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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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曖昧さの中で生きている




ウィエ王女は、竜樹の話をフンフンと聞いていた。


が、何で好きな人順に、親しい人に優先順位をつけたら嫌な感じがするのか、分からなかった。

だってこちらで順位をつけるかもしれないが、当然、相手だって勝手にこっちを順位付けているに、違いないのだ。お互い様だ。


1番好きな者同士で仲良くするのが幸福である。だから、順位は必要である。それに、2番目と3番目でまあまあ楽しく遊ぶ、だって良いわけである。いや、結婚する相手じゃないのだから、友達だったらそれくらいが軽くて良いではないか。竜樹はちょっと、重いのではないか?面倒くさそうだな、とウィエは思う。


エルフは共感覚がある事もあって、どれだけ気持ちがあるか、だって何となく伝わりやすくて。1番好かれている訳じゃない同士でつるむだなんて、そんなの当たり前の事である。そして同族間では、大好きになるには時間がかかる代わりに、基本嫌いではあまりない。心底嫌いになるような、そんな相手もまあいない。だから、エルフ間では、皆それぞれ、穏やかに結構仲良くできている。


「優先順位は必要じゃない!」

腰に手を当てて、フン!と威張るウィエ王女は、こまっしゃくれて可愛らしい。ピカリ!と輝く碧の瞳は、曖昧な竜樹を許さない。


う〜ん。

竜樹はどう説明したら良いかな、と考え考え。

「そうだねえ。ウィエ王女殿下は、さっぱりしていて、大人っぽい考えなんだね。勿論、順位をつけるやり方、すごく良いさ。今は、必要に迫られて優先順位をつける事も、もちろんある。でも俺はねぇ、もっと不器用だったの。出身が田舎だった事もあって、人との距離も近すぎて、それを嫌がられもして。」


結局、友達関係に疲れ果てちゃって、それだけが理由じゃないんだけど、色々重なって、身体壊しちゃった。

「身体が壊れると、心も弱くなるよね。弱ってる時、周りの友達の反応は、色々だった。当然、人が違えば違う時間が流れるじゃない?その時は大学、勉強する学校にいたんだけど、1年休学する事になった。連絡をマメにくれる人、たまにの人、音沙汰ない人、過ぎ去っていく時間の中で、俺は思ったよ。人との関わりって、変化しながら流れていって、いくら好きでも、気持ちが落ちてる時に、速度が速かったり、パワーのありすぎる人とは、一緒にいるのが辛い。ちょうど良く重なり合う事の方が少なくて、それがあれば幸いなんだって。いつでもみんな誘わないと、悪い気持ちにさせちゃう、なんて、結局1人1人を大切にできてない、間違った平等だったな、って。」


「間違った平等?」

「て、なに?」

ネクターとニリヤが、はてなの顔をしている。


「そうだねえ。全員にご飯を配るとするじゃない?大人の人もいて、今お腹空いてない人も、そしてお腹ペコペコな人、子供、女性、赤ちゃん、みーんなに、平等に同じ量のご飯、って、不満があるよね、きっと。誰も不満を言わなかったとしても、結局多かったり少なかったり、我慢させちゃう事になる。それでも、まあ、困った時の炊き出しなんかは、仕方ないだろうけどもね。今回のエルフ達は、みんな、まだいっぱい食べられないから、ちょっとにしてね、とか、お腹空いたから多めにください、とかやってても、誰も不平等だ!なんて言わなかったから、エルフって民度高いなって思ったよね。」


ふん、ふん。

ふむ、ふむ。

3王子達とアルディ王子は、噛み締めながら聞き、頷く。

エルフの4兄弟妹は、フム!と少し得意げだ。


「親しい人に順位をつけるのは、何だかいやだったから、他の方法を俺は見つけたかった。みんな自分にしっくりくる方法が必要なんだ。平等に、なんて、おこがましかったな、っても思った。俺、神様じゃないし。できない時はできない。したくない事もある。人いっぱいは疲れちゃう、だって、大事な自分の気持ちだよね。もちろん、意識的に仲間外れにする、なんて事はしないけど、呼ばれたら面倒だな、って相手も実は思うかもしれない。人それぞれの状況、自分の気持ちも含めて、臨機応変だよね。そして、人って、本当に今、目の前に居てくれる人と、基本は50%でお話すればいいんだ、っても、思ったんだ。」


