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バーニー君お願い

落ち着いてみれば、ノノカ神殿長は、ニリヤに謝罪した。


「•••興奮してしまってすまなかったの。ニリヤ様の気持ちも考えず。」


しょんぼりした爺ちゃんに、黙って、ひくひく泣く子供。

返事をしないのは、意地悪じゃなくて、気持ちがついてかないからだ。

ニリヤは、竜樹と初めて会ってから今まで、大声をあげて泣いたことはない。

子供には、周りに助けてもらう為に、大声で泣いてほしいと竜樹は思う。

傷ついた時に我慢して声をあげないのは、野生の動物めいて、痛ましい。

どうしようもない間をしばらく味わって、竜樹はフウと一息つき、胸にニリヤを抱いたまま、切り替えた。


「まあまあ。さあ、『神の目』の話をしませんか?」


まだ公にする話ではないからと、別室で、『神の目』の試写をする事にした。


「ほう、ほう。はっきりと竜樹様たちが何をしているか、分かりますな。これをどう使うと?」

例えば防犯の為に、大切な物がある部屋を映すようにしておく。街の入り口に仕掛けて、不審な人物の出入りを、記録した映像から遡って見つける。

壁に仕掛けて会議の記録を撮る。

子供を預けたお母さんが、留守中の子供の様子を見る。

はたまた、奥さんが旦那さんの不倫の証拠を撮る?なんて。


「ほ、ほ。便利な物ですな?」


「でも便利なだけじゃなくて、犯罪にも使えてしまいます。人が見られたくない普段の様子を、隠れて撮影したりできますから。」


どう普及させても、道具は使う人次第。だけれども、自由と野放しは違うから、少しだけより良く使えるように、後押しが欲しい。


「神の目、という名前で神殿のお墨付きにしてもらったり、神殿と王様のつくった機関に申請して許可がないと買えないようにしたりする事や、あとは値段をどうするかで普及の感じも違いますかね。当然、誰にも見られていない、くつろぎの場所が必要な事もあるし、神様の視点で見られる、神に見られてる、となれば、心の抑止力になるとも思うんですよね。」


「神は勿論、全てをご覧になっていますでな。それを人により見えるように、という事ですな。」


ふ、ふ。

「神が関わるとなれば、神殿も関わらない訳にはいきますまい。ただ、私の部屋には勘弁していただけるかのう。•••時々、肥えすぎじゃと、禁止されておるオヤツを、食べてしまうんじゃよ。」


神は、ご覧になってるだろうが、お目溢し願えぬかのう。


茶目っ気たっぷりに、神様にお祈りしてみせる。ノノカ神殿長に協力の許可をもらい、竜樹達は目的を果たし帰る事になった。具体的なやりとりは、チリの部下、商家出身の魔法使い、バーニー君という人と、神殿側では、ロウニー神官が担当となってする事になった。

「バーニー君に任せておけば、もう大丈夫です。何を投げても実現してくれます。値段も、生産方法も、仕様のより良い変更も、ちょうど良くしてくれるはず。」

投げっぱなしっぽいチリだが、部下への信頼は高い。その部下、バーニー君は、この後、「またか、またなのか!現品ポイって渡されてやっといてか!やるよやりますけどね!チリ魔法院長め!!!」と叫ぶ事になる。


飛びトカゲに踊らされてしばらく。

王宮の部屋に帰って、ニリヤはまぶたを赤く腫らしたまま、お祈りのテーブルへと向かった。

お茶でもしようか、竜樹達大人がほっと息を抜いていると、ニリヤは指をぎゅっと噛んで、きょろきょろ目を揺らして、あちこち探し始めた。


「ニリヤ、どうした?」


「はんかち、ない。ない。なくなっちゃった。なくなっちゃった。•••う、う、あ、うゎあああ!!」


ぽろぽろ。

うわああぁん!

泣いて、泣いて、泣いて。

うずくまって小さくなって泣き叫んだ。


「ニリヤ、大丈夫だ。」

犯人は絶対みつけてやる。

ハンカチも絶対取り戻してやる。

『神の目』があるからには。



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