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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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16日 顕現



種子になったエルフ達は、悲しいかなとても軽かったので、ドンドンと運べてしまい。ジュヴールの王宮広間から、パシフィストの体育館へのエルフの移動、転移は半刻程でおおよそが終わりつつあった。


その間、竜樹達は。

パシフィスト発で、お願いしたかった各国含む、道を残しつつちょうど良い転移魔法陣の件、エルフ達を救助する為にロテュス王子から許可を貰って、まずは公に、荒く作ってみようとしている事や。

お風呂をエルフが気に入って、森に帰っても入りに来たいと言っているから、パシフィスト各地に銭湯を作ったりしても面白いかもねとか。そうしたらパシフィストの国の隅々まで、エルフが来てくれるかな。国民、皆にも喜ばれないかな?

クラージュ商会の葉っぱ事業に、エルフ達、興味ないかなぁ。

珍しいお花を扱う、エルフのお花屋さんとかも素敵ですね、なんて、未来の愉快な話を、ゆっくりと話しながらやった。


リュミエール王様とロテュス王子は、和やかに微笑み、頷き考え応えながらも。種子のエルフ達を丁寧に運び、皆に良いようにしようね、と語りかけ、優しく送った。


体育館のエルフ達は、種子エルフ達を温かく迎え、えー銭湯って何?とか突っ込んだり、葉っぱ事業に身を乗り出したりし。3王子も、エルフ達に、いっしょに、かんがえようね、とウンウンして。


各国のトップ達も、ふむふむ?と、我が国にもエルフに来てもらえるようにするには?それぞれ違う特色を出して、国作り。興味深いねその話、などとちょいちょい口を挟んだ。


捕らえられていたエルフの奪還作戦中、なのだが、何故か和やかムード。


ジュヴールの国民達は、それを呆然と見て、聞いて、何となく居心地の悪い気持ちになっていた。

自分達は、エルフに•••。

けれど、エルフは便利で言う事を聞くキレイな奴隷だ、と皆が言い、それで何も問題なかったのだ。今までは。


急に、調停者だ大事にしなければ、と新しい考えを、沢山のスクリーンから言われても、簡単には頷けなかった。


だって、受け入れてしまったら、自分達がした事は。



ガサガサ、ザザザ!と1つのスクリーンから雑音がした。

ジュヴール王キャッセを放送していたものが、激しく動いて揺れる。

ピタッ と止まった画面は、キャッセが周りの兵達と、王宮の庭にいて。自分の血縁上の息子、エクラを戒め縛り、その背中を足蹴にしているものだった。

エクラは、土に顔をつけているが、穏やかな表情で、観念した様子。まだ10歳なのに、潔すぎる。


『はははは!おい、エルフ達を運ぶのをやめろやめろ!!やめないと、コイツの首を掻っ切るぞ!!』

寄越せ!と近くにいる兵から剣を奪い取り、エクラの首にヒタリとつける。

その後ろでは、ジュヴールの魔法師長が、ふふ、と笑んで腕を組んでいる。


『エルフを1人でも捕らえてあれば、皆、見捨てられずに服従するのだったな!ははは!馬鹿な種族だ!大陸全土に知らせるがなんだ!エルフを従えた我らに、勝てる国があるとでも思うか!』


高らかに笑うキャッセだが、ふーん、と竜樹は半目になり鼻を鳴らした。


『結局、エルフ頼みなんじゃん。王様はそんな考えなんだね、分かったよ。でも、ジュヴールの国の人達みんなはさぁ、それで本当に良いと思ってるの?』

『良いに決まってるだろう!エルフより優れた我々が、使ってやってるんだ!』


嫌だなあ。間違った優越感。

『えーどの辺が優れてるの?ちょっと聞かせて欲しいなぁ。』


竜樹が、チラリとカメラクルーを見る。映る範囲の外でニュース隊に、ちょいちょい、と指を自分に向けて呼ぶ。はっとしたニュース隊は、ウンウン、頷き、竜樹をグッとアップで映した。

その画面の外では、エルフ達をドンドンと転移させ続ける。

そう、時間稼ぎだ。


『どこ、ってーー。』

うぬぬ、と口ごもり、キャッセは魔法師長を振り返った。

魔法師長は、自信満々に。

先程は慄いたが、そうだ、エルフさえ止め置ければ、大陸全土の国々だって、こちらに害はなせないだろう。きっと。そうだ。そうに違いない。

たらりとこめかみを伝うのは、冷や汗などでは、ないのだ。


『劣った者でなければ、何故エルフは我々に使われるのですか。私達とあなたたちと、何が違うんです?結局はエルフの能力を便利に使いたい、一緒じゃないですか。我々はそれを、効率的にしたに過ぎない。たった1人を切り捨てられない、愚かな国王のお陰で全員が犠牲になる。そんな種族の、どこが劣っていないとでも?』


