表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

287/692

16日 カッケーエルフ

「たつき様。私たち、お風呂もすっごく気に入ったけど、他にも気に入ったものが、あるのよ。」


集まってきたお母さんエルフの内、ばぶばぶ、盛んにおしゃべりしてる赤ちゃんエルフを、抱っこした1人が。


「何だろ?」

竜樹が首を傾げる。


それはね。

フリフリ、と哺乳瓶を振る。

「粉ミルクよ!」

「ウンウン!良いよね!」

「欲しいだけ貰えたもん。」


興奮したエルフ達が、口々に。

「私たち、母乳が良く出なくて。食べるものが少なかったからだと思うんだけど、私たちは我慢できたとしても、いつもお腹空かせて、ぐずぐずしていたのよ、赤ちゃん達!」

「ねー!ミルクください、って何度も言っても、ジュヴールの男も女も、エルフだから長生きで丈夫なんだから大丈夫だろう、って!そんな訳ないじゃない!」

「パシフィストに来て、お願いだから赤ちゃんに何か、栄養になるもの下さい、って言ったら、たつき様が考案したっていう粉ミルク、いっぱい貰えた!」

「使いたい時に、自由に持って行って良いよ、って机にいつでも用意してあるの!お湯も魔道具のポットですぐちょうど良い温度になるし、浄化の機能もついてるから、簡単で、すごく嬉しい!」

「粉だったから、最初、驚いたよね!」


ヤギ乳のままだと、時止めの倉庫に入れて貯めておく事はできるけど、嵩張る。流通に、瓶や缶で、重くて都合も良くないし。


と思って、竜樹が粉ミルクの提案をしたのだ。霧状にしたヤギ乳を、魔法で瞬時に乾燥させると、サラサラした粉になる。それを、一定の大きさのキューブに固めて、一個入れたら哺乳瓶のこの目盛りまでお湯入れて、と、哺乳瓶も軽い樹脂のもので作り、セットで売り出ししよう、と準備をしていた所だった。勿論、竜樹はツバメのミルクとして、既に使っている。


販売に向けて作り溜めていた、その在庫を国が買い上げて、エルフ達に使ってもらう事にしたのだ。

粉ミルクを商売にと、やる気を見せてスカウトされ、頑張っていた商人は、昨夜エルフ達に自ら作り方を説明し、やって見せて。一生懸命に、グイグイとミルクを飲む、普通の子より小さな赤ちゃんエルフに、グスッ、と隠れて泣いたという。

「こういう仕事が、したかったんだ。」

とは、彼の談である。


「ねー!粉だと、時止めの魔法もなしに、長くもつし!」

「欲しい時に、欲しいだけ作れるもんね!」

「この子たち、生まれて初めてくらいに、お腹いっぱいになって、昨夜は良くねんねしたのよ。ねー?」


お母さんエルフ達は、嬉しそうに赤ちゃんをよいよいする。竜樹も3王子もスーリール達も、嬉しくなる。


「こういう、便利な新しいものがあるんだって分かったら、森にだけいないで、外に出ることを増やして良いな、って思った!」

「私も!何でも新しくすると、忙しくなっちゃいそうだけど、知らないでいるのと、知ってて選んでやめとくので、違うもん。」

「それに、新しい事を知るのは、楽しいよ〜!」


ウンウン、と頷き合うエルフ達である。

お父さんエルフ達も、ご機嫌の赤ちゃん子供達に、微笑みである。

ヴェル妃から竜樹が聞いた、エルフの出産事情からすれば、お父さんエルフが可愛がっている子供達の大半が、そのお父さんエルフとは血が繋がっていない。そもそも、男性エルフと女性エルフを、離れさせていたと聞いた。


お母さんエルフ、お父さんエルフと子供のエルフは、そんな事情を少しも見せず、和やか。そもそも、子供達なら家族の垣根を問わず、可愛がっている様子のエルフである。

強い。カッケー!


エルフ達は、驚くほど、明るい。

酷い目に遭っていたんだろうし、それを嘆く気持ちも、ついた深い傷も、勿論あるのだろうけれど。

苦役苦痛から解放され、呪いもロテュス王子が解けた事で、半分覗き見されている感覚が残る位なのだそうだ。見てるんだ、と気持ち悪く思う。早く呪いを解いてやらねば。


未来が明るく見える事で、興奮しているのだろう。

これから、ジェム達の悪夢のように、思い出し痛む事もあるかもしれない。


今は苦痛を飲み込み、明るく過ごすエルフ達を、竜樹も3王子も、そしてパシフィストのエルフに関わった者達も、好ましく、助けになりたく思っている。


ちゃららんらん♪ ぶるるらる


ザザッ


お父さんお母さん子供エルフが、んん?と不思議そうに竜樹の懐から鳴るスマホの着信音に、耳を澄ます。

そして、何やかややっていた、チリとエルフの魔法使い達、の集団が、ものすごい視線で竜樹を。


「あ〜、すみません、弟のコウキから電話です。ちょっと失礼。」

断って、ホチ、と一旦出る。


「コウキにいさま〜!」

「コウキ〜!」

「久しぶり〜コウキ〜!」


3王子達がコウキの名前に反応して、手をフリフリする。エルフの子供達は、えー、お話、できてる?誰と?など、興味ありげ。


「コウキ、今、酷く扱われてたエルフ達に、何かできないかボランティアに来た所でーーー。」

『え、エルフ!!!す、すごい!』


こちらも興奮の、竜樹の弟コウキである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