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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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14日 陽だまりの寮と輝くピティエ



「ししょう〜、何で、バーニーくんは、バーニーくんなの?」

ニリヤのなぜなには、続いていた。


うーん。

竜樹は、勿体ぶって顎に手を当てて、考えたフリをした。

「何となく、バーニー君は、バーニー!って呼び捨ての感じ、しないなぁ。何でも実現バーニー君、で覚えちゃってるからなぁ。」

「し、しないですねぇ。バーニー君は、バーニー君です。」

チリ魔法院長まで、うんうん、と竜樹に追随して。


「何でですか。バーニー、で良いんですよ!それに、何でもは実現しませんよ!可能なものを、可能な限り、ベストな状態で、って働いてるだけです!」

「いつも、ありがとうございます〜バーニー様〜。」

「あ、ありがたや、ありがたや。」

おーおー、とひれ伏す真似っこをする竜樹とチリに、ちょっとやめて下さいよ、とプリプリし、恥ずかしがる、割と可愛い所のあるバーニー君なのだった。

午前の新聞売りに出かける為に、制服を着てキャスケット帽を被ったジェム達は、それを見て、キャハハ、と笑って。バーニー君をパシパシと手で叩きながら。猫がするりと身を寄せて足の側を歩いていくみたいに、つるりと側を通って、「行ってきまぁす!」と声上げて出て行った。

何だかんだ竜樹の仕事をサポートする、バーニー君に親しみを覚えて、慣れたのである。

今日は家に帰るよ、とエフォールも、「またね〜!」した。


「はーい!行ってらっしゃい!お仕事頑張ってね〜。エフォールも、また来てね!」

竜樹も、チリもバーニー君も、そしてラフィネとシエルとエクレ、管理人のルシュ夫妻も、寮に残る小ちゃい子組も、そして3王子も。一緒に玄関の外まで出て、フリフリ〜と手を振って。街の詰所に勤務する警備隊員達と、オーブ達めんどりに守られて、出勤する元気な子供達、そして家で手紙の応えが待っているエフォールを見送った。


しかし、チリ魔法院長は分かるとして、バーニー君まで寮でおぼんを過ごしていて、良いのかな。交流室に戻り、竜樹が聞けば。


「私が実家に帰りますと、商家なのでね、お手伝いをもれなく、させられてしまいます。休みたい時は帰らなくて良いって、言われてます。お願いします寮で休ませて下さい。」

のへ〜、とくにゃくにゃになるバーニー君。うん、今まで働きづめだったろうからね。

「おお、は〜い、ごゆっくりして行ってね。」

ここは、3食出るし、子供達に塗れてると、身体も動かして良く眠れるし。

「ええ、ええ。それに何とな〜く、ここ、気分が良いんですよねぇ。」

「だよねぇ〜。」

「春の日の陽だまりみたいな。」

「命が芽吹き、喜び、身体が緩んで、ポカポカする感じ、するんですよねぇ。」

目を細めたチリとバーニー君2人は、クッションにダラリと縋り付くと、そんな事を言う。おうおう、癒しを求めているのだね。





ピティエは、昨日13日の夕方には、家に帰った。モデルをやるのだから、キチンと身だしなみを整えて、コンディションを高めたかったからだ。

お仕事として、請け負っている事だもの。仕事ができる事が嬉しい。新入社員のように、初々しく、真面目に、全力なのだ。


家で、ピティエをバカにしなかった侍女に、肌のお手入れや、髪の艶出しなどの方法を聞いて。

全身をくまなく、そして髪を洗った後。精油をほんの一滴、洗面器のお湯に垂らし、そのお湯に髪を馴染ませる。香りの穏やかな精油だったので、嗅覚の鋭いピティエも、これは良いな、と思った。

コンコルドが、ふかふかの上等なタオルを2枚使って、乾かしてくれた。元からサラリのピティエの髪は、更にツヤツヤするんと、輝き潤った。


侍女が、ふふふ、とほくそ笑む。

人が美しくなる、というのは、気持ちの良いものなのだ。

ましてや、最近努力をし、胸を張るようになったピティエを、侍女達だって評価していた。やるじゃん、ピティエ様。って、思われているのだ。


侍女に借りた化粧水とコットンで、顔の肌を拭き取る。お礼に新しい化粧水と精油を買うお金と、美味しかった干菓子を幾つか包んだおひねりを渡したら、他の女性の使用人達も、キャキャ!と集まって、皆でピティエをサカナに、いや、協力して磨き込んでくれた。むくみを取るマッサージまで。

騒動に、侍女頭が怒るかと思いきや。


うむうむ、と指揮をして。

「当家のピティエ様の美貌を、最上の状態で輝かせるのです!」

と拳を握った。


食事も多すぎず少なすぎず摂り。

睡眠も過不足なく、充分に。


14日、本番の朝。

すー、パチリ、と目を開け、日差しを浴びたピティエは、サッとサングラスをしても、どこか光輝いていた。

最高のコンディションである。


「ピティエ、何だか、今日は、いつもよりずっと素敵よ。」

ほー、とため息を漏らして母が褒めれば。

「うんうん、ピティエ、それに、今日は凛々しいよ。少し緊張してるのかな。」

父が、にこやかに聞いてくる。


「はい、緊張はしているんですけど、嫌な感じの緊張じゃなくて。やるぞ!って気持ちです!」

朝日が当たる。キラキラしている。

コンコルドも、喜びをもって、いつもより興奮してピティエに添った。





その頃。

ピティエを上から目線でこき下ろし、白杖を壊そうとし、見つかっても謝るでもなく、呪いの言葉を吐いた元侍女、グリーズは。

ピティエの家、アシュランス公爵家から解雇されて、戻った実家の、マージ商会を手伝いするでもなく。

だらだらと家事のみ、ちょっとだけやり、ぶすぶすとぶすくれて、世の中の全てを呪う勢いで暮らしていた。

お金もないから遊べないし、外に出て行こうとすると、この年齢で、あんな理由で解雇されて、恥ずかしいから家にいろ、と言われ。


平身低頭、ピティエの兄ジェネルーに謝った父親に、何をやっているんだ、と苦々しく冷たい目で見られたのは、まだ良い。

母は、フーッ、とため息をついて、何も言わず、グリーズに何もさせず。

何で先様のご子息を、そんなに貶すのかしら。どこか、ご子息とは遠い所、こんな娘でも貰ってくれる所にやった方が、良いのかしらね。なんて、父と密かに話しているのだ。グリーズは2人がくつろぐ居間、部屋に入れず、廊下でウロウロして聞いてしまった。


何よ、何よ!何で私がこんな目にあわなきゃいけないの!

これも皆、あの半端者なピティエのせいよ!


と反省もしていない。


家にばかりいるので、くさくさした気持ちのまま、父が出かけ、母がちょっと座を外した居間に入る。

先程まで、届いた手紙などを整理した箱を見ながら話していた両親である。

何の気なしに、箱を探る。

何か面白いものないかな、と。


かさこそ、と探り、後でグリーズが触ったと分からないように、順番などを変えないように、端を持ち上げ。

金箔が貼られた、いかにも特別とみえる封筒を、つい、と抜く。


「ファッションショーのご招待券???」


あれか。今朝テレビでやっていたやつ。


ニンマリ、口の端が上がる。


「ちょうど2人分!アロンジェ様を誘って、行ってみよ!」

執事カフェの売れっ子執事、アロンジェが一緒に行ってくれるかは不明だが、本日のグリーズの予定は、これで決まった。


無くなった招待券を、両親が探さないはずは、ないのに。






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