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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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閑話 花の兄8

呼び出しの係の人が、広間への竜樹の登場を告げる。

子供達は、わあっと歓声を上げて、拍手をして竜樹を迎えた。

マルサがそっと、いつものように、でもいつもより嬉しそうに誇らしげに、竜樹の後ろを守っている。


竜樹は、魔道具の灯火、キラキラとした光溢れる広間に、ふわふわと入ってきた。皆の笑顔も眩しい。飾り付けは、子供達主導だからこそ、所々不器用に、でもいっぱいの気持ちを乗せて、会場を埋め尽くす。皆で書いた寄せ書きが、竜樹に用意されたお誕生日席の後ろの壁に貼ってある。その上には、紙のお花やリボンで飾った、お誕生月おめでとう!と幕があって、華々しい。

王様王妃様3王子も、子供達や招待された貴族組のエフォール達、そしてロテュス王子やアルディ王子も、皆、会場の両脇に並んで立っている。中に、ファヴール教皇までいる。クレールじいちゃんも。今日は子供達のお祝いだから、と言う事で、大人の社交の、他の国の外交官や留学生達は、またの機会に、と控えてもらった。仕方ないね、竜樹様だから、子供達がお祝いしなきゃね、と笑ってくれた。


お世話人達大人も、目をパチパチしてる赤ちゃんも混ざりつつ、子供達はニコニコして、拍手して、美味しそうな匂いにお腹も空いて、でもお祝いもしたくて。


中央に用意された、ご馳走いっぱいのテーブルがある。椅子もあって、それぞれが安心して着席して、沢山食べられるように、まずは1プレートずつ準備されて。追加はアレルギー対応のお料理やケーキの乗った別テーブルと、普通のお料理やケーキの沢山乗った大きな長いテーブルとが、広間の両角に置かれてある。テーブル自体に、温度が変わらないよう、魔法が使われているから、お歌を歌っている間も冷めないし、ケーキもぬるくならない。


万が一にも間違えないように、アレルギーのある子は緑色のリボンを胸につけて、1人1人について誘導するお助け侍女さんも、その子達の顔を覚える為に会って、お話もした。

お助け侍従侍女さん達も、中にはアレルギーの人がいて、今回沢山、彼らの分も作られた、普通のとアレルギー対応のケーキやご馳走は、仕事の後でゆっくり食べられる。彼ら彼女らも、それがなくてもだけれど、一層嬉しそうに、お仕事についた。


竜樹は、一度、お誕生日席の前にふわふわと歩いていくと、ペコリとお辞儀をした。拍手の音が強まる。そして、その後、ふわふわと会場の、お誕生日席の周りの、華々しい飾り付けを、目をショボショボさせながら、見回って、嬉しそうにまた、もう一度、ペコリとお辞儀をした。子供達は、テヘヘ、と照れ笑いをしながら、晴れがましそう。


「竜樹様、すまほでコウキ様達と、繋いで下さい!」

「あ、うん!分かった!」


今日の日に、この2世界同時お誕生会の画面同期の為にいる、チリ魔法院長も嬉しそうに竜樹に願い出た。これがあるから呼ばれたチリである。バーニー君には、メッチャ羨ましがられた。

「ご馳走の感想、聞かせてくださいね!いや、でも、食べられないご馳走に何の意味が!いやいや、でも、知りたい!テレビ放送見ます!あうう。」

とチリの胸元を掴んで言い、嘆き悲しんだが、本日ひっそりと彼も竜樹へのお花を用意して、お花お祝い所に持って行っている。


「あ、竜樹兄〜!繋がった!お誕生日、おめでとう〜!」

「「「お誕生日おめでとう〜!!!」」」

パンパン!クラッカーも賑々しく、繋がった拍子にワワワ!と騒ぐ畠中家チーム。皆揃って、ケーキも用意、ご馳走を前に飾り付けた懐かしい室内。


「こっちも準備できてるよ!さあ、オランネージュ君、ネクター君、ニリヤ君。進行、お願いします!」


コウキが言って、はーい、とお返事した3王子は、ニコニコ、だけど真剣に、声の通る魔道具マイクで話し出す。


「竜樹、お誕生月、おめでとう。今日は、私たちみんな、コウキ兄様達も一緒に、お誕生会の準備をして、お待ちしていました。」

「いつもの感謝の気持ちをこめて、せいいっぱい楽しく、おいしく、じゅんびできたとおもいます!」

「きょうはしゅやくとして、たくさんごちそうをたべて、たのしくすごしてください。そして、ぼくたちのおいわいのきもちを、うけとってね。」


竜樹は、うん、うん、と頷きながら聞いていた。


スーリール達ニュース隊も、感動して涙ぐみながら、会場の端っこで撮影をしている。


「それでは、まず、おたんじょうのうたを、みんなでうたいます!うたいおわったら、ケーキのろうそくのひを、ふきけしてね、ししょう!いっきにけせたら、おねがいごとが、かなうかもです!」

ニリヤが、ふす!と鼻息荒く興奮して言った。皆、お歌のための緊張が高まってくる。太鼓や笛の子もいて、床に置いていた太鼓を身につけたり、笛を、ポケットから出して用意したりと、少しざわざわした。ネクターも、ころっとしたオカリナみたいな笛、ラプタをポケットから出して、指を添えて準備した。


お助け侍従さんが、ケーキの、33の形、こちらの数字、をしたろうそくに、火をつける。デコレーションケーキは、竜樹だけでは到底食べきれない、ほどほど大きな四角い、フルーツが沢山乗って豪華なケーキだ。お誕生月おめでとう、とチョコレートプレートで文字も入っている。


さあ、気分も盛り上がってきた!

