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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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閑話 花の兄3



「わたしも、大人になったら、あんな風にきれいになれるかなぁ?」


テレビ電話で繋がっている王都教会孤児院の、女の子、フィル。小さなお針子さんだけあって、綺麗なものには敏感だ。

他の女の子達も、色っぽかったねぇ!大人っぽかった!お姉さん、きれい、すてき!と忌避感はない模様。文は色っぽくてもどこか清潔感があって、好感度の高い女優さんなのである。

「大丈夫よ。きっと素敵な女性になるわ。」

ラフィネが、ニッコリ言えば、文も。

「ありがとう、女の子達。みんなも可愛くて素敵よ。そうよ、きっと素敵な女性になるわよ!」ねー、とラフィネとニコッ、顔を見合わせた。



「ご馳走ねえ。そちらのお国のご馳走でも、竜樹兄は喜んでくれるのじゃない?でも、いかにも誕生日〜!っぽくやりたいか。」

ファミレスでバイトし、料理も嗜むコウキが、んむむ、と考えつつ。


「っぽくやりたい!おいしいごちそ、どんなのある?」

「美味しい!」

「たべたぁ〜い!」

むふ、じゅるり。

何と言っても、食べる事が重要任務な子供達である。生活の楽しみの、沢山が、今日何食べられるかな?によっていると言っても良いだろう。皆、期待に満ちた顔で、コウキ達の発言を待っている。


「そうねぇ。竜樹は、あんまり高価な凝ったお料理だと、皆と一緒に楽しむ感じより、味わうのに一生懸命になっちゃうかもだわ。お歌もうたうし、それはあんまり、よねぇ。」

マリコ母が、お誕生日のご馳走は子供達も一緒に食べるのだから、と考えを回しながらも竜樹にも一番良いように、話し出した。

「あっ、そうそう!竜樹兄、前にお誕生日に皆で、ちょっと良いお店に行った時、お祝いには気もそぞろで、真剣に味わっていたよね!勉強になってたよ!それで、味を参考にして、どう?って私らに、アレンジしたお料理を作ってくれた時の方が、嬉しそうだった!」

サチが思い出し、補足する。美味しかった。お店の料理もだし、竜樹の料理も美味しかったが、あのお誕生日は、今目指しているものと、ちょっと違う。家族にとっては大事な思い出だけれど。


「私たちとしては、こちらの料理もお出ししつつ、良かったら竜樹様の誕生月なら、お好きなこれ!というそちらのお料理をお教えいただき、皆で食べられたらな、などと思います。」

ミランが、大筋を修正しつつ、要望を伝える。


「マリコちゃん!ししょうのすきなもの!きっと、おいしいねぇ。」

「おれ、よだれが、でてきた!」

「竜樹の好きなものだったら、絶対だね!」

「楽しみ〜!」

ニンニンと笑う子供達も、満足するお誕生日会にしてやろう、と、コウキはウンウン、うん!と考えて話し出す。


「グラタン、だな!」

「ぐらたん?」

ニリヤ達は、まだ食べた事がない。

「ぐらたんって、どんなお料理?」


あー、改めてどんなお料理と言われると、説明が難しいけれども。

「ほっかほかで、クリーミーで、トロッとして、ほっくほくで。焦げ目がついて、チーズがとろ〜り、溶ろけるやつかな。」

コウキはポテトグラタンをイメージしている。マカロニグラタンも美味しいけれど、ああ、両方入ってるのでも良いなぁ。

「ポテトとマカロニのほかほかグラタン!」


うぉぉお!と子供達のテンションがあがる。

「お、おいしそ!」

「ぐらたん、しよ!」

そうしよう、そうしよう!と一品決まった。

「レシピは、どうする?」

コウキが教えた方がいいのかな、と心配する。


「竜樹様に、スマホで指示していただきましょう。ちょっとコウキ様に聞いたんです〜とか言って。お誕生月の会に出すのは内緒にしておきますので、お料理は内緒でなくても、よろしいですか?」

タカラが皆に聞くと、いいよーと返ってくる。全てをサプライズにするには、手間がかかり過ぎるので、これもアリだと皆納得である。


「あとはねぇ、ハンバーグなんてベタで好きよ、竜樹は。」

ザ・子供が好きな料理である。マリコは竜樹もだが、子供達もいっぱい喜ばせたくなってきた。だって可愛いのだもの。

「ハンバーグ食べた事ある!」

「おいしいよね!」

「すき〜!」

ウンウン。上手くハマった事にマリコが喜んでいると。


「ハンバーグ、ぱんにはさんだやつ、ししょう、はじめてあったときに、ぼくにくれたの。」

ニリヤが、ハッと思い出し、ニジニジと溢れる嬉しさを噛み締めた顔で。


「ぼく、かあさまがねんねしちゃったし、しょくじをもらえないし、じじゅうやじじょのみんなが、なんか、おはなしするの、つん!ってするひともいたり、そーっとないしょになったりして•••。」