「ごじゅっぱーせ?」

「半分、て事だよ。」

オランネージュがニリヤに、教えてあげる。


「そう。嫌なんじゃないかな、とか、相手の事を勝手に考えすぎないで、半分自分を出して。残りの半分は相手が考えてくれて、何かの反応を、返してくれる。半分委ねる、待つ、って、なかなか上手く出来ないけど、出来た時、あーホッとするな、って思った。まあ、自分の主張を最初から絶対に曲げない人と話すと、虚しくなる事もあるけれどさ。」


「はんぶん、まつのね。」

「竜樹はお話、聞いてくれるよね。」

「何だか気持ちを話しちゃうんだ。」

「お話聞いてもらえると、胸のところが、ホワッとなる。」

3王子とアルディ王子が、竜樹に引っ付いたまま、自分の胸をポンポンする。


「音楽みたいだよね。人とお話するのって。ピアノがポロンとすれば、それを受けてバイオリンがルルル〜と鳴って、全体の音ができてくる。半分ゆるっ、としてないと、相手にのって返せない。リズムもあるよね。色んな曲があってさ。」


ウィエ王女は、んんん〜?と難しい顔になってきた。


「色々考えて、俺は、今一緒にいられる人を、半分ゆるっとしたまま、大事にしようと思ったの。浮気とかはしたくないから、そういう感じの相手や嫌な人には、ピシッと断るよ?でも、特別がいっぱいあっても、良いじゃない?大きな丸が、特別に思う部分で、少しずつ重なり合う、重ならない所もある。ウィエ王女は、ロテュス王子が、大切にされるかどうか、を心配しているんだよね?」


「そ、そうよ!ロテュス兄さまこそ、特別扱いすべきじゃないの!?エルフのまごころまで、もらっておいて!」

「ウィエ、良いんだよ、竜樹様に、無理に好きになってほしくない。それでも、嫌いとはおっしゃらない。側にいる事を許されてる。私は今、とても幸せなんだよ。」

ロテュス王子は、静かに語り聞かせる。


竜樹は、ゆるっと。

「ロテュス王子だって、今、一緒に居る人だもの、特別に大事に、そして半分待って、ゆっくり関係を育ててるんだよ。ラフィネさんが認めて、子供達も良いよ、って言って、俺が素敵な子だなって思ってて、そしてご縁があった、って事だものね。」


「!育ててる、ところ!」

ロテュス王子は、パッと嬉しい顔をしたが。

「なんか曖昧!ハッキリしない!!」

ウィエ王女は納得できないのだった。


「曖昧じゃないと、俺にはしっくりこないんだよなあ。まあ、そんな事もあるよ。」

さあ、さあ、絵の続きを見ようじゃないか?人間関係の作り方、なんて、一生やっていくんだもの、今決めきったとしても、変化していくでしょ。


「長い時を生きるエルフの王子、王女たち、気持ちをはやまらないで、今少し、俺にも時間を下さいね。」


言われてしまえば。

フン!

「仕方ないわねぇ!今後も厳しく監督していくわよ!」

「見守りよろしくお願いします。」


胸に手を当てて、小さな淑女に、ゆっくりとお辞儀をする竜樹なのだった。


ボンも、ふん、ふん、と言いつつ聞いていた。そうして、絵を鑑賞する雰囲気が戻ってきて安堵した。

リュミエール王とヴェルテュー妃は、ニコニコとして。子供達と竜樹のやり取りを、こちらは余裕のある表情で見守っていた。

「うん、やっぱり竜樹殿はいいね。」

「ええ、ええ。良いわ。」





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