ツバメはいいこ
堕胎についてちょい書いてます。
やんわりですが、苦手な方は、とばしてね。
「コクリコさん。リュビ妃様の、亡くなられた時の話を知っていますよね。貴族なのなら。」
「! は、はい。そうですね•••危険、なのですよね。確か、お薬はちゃんと堕胎薬だったけれど、リュビ妃様の体質に合わなかったのでは、と。」
青ざめ、ぶるり、身体を震わせて、コクリコはドレスのスカートを揉み揉みしながら、俯いた。
「そうですね。」
竜樹は優しい眼差しで、声で、悩んでいるだろう、まだ少女ともいえる、でも身体にもう一つの命を宿した女性に話しかけた。
「よんどころない事情で妊娠した女性が、出産するかどうかを、俺などが決められはしませんが。出産て命懸けですしね。まぁ、でも、この世界での堕胎が、かなり不確実で身体に良くないお薬を使う、って事は知っています。ちゃんとしたお医者様にかかるとしても、身体に負担はかかりますね。」
「はい•••。」
コクリコは、静かに、揉み揉みしつつ応える。
「それに、そのお腹の大きさだと、きっと結構育った月齢ですよね。出産するのと同じ、亡くなった子を産むって事が、必要になると思います。命をかけて、亡くなる子を産む。それは、とっても、悲しいですねーーー。ううん、もしかしたら、もう生きて産むしかないくらい、育っているかもしれない。うん、エルフ達は、赤ちゃんを大事にする文化があるから、エルフの血も濃いし、産まれた子供について心配しなくても良かった。でも、コクリコさん、貴方は、もし赤ちゃんが騙した相手に似てたりしたら、愛せないーーそんな事もありますよね。」
「は、はい。わ、私、最初は、少し、良いなって思ったんです。格好いいなって。でも、でも。全然話を聞いてくれなくて。だから、その内、本当に相手が私を好きなんだろうか、そう思いたい気持ちと、騙された気持ちと、ぐるぐるなって。その内に戻れない所に。今は、バカだったーーーって、気持ちがグチャグチャで!赤ちゃんのこと、わ、わからな、なくて!!お腹が大きくなってくるのが、お、恐ろしくて!!」
俯いて、ぐしゃ、ぐしゃとスカートが混ぜられる。コロン。また一つ涙。
齧り付いてギュッとする肩口のニリヤの背中を、ポンポン、しながら、竜樹は。
「ねえ、コクリコさん。お医者さんに、まずは診てもらいましょう。そして、もし良かったら、産む方向で考えてもらえませんか?多分その方が、身体にも良さそうじゃないです?育てるのは心配しないで、ここは俺の子供達がいる場所です。1人くらい子供が増えても、どんとこいです!愛情込めて育てます。」
ニリヤも育てるもんな?と、トントンすれば、ウン!と齧り付いた小さな頭が頷いた。
「身の振り方も、お父さんにも、連絡してちゃんと考えて、落ち着いて、って時間をとれるよう、ここでゆっくりすれば良いですよ。貴方は悪く無かった、だって侍女も一緒にいたんですから、用心もしていた。でも悪いやつって、やっぱり悪い。そして、赤ちゃんも、貴方も、悪くない。幸せになる権利は、絶対ある。」
「はい、•••は、はいーーー!」
ポロポロ涙は止まらない。貴方は悪くない、そう、誰かに言って欲しかったのだ。
「赤ちゃんて、コクリコさん、触った事あります?身近にいましたか?」
ひくひくしゃくりあげるコクリコが、落ち着くのを待って。
「いえ、兄の子供はいましたが、あまり触らせてもらえなかったのでーーー。」
シャンテさん、と竜樹はあぶあぶツバメを抱っこする、シャンテさんを呼んだ。ツバメは、ニコニコの竜樹に、キャア!と笑って、おててをブンブンもぐもぐ。ツンツン、とほっぺをつつけば、赤ちゃんの、お乳の匂いが、汗と混ざってほんのりしている。
キャハ、アハ!
ご機嫌で、とっても良い子のツバメである。
「触ってご覧なさいな。本物の赤ちゃん。」
竜樹の促しに。
コクリコは、涙の目を見張って、ツバメに見入ると、竜樹を見て、周りの大人を見て、またツバメを見て。その内、人差し指を恐る恐る、そ、と差し出した。
きゅむ!とツバメは、なんなく掴んで、あぁう!と笑った。
「良い子だね!ツバメ、コクリコお姉ちゃんだよ!初めまして〜だね!」
「ツバメ、いいこよ!」
いつの間にかニリヤも、ツバメを見て、その頭をなでなでしている。
「ち、ちから、つよい。」
「ね。赤ちゃんて、結構力強いよね。」
小ちゃいーーー。
しみじみ、遠慮がちに見ているコクリコに。
「ここで、赤ちゃんがどんな生き物か、見て触れながら、少し考えてみては?それに、ここなら、お母さん達、先達の女性が3人もいますからね、妊婦さんには、心強いと思いますよ。」
ね?と、ラフィネ、コリエ、リオン夫人に竜樹がショボショボ目でニッコリすれば。
シャキン!と3人は背筋を伸ばした。
「ええ!私は、庶民の、片親の、お母さん達の味方。お母さんシェルターをまとめようと思ってます。ここの子供達のお母さんの、ラフィネよ、出産経験もあるわ。」
トン!と胸を張って、叩いて。
「私は花街帰りのコリエよ!落とし屋の事も知ってるわ!私も子爵の娘だったんですからね。花街に関係の娘さんなら、しっかり相談に乗るわよ!出産経験もあります、子育ては、してこなかったけど、こ、これから子供のエフォール君と、仲良くしたいと思ってるわ!それにちゃんとしたお医者にかからないとダメよ!子供に傷を負わせてしまうかも、それって一生後悔するから!!」
コリエが、トン、と胸を叩いて、強く主張する。エフォールが、ふふ、と笑う。
「そして私は貴族のお嬢さん達の悩みに応えるわ。落とし屋って、貴族のお嬢さんを狙うのよね。それって、とんでもない事じゃない!竜樹様、テレビでその手口、放送したりできるかしら?今も騙されている娘がいるかも?貴族じゃない娘でも、騙されてる娘さん、いそうよね?私も出産経験があるわ。子育ての経験も。乳母に手伝ってもらったけど、私は結構自分で出来るだけ育てたの。お乳もあげたわよ。何でも聞いてちょうだい!」
リオン夫人も、トン!と力強く、胸を叩いて請け負った。
お母さんズの味方を得て、コクリコは、パチパチ目を瞬き、そして、ホッと肩を落とした。
「ここに、いても、いいのですねーーー。」
「いくらでも。」「私もご厄介になるの。一緒ね。」「身体が大事よ。」
お母さんズは頼もしく。
ふー。息を吐くコクリコの人差し指を、ツバメは握って、あうあう、あう!とお喋りをニッコリ、楽しんでいた。
それに少し、コクリコも、笑ったかも、しれない。