バラン王兄がピアノについて、ロペラがリュートを構える。


スッ、と前に出てきたアミューズが、指揮棒をピ、と持ち上げて止めると、ざわざわが一瞬、しん!となった。


きゃふふふふ!

赤ちゃんが、ふいに笑って、みんな一回、どっと笑った。

それで緊張がほぐれて、アミューズが、再び指揮棒をすっと上げて。



さん、はい!



ピアノの前奏。

リュートが追いかける。



♪いつも一緒にいてくれたね

うれしい時も かなしい時も


いつも一緒にいてくれたね

さみしい時も 失敗しちゃった時も


今日も一緒にいてくれるね

たのしい時も そう

今日はお祝い 君の誕生会


何がすき?

プレゼントもって お歌うたうよ

おいしいごちそうも食べよう


まあたらしいようふくの

君はいつもよりすてきだね

さあ お祝いしよう

ハッピー ハッピー バースデー


これからもずっと一緒だよ

君は僕の大事な

(家族)(ししょう)(ともだち)(とーさ)(恋人)(恩人)(好きな人)(大事な人)


来年もきっとお祝いしよう

ハッピー ハッピー バースデー

君のバースデー♪




ポロリン♪


「「「お誕生月、おめでとう〜!!」」」


不器用な、時にすごく上手な太鼓も、ピロピロと可愛い音の笛も、パクッと大きな口を開けた、恥ずかしそうな大きい子達や、一生懸命な小さな子達の、低く、澄んだ高い声の入り混じる歌声達も。

王様や王妃様、3王子にロテュス王子にアルディ王子、貴族組、ファヴール教皇やチリ、クレールじいちゃんまで子供達と一緒に、お助け侍従侍女さん達、お世話人達、そしてラフィネも、畠中家まで。会場が一体となって、竜樹の為に、そして純粋にお祝いの気持ちをもって、子供達とみんなで歌って。


竜樹は一瞬、胸がいっぱいになって、黙り込んだ。けれど、拍手に押されて、ハッと気づき、急いでバースデーケーキのろうそくを、ふうううっ!と吹き消した。

火は呆気なく、ふっ、ふっ、と消えて、一段と拍手が大きくなった。


「ししょう、いっきにふきけせた!おねがいごと、かなうね!」

ニリヤが、ニコニコしている。


竜樹に、マイクが向けられる。

一言、感想をという所である。

むぐ、と感激した竜樹は、まごついたが、一度目を瞑って、そして話し出す。

何せ、子供達、皆ご馳走を前にしてるのだ。早く食べたいだろう。


「みんな、今日のお誕生会、ありがとう。とっても嬉しいです。かんげきです!お歌も素晴らしかった!ーーーこの世界に落ちてきた時、一体どうしよう、って、本当に困った。」

フニャ、と子供達が、複雑な顔をする。


「でも、優しい人たちがいてくれて、この国で、みんなと出会って、お世話され、この国に受け入れてもらって、何かが少しでもできて、そして子供達のお世話もできて、何て嬉しい事だろう。誰かのお世話ができるって、その人達に近く、混ざり合いながら、必要にもされて、みんなが必要で、お世話ができるって、何て素敵な事だろう。そんな俺でいさせてくれて、みんなありがとう。」

ニパッ、と皆の顔に笑顔が戻る。


「もう一度言うけど、お歌、とっても素敵でした!嬉しいです。みんなと出会えて、俺は嬉しい。大好きです!これからも、よろしくね。お願い事は、こうです。これからも、いっぱい一緒に、楽しい事、嬉しい事、やっていきましょう!きっと叶うね!」


コウキ達畠中家の面々が、微笑みながらも寂しそうにしているのを、竜樹が分からないはずもない。

「畠中家のみんなも、違う世界に行っても、話を沢山してくれて、ありがたく思っています。どんなに、心強い事だろうか。今までも、これからも、家族だからね。畠中家のみんなも、パシフィストや他の国のみんなも、ありがとう!ありがとう!」


ペコリ。

お辞儀をして、ワァァァァァア!と子供達がはしゃいだ。畠中家の皆が涙ぐみ、そしてなぜか柊尚が号泣する勢いで、パチパチ拍手をしている。ぽん太君はニコニコのニッコリ。


「さあ!ご馳走の時間だよ!みんなで用意してくれたご馳走、楽しみだな!一緒にいただきましょう!」

竜樹の促しに、お腹もくうくうで、大舞台を終えた子供達は、ホッと笑顔に花が咲く。


「は〜い!皆、席に着いて〜!」

「「「はーい!!!」」」




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