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スマホ、対応してくる

「竜樹様!こ、このチリめを呼びましたね!試作品を持ってやって参りましたよ!さぁ試してみましょう!」


さぁ、さぁ!

勢いには定評のあるチリが、ガチャガチャと沢山の、布を貼った板や魔石をカートに乗せてやってきた。このカート、竜樹のスマホのショッピングサイトで元になる商品を見かけて、欲しい欲しいと言っていたので、たぶん作ったのだろう。使わない時は2つ折にしておける、便利なものである。

何でも作るチリは、本当に器用で、助かっている竜樹だ。

が。


「チリさん、午後からだってば。」

「そ、そうでしたかね?まあ、微妙な差ですよ、昼前か昼後なんて。どっちも今日ですし!•••何をしてたんですか?」

流れるように、空いている椅子に座るチリ。興味深く、竜樹の手元を覗き込む。


「こちらの文字と、喋りの勉強だよ。ミランは、同時に俺の国の言葉を覚えたいんだって。」

「竜樹様に教えていただけるとは、身に余る光栄です。」


ニリヤと竜樹の部屋隣り、二人の勉強部屋。広くて大きな黒光りしたテーブルに羊皮紙と、練習用の荒い漉き紙が散らばる。


珍しく席を同じくしたミランは、フンス、と意気込んで。

「竜樹様のお役に立てる事もあるかと思いますし、竜樹さまのお国から来られるギフトの御方が、これからないともいえませんし。出来るだけ、よくこの世界に来て下さったと、竜樹様は勿論、これからの方もお迎えしたいです。」

「教え合うの、効率いいし、ニリヤの勉強にもなるしね。」


「おうた、つくるの。」

フワワんワウ〜。鼻で歌い、羊皮紙に書かれた文字を1つずつ指差すニリヤである。


「歌ですか?」

「竜樹様の世界では、基本一通りの文字を歌にしたり、詩にしたりしているそうなのです。」

「ABCの歌ね。あと、いろはにほへとが、詩ね。音楽でも、音階を歌にしたものがあるって話をしてたんだ。」


「アーはことりのアー♪」


翻訳のおかげでおかしな事になっているが、アー、と読まれる文字は、小鳥という単語の頭文字になっているようだ。

「アー、って、Aみたいじゃない?」

「エー、とお読みするんですね。勉強になります。」


竜樹の世界のものに似た文字や単語が、初めての勉強会でも、幾つか発見された。

ミラン曰く、今までに来たギフトの人々の、それぞれの言葉が、断片的に取り入れられているそうで、『ギフト』という単語は、翻訳を切っても、「ギフト」と聞こえる。


「ニリヤ様の姓のリュンヌも、月という意味の、ふらん?語だそうです。」

「フランス語かぁ。確かにソレイユやエトワールも聞いたことある。」


チリはホウホウ、感心して、

「魔法の呪文や魔法陣の記述のきれぎれも、歌にしたら覚えやすいかもですね。そうそう、すまほで、作った歌を『どうが』にしてみませんか?みんなで見られる、ほどほどの大きさの『がめん』を用意してきましたので。」


作成会議と上映会と参りましょう。


「うん、歌って、良いかもしれない。テレビの最初のとっかかりにも。」

テレビ初期の頃、プロレスの試合を観てて、失神しちゃった人がいたとか。あまり激しい番組作りは、竜樹の目的にも合わない。


「?てれびって、昨日もおっしゃってましたね、竜樹様。そんなに刺激的なものなんです?ばんぐみを見て、私もマルサ様も参考にする様に、でしたよね。」

マルサがニリヤに一つずつ文字を読んでやる合間に、ミランに同意する。

「子供が見ても大丈夫なものなのか?」


「そう、それでみんなで見られる画面を、チリさんに持ってきてもらったんだ。折角だから、こんな風だよって、ちょっと見てみようか。」


スマホを出してネットで見られるテレビ番組を検索、•••しようとして。




「何だこれ。」




『翻訳対応用/日本語用』



画面に大きく表示。

見たことない。自分のスマホでこんな選択肢。



「もしかして、異世界仕様になる、の、かな?」


恐る恐る、『翻訳対応用』を選んでみる。


子供が初めてお使いする番組、みんなで一緒に、言葉の壁なく、観られました。


「い、いじらしい!可愛い!子供達、なんて頑張り屋なのか!」

うんうん。うんうん。


「ハラハラして、ドキドキして、泣き出した時なんかには、もうお使いなんてしなくて良いから、お家に帰っておいでと言ってやりたくなります!でも違うのですよね!それぞれが、間違いながらも、それぞれのお使いをするのがいい!なんて番組なのですか〜〜!」

チリとミランは、手を取り合ってぐすぐす、もう泣いてる。


感じいった様子で、マルサも、

「竜樹のいた国は、本当に平和で豊かなんだなあ。子供達が、みんな大切にされてる。あんな幼い子供が、1人でお使いなんて、心配で仕方ないよ、俺は。」

「変装した大人がいっぱいついてるよ。」


「おつかい、ぼくも、できるよ!」


ニリヤは、期待を込めて、竜樹を見上げている。

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