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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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コウキと文と千沙ちゃんと 3



鈴木と文が熾烈なコウキへのアプローチ合戦を行なっている頃。


マリコやタツヤ、コウキ、サチに時々竜樹の畠中家の面々の温かいぬくもり、いや、関わる全ての周りの人達の見守りの目、そして時薬によって、心のケガに手当てがされて、笑顔も徐々に増えてきた千沙ちゃんの、誕生日が近づいてきた。


千沙ちゃんは、畠中家で皆にお祝いして欲しかった。お父さんとお母さんが生きてた時みたいに、ケーキを買って、みんなで食卓を囲んで。文と、コウキと。

だからコウキに、お誕生日にお祝いしてほしい、と抱きついて頼んだ。


『コウキお兄ちゃん。今度、千沙のお誕生日なの。ケーキで、みんなとおいわいがいいの。』

マリコなどがニコニコ、畠中家でやるの?そりゃ良いねえ、と後押ししたが。


誕生日が何日か、文に尋ねて確認したコウキは。

『その日は、先にお誕生日の約束がある子がいるんだぁ。小学5年生の葉月君ていうの。』


え〜!

千沙ちゃんはガッカリしたけれど、文に、わがままダメよ、と言われて、しゅんと黙り込んだ。

コウキはそれを見て、ニッコリと。


『千沙ちゃん。葉月君と同じ誕生日なんだから、おめでとうし合っても良いよね。葉月君にケーキを渡すのに、一緒に来てくれない?』


もちろん千沙ちゃんは、ニパ!と笑って、文にねだって一緒に行く事に決めたのだ。


『葉月君て、ご親戚の子か誰かなの?』

文の、何てことない気持ちで聞いた、質問に。


『こども食堂に良く来る、俺の友達だよ。片親で、お母さんが働いてて、なかなかちゃんとご飯が食べられない状況だった子なんだ。お母さんは葉月君を可愛がってるし、頑張ってるんだけど、身体を壊していて、何とか治ってきたかな、もう少しヘルプがあれば、経済的にも安定するかな、って所。』

『•••••••そうなの。』


文は、千沙ちゃんだけでも大変だ、可愛いけれど、思い通りにはならない一つの命を預かるのは。そう思っていたけれど、他にも色々な人がいるのだ、と。頭では片隅にあっても、実感できなかった無知を、鈴木とこっち向いてくれ抗争をやっていた、自分の承認欲を恥じた。


『何か恥ずかしいな。私は、自分を見て、見て!って絶えず皆に言ってる職業だけど。コウキさんは、自然に周りを見て、人助けできていて、すごいわ。』

しゅんとする文である。


そんな自省を聞いた、コウキの言葉で、文は、落ちる。


『そんな事ないよ。俺は、バイトがあるから、ボランティアサークルにも所属してないし、自分が行ける時だけ、都合が合う時だけ、そして、友達の葉月君に関わる時だけ、こども食堂に行ってるんだもの。葉月君にも、全身で助けて、って縋られたら、多分、俺一人じゃ潰れちゃう。誰かを本当に助ける、って、すごく力がいるから、ボランティアサークルの他の人とか、こども食堂の人とも協力し合って、できる事しかできないよ。』


お誕生日のケーキは、ボランティアサークルが、誰か一人につき一つ、と費用を出して、何とか来る子供全員のお誕生日に、配れているのだという。


『今は、経済的に苦しくても、パソコンやスマホがないと、就職活動や進学の願書の受付さえできない状況だから。家に通信手段がない家の子に貸し出したり使わせる為の設備を、こども食堂に併設しよう、って動きがあるよ。そういった事、俺だけで、できるわけないよ。ちゃんとした大人が、仕事にしてやってる。それに。』


文さんは、大人として、税金も払っているじゃない?何もしてない訳じゃ、ないでしょう?

コウキは、穏やかに、考えながら、文に言うのである。


『何かしなくちゃ、て罪悪感を煽るように無理に人助けをさせる、って、俺は何となく好きじゃないんだ。人には色々な事情もあるから。でも、助けてほしい人は待ったなしでいるから、その時に出来る事だけやる。自分も助けてもらったからね。ーーーまぁ、竜樹兄の受け売りなんだけど。』


文の心に、しん、としみ通る。


『文さんは女優だから、演じる事で、高く飛んで見せたり、同じ気持ちで底を這いずり回ったり、縦横無尽にそんな気持ちにさせる事ができる。一時苦しさを忘れさせる、心の力になる、そんな事ができるのも、文さん達、何かを創る人の、特別な力でしょ?自分の経験全てを使って、シンボルとして踊る、巫女さんみたいなものだよね、女優さんって。』


とても大事な職業だよ。

コウキの笑顔は、他意なく、素朴で、そんなに格好良くもない顔なのに、文には灯台のようにピッカリと、光って見えた。


今まで、文は。

自分の仕事について、そんな風に思った事がなかった。あぷあぷと、必死に泳いでいた。

ああ、この人と、一緒にいたいな。

この人と一緒にいたら、私は、この世の中を、ずっと踊りきる事ができるだろう。


どんなに過酷な撮影があっても、ここに帰って、心を穏やかに。


文はそう思って、ポロリとすぐに口に出した。


『コウキさん、私と、付き合ってください!』

『良いですよ、どこへ?』

コウキは分かってなくて、ニコニコと承諾した。


『人生の終わりまで!』

『へ?』


千沙ちゃんが、ん?む?それってけっこん?ふわぁぁぁ!と顔を綻ばせて、文お母さんと、コウキお父さんね!?ね!?と足下を駆けまわり抱きついて、ガッシリと文に手を握られて、へ?へ?とコウキは、しばらく分からずにいた。

