます、竜樹様ニリヤ様。カメラ回させていただきます〜。」

「おはよう、ございます!初めてお目にかかります、タカラと申します!」

カメラ回しつつのミランと、ミランがカメラにつきっきりになる為、新たに身の回りの事を担当するタカラ。

タカラは紺色の髪に目で、まだ18歳、眉太く、頬も紅色の、そして男である。何かとむさ苦しい竜樹周りだ。


「起きて朝ごはんにされますか?今日は、厨房からもらってきましょうか。昨日は飛びトカゲに踊らされたりして、お疲れでしょう?」

指示は、撮りながらミランが行うようである。


「う〜ん。起きるか?ニリヤ。」

「ヤダ。」


パタン。ベッドに伏せて、寝間着の竜樹の膝布をいじいじする。

トイレに行きたいはずなのである。

そうかそうか。ヤか。


「あートイレ行きたい。あー漏れる。大変だ、大変だ!」

わしゃわしゃ。ニリヤをくすぐり、脇に手を入れ、わーとトイレに連れていく。特にニリヤからの文句はなく、行けば用を足して、手を洗う。


「ホラ、顔拭くぞ。」

「ヤダ。」

ふきふき。


「お水とお花、変えようかなー?」

「ヤダ。」


ヤなのだ。ヤダって言いたいのだ。

今までがいい子過ぎたくらいだ。

竜樹は、ふむ、とニリヤを抱っこしたまま、提案した。


「じゃあ今日は、ヤダヤダの日にするか。悪い子するぞ!!」


ニカッ。

ニリヤはキョトン、と竜樹の顔を見上げた。




「何だ何だ、まだ着替えてなかったのか?て今日は、ずいぶん豪快な朝飯だな。」

「お、おはようございます、チリが参りましたよ。朝ごはん、食べたいです。特に白いパンが。」


朝練を終えたマルサと、チリが食卓に着いた。チリは、何か面白そうなので、なるべく竜樹達と一緒にいたいそうである。新しく物を作る時用に、またもガラガラ材料満載の台車を引いてきた。


「今日は悪い子するんだ。パンと、チーズとハムがあれば、葉っぱなんかはいらねぇんだよー。」

ハム、こんなに厚切りしちゃうんだもんねー。

ニリヤの伸ばした人差し指の長さほど、厚みのあるハムを、ぎこぎこカッティングボードで切り分けると、手づかみでガブリと噛みついた。ハムに歯型が、綺麗にギザギザ半月に抉れる。


「•••はっぱ、いらねぇー。」


ニリヤも真似してガブリと噛んだ。

小さな半月ができた。

もっしゃもっしゃ食べる。

チリは、ニヘラ、と笑うと、マルサにも分厚く切ったハムの残りの、尻の所の塊を齧った。

「こう言う端っこの所って、なんか嬉しいですよね。美味しい気がして。」

「あ、ずるい、チリさん。」

「フハハ。あげませんよ。」


スープはなく、ミルクかお茶かで各々パンとチーズをぐぐっと飲み込む。

「あ、今日はヨーグルトあるんだった、しまった悪い子の日なのに身体にいいぜ。そうだ、ハチミツたっぷりかけてやるぜハハ!」

どうだ!

というほど、とろーりと黄金色をかけて、そのまま匙も舐めちゃう。


「あまいね。」

「うまいな。」

「こ、これでお通じが。ヨーグルトって美味しいですね。」


タカラが目を白黒させているが、ミランはクスクス笑っていた。


口周りをベタベタさせて、ニリヤはヨーグルトをすくって食べた。食べ散らかして、ふいーと息を吐く。パンとハムは食べかけでもう食べられない。チーズは何とか食べきった。

ご馳走様か?じゃあパンもーらい、と竜樹が残りをパクッと一口で食べた。


「今日は悪い子だから着替えない。寝間着にマントで庭に出ちゃうもんね。」

「ぼくも、きがえない。でちゃうもん。」


すれ違う人たちが、ん?となって、慌てて目礼していく。ニリヤと母様の庭は、裏手にあって花が沢山咲いている。整えられたというよりは、様々な種類が、ワッと旺盛に咲き誇る、賑やかな庭だ。

庭師もこの庭の野趣あふれるところを気に入っていると言って、自然に見えるように、巧みに整えている。

頼めば何本でも花をくれる。今日は何の花にしようか。紅色のか、白か。


「たっぷり好きなだけ選んじゃえ。ニリヤ、どれにするー?」

「このおれんじの、しろいの、あおいの、きいろいの。もっともっといっぱい。」

両手で抱えるほどもらって戻った。


花瓶をタカラがあたふたと用意し、それに花を生ける。テーブルの上は、いつもよりずっと華やかになった。


「さて、今日は、みんなの仕事を奪っちゃうもんね。悪い子だから。」

「うばっちゃう。」


食べ終わった皿も洗っちゃお。

スマホで音楽かけながらやっちゃう。

シャツのポケットに、音楽を流すスマホを挿し、大声で歌い、部屋も掃除しちゃう。


厨房からせしめた焼き菓子を、お掃除に来た子達に渡して、帰ってもらう。

ニリヤもソファーのクッションをポンポン叩いて膨らませたり、掃き掃除の道具で埃を集めたところに、ちりとりを差し出したりした。

一通り掃除して昼飯は抜いて、寝間着のままだった2人は、昼寝をする事にした。

部屋にはチリとマルサとミランとタカラがいて、それぞれ別のことをしている。チリは魔石を弄って編集用の機材を作り始めた。マルサはストレッチ、ミランは撮影、タカラはミランに付いて控えている。


今度スマホで映画の上映でもするか。

竜樹は画面をいじる。

「みんなにテレビに慣れてもらわないとな、そしてニリヤのテレビを王宮で流そう。まずはパイロット版を作って、んん?」


『鑑賞する人数は?』


こんなこと聞かれたことないぞ。



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