神々の庭
ぶるるる。
スマホが震える。
何だ何だ弟コウキか職場の後輩か、と開いてみれば、メッセージ。
「神々の庭?•••そんなメッセージグループ作ったことないぞ。ん!?」
ランセ
『よろしく ランセ だよ。
伝えること いわゆる
情報の かみさま やってるよ。
この世界に よく きてくれたね。』
なになに?ニリヤが、跪いたままの竜樹の手元を覗き込む。なんてかいてあるの?翻訳仕様でもまだ文字を読み始めたばかりなので、解読をせがんだ。
「ランセ神様がメッセージ 「神気がします!!」」
ふおおおお、ノノカ神殿長の、ブルーの瞳が、キラキラ興奮に煌めき、頬は赤く染まった。
「コチラは何ですかな!?尊い気配です!神気を感じるとは、これは神の器!?ギフトの御方様、コレは何ですかな!?」
「ランセ神様から、メッセージがきてます。」
「•••も、もしや、神と繋がる器だと!?」
多分。スマホの対応力、半端ない。
ランセ
『スマホ 便利だね。
段々 使い方 わかってきた。
君と この世界の 使い方に あわせて
少しずつ コチラ仕様に かえてるよ。
充電も いつも満タン
壊れないし 君の許可がない人は
つかえない
盗むことも できない
悪用 できないよう
私が いじってるから
神器といっても いいかも。』
竜樹
「おー、ありがとうございます。
すごく助かります。
ランセ神様は、情報の神様なんですね。
テレビ事業を、俺がやりたいの、ご存じなのですか?」
ランセ
『はじめて お使いする 番組
すごく面白かった。
君たちの 様子をみていて
情報の ひろがり 種を感じて
私も ワクワクしている。
コチラで テレビなるものが
どうなっていくのか
楽しみだね。』
竜樹
『こちらの世界らしく、やっていきたいです。
なるべく、俺のいた世界の情報を、ただ横流すだけじゃなくて。』
ランセ
『それを 私も 望んでいる。
何らかの 情報を 自然
発して 受け取るということは
生きている ということ
伝えたいのは 人の 生き物の
切なる欲求
私は いつでも
見守っているよ。』
ランセ神のメッセージと、自分の書き込みを、竜樹は読み上げながらスマホをいじる。
ぎゅうと竜樹の手を掴み、ニリヤが突然、叫んだ。
「かみさま、かあさまは、ねんねなの!どうしておきないの!かみさまは、すごいから、なんでもできるの、ちがうの!?」
しん、と静まった中、ポチポチとメッセージを打ち込む音が響く。
「聞いてみような。」
神様に。
竜樹
「ニリヤより ニリヤの母様が、起きなくなってしまいました。
神様は、起こすことが、できますか?」
ランセ
『私の 足が 治らないように
神でも できないことがある。
ニリヤ お前の 母を
もう 起こすことは できない。』
ランセ
『私に 出来ることは
伝えることだから
伝えよう。
リュビという 魂は 消えない
水と 花を 喜んでいるよ。』
「かあさま•••。」
ぐっ、とニリヤは息を飲み込んで、竜樹の胸に顔を寄せた。抱き込んで背中を、ゆっくり撫でる。
ゆっくり、ゆっくり、撫でてやる。
ランセ
『スマホの繋ぎ代は 神の いいね から
支払っておく。
だから 元の世界の 預けたお金から
支払っている 通信費?は
元のお金が 使い果たされたり
口座が なくなったり しても
通信が きれたりはしないよ。』
ランセ
『神は 気まぐれに いいねする。
神の意向を 必要以上に
気にすることはない。
自由に ひろがり 失敗し 迷い
伝えないことも 伝えることも
全てが 人 だから。
よちよち歩きの 子供を
往来に 突き出さないように
スマホを いじっていくけれど
思ったように やってみなさい。』
ランセ
『では またね。
こちらから また 連絡する。』
「神との対話•••何と、ありがたい、何という、何という•••ギフトの御方様は、聖人でいらした。」
ため息をつくノノカ神殿長と、そうして、熱い顔を胸に感じる竜樹と、それを見守る者たちと。
ミランはそれを、淡々と撮った。