マリコが側から見ていて、クスクス笑っていた。


それからも、文に、俳優仲間のカッコいい男性からコウキに向けて宣戦布告があったり、文が相手にしなかったり、コウキが知らずピュアビームで撃ち落として友達にしたり。

コウキが葉月君とケンカして、しょんぼりするのを文が慰めたり(仲直りしました)、コウキのまだまだ未熟な所を、文が一緒に話を聞いたりもして。千沙ちゃんと葉月君が友達になったり。

お互いに助け合って色々な事があって、今。


コウキと文と千沙ちゃんは、家族になったのである。






フラッシュモブプロポーズも流れて、体育館や転移でジュヴールに来ているエルフ達は、うっとりである。


『2回見ても素敵ね!すてき!』

『うむうむ。お互いの欠けている所を補い合う、思い合う。普通に誰かと生きていくって、それができたら祝福だ。』

エルフのリュミエール王も、納得。

『私たちも、こんな風になりた〜い!』


ジュヴールの民達は、何とも無言である。あまりにも自分達とかけ離れた考えの所から、シャワーのように動画を浴びせられ、一言もない。

素敵なような気もするけれど、圧倒されもするけれど、心浮き立ちも、するけれど。


『ーーーいいなぁ。』


青い布を頭に巻いていた、最初に話しかけたジュヴールの青年が、目を伏せて一言。

エルフ達は綺麗で、でも一言も話さなくて、あんな風に心通わせられたら、とも憧れに思うけれども。

多分、もう、エルフ達は自分の所に、帰ってこない。

ガックリ、と首を垂れる。


何故か苛々とする、ジュヴールの王、キャッセ。そして魔法師長も。

何だこのお花畑の世界は。

こんなのでエルフが圧せられるか。服従するものか!

ケッ と唾を吐くが、誰も2人に目を留めなかった。


竜樹はとどめに、スマホから曲を流した。

お爺さんとお婆さんがいて。今まで色々な事があって、出会った日、結ばれた晴れがましさ、別れようと思った一時、子供が生まれ、育ち、手を離れて大人になり、また2人に戻って、残りの1日1日を淡々と過ごして、そしてーーー。


エルフ達は、ポロリと涙をこぼして感動し、そんな相手と添い遂げたいと。


ジュヴールの民は、そんな事が、この先、自分に訪れるものか、不安に。



『ふむ、ふむ!中々面白い、どうがであったな。曲も趣深い。このように、皆、連れ合いと協力し合って生きていけたら、苦労の中にも幸せであろう。ジュヴールの民達も、エルフを大事にできたら、そんな夫婦になる可能性も、無くはなかったと思うのだぞ。だが、今このようになっては、無理な事だろうな。これからは、身近な者との、良き関係を求めるが良い。』


クレル・ディアローグ神が、ゆっくりと言葉を落とす。


ジュヴールの、しょんぼりが激しい。

そんな事ができるのだろうか。

土地も衰えて、不毛になるというのに。


竜樹が、うんうんと頷いて。

『ジュヴールの民達が、エルフ達に協力を仰ぐということも、今日の今日で、何も改善されてない状況では難しいでしょうね。それと、エルフ達に救助要請までさせてしまった責任を取る、方法ですけど。』


さっ、とジュヴール王キャッセに、そして魔法師長に、皆の視線が集まる。

カッ と朱を上らせたキャッセは。

『私が何の責任をとるというのだ!何も責任を取るような事をしていない!』


ああ、ダメだな。

各国のトップ達も、もう見切ってしまった。


『ジュヴールの王宮に、これから我々の連合軍の兵達と、国の再編を担う管理官達を、各国からエルフの転移で送ります。』

『リーダーとなるのは、ギフトの御方様がいて、救助要請をその地で受けた、パシフィストの者が良いでしょうね。』

『うむ、異議なし!』

『宜しいぞ。』

『ジュヴール王の血縁者や、呪いに関わった者達も、捕らえて罪を償ってもらいましょう。』

『うむ、それが良いだろうね。』

『ジュヴールの中で、使える者と使えない者を選別するのも大変でしょうな。』

『まあ、徐々にやっていくしかないでしょう。』


自分の言葉に、全く応えずに話を進める各国のトップ達に、キャッセ王は叫び、怒り、地団駄を踏み、そしてリュミエール王に魔法の蔓草で縛られて、グッと黙った。

ヒクヒク、ニヤリと逃げようとした魔法師長も、伸びてきた草の蔓で、雁字搦めに縛られた。



『これより、ジュヴールは、この大陸の国々の連合支配下に置かれます。文句は牢屋で言ってもらいますよ。ひとまず、それで良いですか?リュミエール王。』

『こちらはそれで宜しい。色々とご面倒をかけるが、各国の皆様、よろしくお願いします。』

『では、まずはジュヴールの上の方の人達をギュッと摘みましょう。』

『そうですな。話はまた、それからで。』


『クレル・ディアローグ神様、ひとまず今日の話し合いは、このようになりました。見ていただいて、ありがとうございました。』

『『『ありがとうございます』』』

『深い御心に、感謝致します。』

『『『感謝致します!』』』


『うむ。今後も良き話し合いができるよう、私は見守っているぞ。上手く計らいなさい。エルフ達は、ゆっくり養生するように。ではね、皆、それから竜樹。』

『はい、クレル・ディアローグ神様。』


ふわっ、と消えた神に、ふう、とため息を吐き。下々の者は、今日も懸命に生きるのみである。



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