竜樹はため息をつく。

『ジュヴールのやり方は、狡いだけだと思うよね。そしてエルフ達は、確かに賢いやり方じゃなかったかもしれないけど、俺は、そんなエルフ達が、好きだよ。』

ロテュス王子とチリが、そーっと、そーっと、種子エルフを運んでいく。


『周り中に、私は偉い、私以外は皆、私の下だ!ってトゲトゲ言うだけなら笑っちゃうけど、まあ良い。でも、対等に話が出来なければ、それって困った時に、誰からも助けてもらえないよ。』

チラリ。横目で見るに、あと1人で種子エルフを運び終える。


『何を困る事が?』

ハッハッハ!

笑う魔法師長に、キャッセも兵達もつられてか笑う。

エクラは地面にギュウギュウと足蹴で押し付けられ、小さな、震える、絞るような声で。


『竜樹様。エルフの、リュミエール王様。私を、どうぞ、見捨てて下さいーーー。みんなにげて!』


竜樹のショボショボ目が、キュ、と少しだけ険しくなった。


『例えば。』

シュン。

最後の1人が送り終わった。




『神様の御前で、国の存続をかけて、弁明と対話をしなければならない時なんかに。』


誰にも助けてもらえない。

それを、とくと味わうが良い!



竜樹がスマホを出して、音声入力をオンにして、高らかに宣言。

神々の庭にアクセス。


『クレル・ディアローグ神様!どうぞエルフ達とジュヴール国との調停、今こそよろしくお願い致します!ギフトの畠中竜樹、そして大陸全土、各国のトップが、見届けに立ち合います!』




キラキラ!シュワ!

リュミエール王、ロテュス王子、竜樹達と護衛マルサにカメラクルーが触れ合い転移で、王宮の庭、エクラが捕らえられている、その真ん前に。



そして空を大きく覆う閃光。

カッ!


ヒャアア!とスクリーンを見ていたジュヴールの国民、全てが慄き平伏した。魔法師長も、ジュヴール王キャッセも、兵達も、ガクガクと膝が震え。


圧。俯いたその尊い顔を、長いストレートの黒髪靡かせ、すうと上げて。

ニコリ、神が笑う。

人々は畏れながら、膝を地にするばかりである。


諍いと対話の神。


クレル・ディアローグ神の顕現である。



『来たよ、竜樹。ふふふ。対話するのに、呪いがあっては、自由に気持ちを話せまい?私が、ジュヴールのかけた呪いを全て解除してしまっても、良いかな?』


なっ! ジュヴールの魔法師長が焦るが、口を開く事は許されていない。

この場を支配するのは、神なのだ。


劣るだ何だと言っていたけど、神様にしてみりゃ、どんぐりの背比べだよね。

竜樹は、慣れのせいか、あまり圧を感じなかったので。ハキハキと応える。


『はい!クレル・ディアローグ神様!呪い、解除お願いします!』


パチン。

神が瞬きを、ひとつ。


バリン!

ひい!

ぎゃあああ!


遠く近く、悲鳴が、おおおと響き聞こえる。


『おやおや。呪いを、随分と沢山かけていたんだねえ。まあ、呪いは、返されるのを覚悟してやるものだから、仕方がないよね?』


ふふふ。ご機嫌良く笑う、クレル・ディアローグ神様。


コケ、コケケッコ〜。

オーブが呑気にパタパタ飛んで、縛られたエクラの頭に、ふっくら止まった。

バララ、と縄が自然と朽ちて解れる。

リュミエール王が、跪きつつ、エクラを手招きで呼ぶ。

目をまん丸くしたエクラは、神を見上げ、躊躇い、けれど、トト、と小走りにリュミエール王の側に寄る。オーブを頭に乗せたまま。リュミエール王は、背中を抱いて大事な宝を懐に入れるかのよう、抱え込み。

エクラの頬は、ポポッと赤く染まる。


ロテュス王子も、弟エクラの手を取って、ギュウと、握った。



『さて、それでは、諍いと対話を始めよう。』





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