うん、うん。マリコは優しい顔で、声で、聞いている。サチもコウキも、文も千沙ちゃんもタツヤも。そしてオランネージュやネクター、ジェム達子供達大人達も、気遣わしげに、ニリヤを見守った。


「みんな、しょくじはくれなかったけど、おかしとかはくれた。でも、さっ!て、すぐいっちゃうの•••。でも、でもね!ししょうは、ハンバーグ、はんぶんこにして、いっしょにベンチにすわって、たべてくれたの!おまえおなかすいてるだろ、くえ!くえ!って。わけっこ、かあさまみたい!いっしょたべるの、かぞく、みたいね!ぼく、うれしかったんだ!それから、ずーっといっしょなの!」

ぼく、ししょう、だぁーいすき!!


ムフフ!と笑うニリヤに、良かったな!といち早くジェムがニパッと笑って、和やかな雰囲気になった。ネクターは相変わらず、ニリヤが食べられなかった話題になると、それを指示した母のキャナリ妃の事を悲しく思って、そしてニリヤに悪く思って、モジモジする。だが、最近は、その分ニリヤと仲良ししたら良いんだよ、と竜樹に言われた事もあって。うん、とまた一つ、ニリヤを、可愛がるぞと心に刻んだ。


マリコやコウキ達は、ニリヤの事を聞いてもいたから、そして今はちゃんと愛情ある大人達や、改善された面倒見の良いお助け侍従や侍女さん達、仲良しの兄弟王子や子供達もいると知っていたから。優しい笑顔を崩さずに、そうなの、嬉しいねぇ、良かったねぇ、と目を細めて、ニリヤの今の幸せと、竜樹への好意を喜んだ。


「あはは!竜樹兄は、ニリヤ君にも食べ物くれたんだ!私の時も一緒だったよ。初めてこの家に来て、まだ何もかも警戒してた時。おにぎりを半分こして、食べな!美味しいから!俺が作ったんだ、サチ、俺の妹だから、絶対にご飯は、美味しいものを、お腹いっぱい食べさせてやる!って言ってくれた。」

ウフフ、とサチは思い出し、後ろを向いて聞いていない、竜樹を温かい気持ちで見る。


「俺の時も、そうだったよ。クリームパンだったな。半分こして、クリームの多い方くれた。流石に竜樹兄の手作りじゃなかったけど、コウキは弟だから、俺が美味しいもの、食わせてやる!って、本当毎日、今までが嘘みたいに、美味しいご飯が沢山出てきて、すごくビックリしたんだ。」

コウキも、この家に来て、幸せの初めてを、マリコやタツヤ、竜樹にもらった嬉しさを、改めてほのぼのと味わう。


サチは、良い事思いついた!と指をパッチンする。

「ねえ。そうしたら、ニリヤ君達や、竜樹兄の子供でご飯をもらってるジェム君達教会の子達は、私たちの兄弟姉妹、じゃなきゃ親戚みたいなものだね!竜樹兄繋がりでね!」

「本当そうだね!これからも、困った時や相談がある時、話したい時には、竜樹兄からのスマホ経由になるけど、お話しようよねえ。」

コウキもニコニコ。

マリコやタツヤ、文に千沙ちゃんも、家族だねぇ!お話、しようよね!わーい!と手を振った。


ふわぁぁぁあ!と子供達は、歓喜の驚きである。

「コウキにいちゃ、兄弟!」

「サチ姉ちゃんも?」

「サチお姉ちゃんも、やさしいし、すてき!」

「マリコさんも、かぞく!」

タツヤもだよー、と父タツヤが言えば、文も、千沙ちゃんもだよー!と続く。

「皆、竜樹父さんがいてくれたら、素敵な家族がいっぱい増えて、良かったわねぇ。」

ラフィネが、ふふふと笑って、辛子色のスモックのポケットに両手を突っ込み、ふり、ふり、と広げて揺らしながら、嬉しく皆に言った。時々少女っぽいラフィネなのである。


「「「うん!!」」」


元気いっぱい、笑顔いっぱいの子供達に、畠中家もパシフィストの大人達も、絶対に素敵な誕生日、誕生月祝いにしてやろう、と手に力を込めた。

子供達の為にもあるが、勿論、後ろを向いて、何だかほにゃりとニヤけている、美味しいもの番長でお兄ちゃんでお父さんの、竜樹のために。






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