魔法で羽毛布団
『ルムトンと、ステューの!』
『あなたのひみつ、教えてラジオ!わ〜わわわわわ〜パチパチパチ!!!』
ちくちく。しゅるる〜。ちくちく。
『さてやって参りました、7日に一度のこのラジオ番組。皆さんからの言うに言えないでも誰かに言いたくて堪らない!秘密を教えてもらって、俺たちステューと』『ルムトンが!楽しくお話して、皆さんのむずむずする気持ちを、ワイワイ発散させちゃおうという番組です。』
『今日もよろしくお願いしま〜す!』
ちくちく。しゅる〜。
「•••あ、ジャンドルお父様、何か端っこ可愛くしてる。」
「うん、布がシンプルな水色だから、ちょっとクマさんの刺繍をね。赤ちゃん用だし。」
「え〜可愛いぃ!」
「見せて見せて〜!」
小ちゃい羽毛敷パッドを、チクチク縫い中。竜樹にエフォール、ジャンドルにお裁縫得意なエルフ達男女子供である。
羽毛布団は、中の羽毛が偏らないよう格子状に縫われ、幾つものブロックに分かれている。職人さんが、ブロックの全てに羽毛を後から入れる為の、吹き込み口、道すじを作るやり方を教えてくれようとしたのだが。
「それ、全部格子に縫っちゃって、後から転送でブロック毎に羽毛入れられるのでは?」
と1人のエルフが言い出して。
ムムム?となった職人さんが膝掛けサイズのお試しをシュルシュルと縫い。基本的に魔法が得意なエルフ、1人のお兄さんが、まずは浄化し、しゅばば!羽毛を空中で撹拌しふわふわに整え、転移魔法で、ぱふ、ぽふ、と一掴み位づつ布団の中に入れていき。
ふっくら。ぽふん。パンッと広げる。
「どうでしょう。」
「ーーー出来るね。」
う〜ん! この道20年の職人さんも唸るのだった。
冬用の極厚羽毛布団は、ブロックに分けつつ厚みを出すやり方を、また考えるとして。
最初はテレビの音を聞きながら、楽しくおしゃべりして縫っていたのだが、まだ放送しない時間帯もある。そんな時にはラジオである。
球技大会でもラジオの司会をやってくれた、街頭コントをやっていたルムトンとステューが番組をもって、賑やかしく笑わせてくれる。
『ペンネーム、雑草たましいさんから。私の秘密は、時々妻の化粧水を、黙って使ってしまう事です。乾燥してカサカサしてるな、と何となく借りてみたら、ちょっと良い感じになって、手触りも気持ち良く、匂いも良いし、今では3日に1回。やめられません。自分で買うのは恥ずかしいし、妻にも言えない。でも使いたい。』
『お〜。何を隠そう私ルムトンもですね。化粧水は使っています。だって、良いんだもの!顔も重要な商売だもの!』
『うっそ、ルムトン使ってるの?』
『うん。だってよ?パッと見た時、肌が荒れ放題な芸人と、整えてるな!って芸人がいたら、整ってる方が好感度あるでしょう?』
『うん、そうかも。』
『あのね、美形じゃなくても良いの。整える努力をする余裕があるな!っていうのが、見てもらえて違う訳。』
『良い事言うじゃん。』
『まあ俺は美形なんだけど。』
『ええ!?いやいやいや!む?』
くすす!
エルフの若い女性が笑う。
美形だと自分で言うルムトンは、テレビにも出るが、愛嬌のある顔立ち、というのが正解である。




