励ましの花
「何か、竜樹は、普段、戦いとかあまり好きそうじゃないって風だし、私たちの喧嘩とかも、お話聞いておさめるけど、時々戦えって言うよね。」
ピティエにだってそうだった。
まずは、嫌なんだって、言えって。
黙って話を聞いていた3王子の一番上、未来は王様のオランネージュが、考え考え口にする。
竜樹は、うん、と一つ頷く。
子供達に、この先を生きていくやり方を。自分も手探りだけど、みんなそうだけど、ぶつかりながらも自分が納得できる生き方を、選んで貰いたい。
「その時々だよね。全部戦え、なんて、言えないよね?でも、絶対に戦うな、も違うと思う。凄く傷ついて、やられた事を人に言うだけだって、助けてって言うのだって、気持ちに力が要るかもしれないね?それは戦ったって事だ。エルフはそれが出来た。凄く勇気の必要な事だったと思うんだ。やられっぱなしじゃなく、少し戦う事が出来たら、塞いでいた未来を、望む心が開くかも?けど、そんなの問答無用で、先ずは逃げなきゃ、気持ちが身体が死んじゃう事だってある。丸まって止まって防御する。種子のエルフ達は、きっとそうだったんだ。」
パチン。と、目を閉じて、開く。
「どれもアリだ。って俺は言いたい。」
「どれもあり?」
「後々上手くいくために、色々ありじゃん?かわす、逃げる、戦う、守る、助けてもらう、自分も頑張る、次の動きのためにちょっと休む。方法、いっぱいあるよ。」
ジェムが竜樹に、ト、と近づいて、ピトっとくっついた。見上げる、信頼の眼差し。多分、きっとこれもグイッと引っ張って空を飛ぶ時の言葉だ、とジェムは思った。
竜樹がジェムの頭を撫でる。首を傾げているニリヤと、ネクター、オランネージュ、を見回して。
新聞売りの子達。エルフの子供達。
女子プロレスに感動のエルフ達。
羽毛敷きに寝転がってウゴウゴあぶあぶ遊ぶエルフの赤ちゃんや、微睡みじっと目覚めを待つ種子達。
胡座をかいて悪い笑顔のリュミエール王様に、穏やかな顔で、そ、と寄り添ったロテュス王子。
その2人の後ろに、満足そうなベルテュー妃。
アミューズと手を繋いだプレイヤード、女子プロレスのテレビ画面を見られなかった2人は、声だけの実況に何を思っただろう?
「俺はお父さんだから、大人だから、今までで知った事の中から、これから皆が生きていくのに、使えるな!っていう方法を、困った時に伝えたいじゃん。それって、ただ頑張る、の一択な訳じゃない。だろ?」
格闘技が、多彩な技で組み立てられるみたいに。
場外乱闘、ルール違反も、思いもよらぬ現実もある中で、時には笑って、パンッと飛んで。
「む、むつかしいねぇ。」
「どうしたらいいの?」
「それだよ。」
それ? とオランネージュ、ネクター、ニリヤが竜樹のマントの裾に取っついて。
「どうしたらいいの?って、分かんなくなったら、相談できたら良いよ。話したら、心が少し開いたら、そこから何とかしようも、考えたら良いじゃん?」
クリクリ、と3王子も撫でた。
「そうだね。エルフ達も、是非私たちにこれからも相談して下さい。私たちも、エルフならではの、お願いしたいお手伝いを相談していきますから。仲良くできたら、嬉しいですぞ。」
「とうさま!」
「「父上!」」
3王子が顔を向けた先に。
パシフィストのハルサ王が、マルグリット王妃と一緒に、いつもよりラフな格好で。ムフッ、と人好きのする笑顔のハルサ王である。
「リュミエール王様!まずは休む事、出来ましたかな?きっとまだまだお身体お心、癒しが必要でしょうが、いやはや王様業はお互い休み知らず、気になる民の事もありましょう。女子プロレスのお話も楽しそうですなぁ!ムフフ!楽な感じに少し、お話をさせていただいても?」
ニコニコと、リュミエール王様が立って迎えようとする前に、近く、親しみやすく体育館の床に座る。がしりと握手。
「私マルグリットも、是非ベルテュー妃様とお話したくて、押しかけてしまいましたの。調子がよろしければ、お茶飲み話でも少し、簡単に致しませんか?私たちにできる事も、幾つかありましょう?」
マルグリット王妃も、膝を床につけて、ベルテュー妃に笑いかける。
ベルテュー妃も、是非是非、もちろん!と頷いて笑い返した。
パチン。
「あっ。」
ヴェールが、涙を拭って、ギュギュとエフォールを抱きしめ、目を見張った。
「あ!」
「あぁあ!」
パチ、パチ。
「ココ、ココ!」
親切なめんどりオーブが、羽毛敷きに一緒にうずくまっていた種子の赤ちゃん。パチリと、つぶらなお目目を開けた子に、こくこくと首を振って。
まむ、まむ。赤ちゃんは、お口を擦り合わせて、キョロ、キョロ。パチン、パチン、クリ、クリ、と辺りを見回す。
「あぁ〜おっきしたぁ!」
「おめめ、開いてる!!」
エルフお母さんと、お父さんが、そわそわと囲んで、羽毛敷きごと大事の宝と抱き上げる。途端に、甘えた、小さな泣き声が、ふぇ、ふえぇ、と。皆が注目する中、響いてきた。
「起きたの。そうなの。良く起きたねぇ、待ってたよ〜!お口まむまむしてるねぇ、お腹空いたかなぁ?」
お母さんが言えば、お父さんが、「ミルク作ってくる!」と駆け出した。
パチン!
パチ、パチ。
クリ、クリ。
ふわぁ〜。
あくびして、手足を、グイッと伸ばす子、モゾリと背中を揺るがす子。あちこち、種子の赤ちゃん達が、目覚めて羽毛敷きの上。その内、種子の少年少女に、オジオバエルフも目覚め始めた。
うわぁぁあ!とエルフ達が盛り上がる。
「防御する、も、アリ!」
ジェムが笑って、竜樹を見上げた。
「「「アリ〜!!!」」」
わわっと子供達に取っ付かれ、エルフ達の笑顔に囲まれて、竜樹も小さい目をショボショボ、ニコニコした。
テレビでは、女子プロレスの実況アルトがめちゃくちゃハイテンションで、カササギ女王タフトとジュニア達が腕組みで。
「初級編その1 楽しい!プロレスの技」を放送していた。
練習して身体を鍛えないと、簡単に技かけたり受けたりできないんだよ!危険なんだ!と注意喚起もするし、地道な練習法も教える。
真似っこする人が必ず出る、と言った竜樹の心配を、親しみやすいコンテンツとして、解消に努めてくれたのである。
ポワン。と竜樹の目の前、白い小さな花が、一輪。咲いて落ちる。
スマホを見る。
クレル・ディアローグ
『エルフ達の一歩に、祝福を!
いいねを5000、送った。
種子が目覚めたお祝いだ。』
ランセ
『良かったね。
エルフ達のテレビ番組、楽しみにしてるね!』
諍いと対話の神、クレル・ディアローグ神が、いいねと祝福のお花をくれたんだ。
ジュヴールとこれからも関わる選択を、その一歩を心に宿したエルフ達に、きっとこれは、励ましの花。




