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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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13日 エフォールの正直な手紙と黄身しぐれ


ジェム達、王子達、と、エフォールの考えまとめ用の表を、床に広げてとっついて。今度はエフォールの手紙の下書きに、伝えたい事を箇条書きした後、本書きである。


今のお父様お母様への手紙は、スラスラ書けていたエフォールも。新しいお父様へは、まず名前も知らない所から、探り探りで書くしかなく、ジェム達や王子達に、どう思う?なんて聞きつつ、考え考え書いていた。


『新しいお父様へ

はじめまして、私はエフォールと言います。

今日は、会ったばっかりで、無視してジェム達の寮に遊びにきちゃって、ごめんなさい。急に会ったから、びっくりしました。気持ちがグチャグチャになって、どうしたらいいか、分からなくなったのです。


新しいお父様は、コリエさんとけっこんしてないの?どうして今まで、会ってくれなかったの?

お仕事は何をしてますか?働いてる?

新しいお父様の事、何も知らなくて、私はもっと知りたいな、って思いました。


育ててくれた、今のお父様とお母様が大好きだから、離れたくないです。新しいお父様は、私を今の家から連れてっちゃおうとしてますか?

おねがいします。私を、今の家族から、連れていっちゃわないでほしいです。家族と別れたくない。


赤ちゃんを間違えて取り違えて育ててしまった、2つの家の話を、竜樹様から聞きました。育てた子供も可愛いし、血のつながった子も可愛い。2つの家がどうしたかというと、隣同士の家に引っ越して、自由に行き来できるようにしたそうです。

引っ越しまでしなくても良いけど、そんなふうに、仲良くできたらいいのにな、って思いました。


今度、パンセのお家で、私に会いにきてくれませんか?

お話しがしたいです。まだ上手に歩けないから、外で会うのは、大変なのです。

私はお金も持ってないし、竜樹様へ紹介もできないけど、それでも良いですか?

私の事、新しいお父様、好き?


かぎ針編みで編んだ、ぬいぐるみや、お花のブローチは作れるし、フリーマーケットでも売ったりしたけど、まだお店をもてるほどではないです。将来、お兄様のお手伝いをしながら、小さな編み物のお店をしたいな、って思ってます。今の家族も、良いね!って言ってくれてる。

編み物大好きなのです。

友達のフェリスィテは、可愛いもの好きの仲間なのだけど、フェリスィテが将来なりたい騎士の、見習い達の仲間からは、時々からかわれたりするって。でも、好きなものを、あきらめない、って言ってます。私も、あきらめない、が良いと思います。

新しいお父様は、編み物、応援してくれますか?


コリエさんとも、お手紙してみたいな、って思っています。

もし良かったら、お返事ください。

お手紙、また私も書きます。


本当は、少し、新しいお父様と知り合うの、怖いって気持ちもあります。

友達のジェム達が、街で再婚したお姉さんと連れごのお家の話を教えてくれて、うまくいく家もあれば、叩いたり、凄く働かせたりして、うまくいかない家もある、って。

新しいお父様は、そんな人じゃ、ないよね?


怖いけど、知りたい。

新しいお父様が、良い人だったら良いな、って、思ってます。

私にそっくりな、新しいお父様を、少し嬉しいな、って思ったから。


お返事、待ってます。


エフォールより』


出来上がった手紙を、満足そうに眺めて、ジェム達王子達も、ふす!と意気込んで。

「正直に言いたい事が、書けたら、スッキリするよね。」

竜樹が頭を撫でれば、エフォールは、気持ちよさそうに目を閉じて。

「ウン!これ、お父様達に、出してみる!」

とニッコリした。

「じゃあ、クラージュ印のメッセンジャーを頼もうか。タカラ、お願いできる?」

はい!と、タカラも事の成り行きを見守っていた者として、嬉しく使いを務めるのだった。




お昼寝組と、だるまさんが転んだを始めた遊び組とがいて、3おばあさまも、昼寝している小っちゃい子の背中をトントンしたり、だるまさんがこ、ろ、ん、だ!ピタッ 止まったり。

エフォールも、試しに予備を置いていた歩行車を使って、だるまさん転んだ仲間で、カタタンと楽しく遊んで。

「リベリュールおばあさま、動いたぁ!」

「むむむ、残念!」

鬼と手を繋いで。



「ピティエ、カフェインレスの玉露、良く作ったね。午前中もらったお茶、味も遜色なくて、美味しかったよ。」

竜樹が褒めると、本来のジェム達に持ってきたお茶を、淹れる準備に、魔道具ケトルでお湯沸かしをしているピティエは、ふふ、良かった!と笑った。

竜樹が、湯が沸いたらピーッと笛が鳴るケトルの話をしていて、それは良い、と作ってもらったのだ。午前中は、慌ててしまい、ラフィネに普通に沸かしてもらった。


「昨日、ウチに来た親戚が、分離が使える、っていうから、やってもらったんです。朝一番に鑑定してもらって、安全で美味しいお茶が、出来ました!」

王子殿下達には、眠れなくてゴロゴロの、辛い夜を過ごさせてしまったけれど。妊婦さんや眠れてない人なんかに、お茶を提供する前に分かって、良かったです。これからも、口に入るものには、気をつけて提供したいです。

ピティエは、しみじみ頷きつつ、コンコルドと協力して、また低いテーブルを出した。


オヤツは、干菓子じゃなくて、今度は黄身しぐれを用意。お皿も小さな、黄身しぐれの色を引き立てる、漆黒の陶器。


干菓子は、竜樹が、漆塗りの小さな入れ物に入れて、売ったら良いんじゃない?とピティエにアイデアを示唆したものである。試しに出来たものを持ってきていたので、皆に味わってもらえた。

干菓子は教会の子供達が売るお菓子としては、上品すぎるし、数も作れないだろうから、ちょっと良いお茶が飲めるピティエのお店で、食べてもらいつつ売ったら、買ってもらえそうかも?となったのだ。綺麗な入れ物とセットだから、ちょっとした贈り物にも使える。


もぞもぞ、と昼寝の子達も起きだす頃。

「おーい、皆ー。おやつとお茶の時間だよ〜。」

「「「は〜い!!!」」」


「わ、きれいなおかし。」

「黄身しぐれ、って言います。」


菓子切りは、黒文字もどき。鑑定のお仕事の彼は、本当に良い仕事をする。竜樹から貰った、タブレットに植物図鑑、キノコ図鑑、役にたつ植物、という電子書籍などを見ては、参考にして使えるものをどんどこ発見している。

森の中を、護衛の冒険者達とガシガシ歩いては、鑑定しまくるのが、楽しくて仕方ないそうだ。

クラージュ商会の葉っぱ部門も、ホクホクである。


オール先王達も、御相伴に預かり。

そして、まだハルサ王様とマルグリット王妃様もいるのだった。


「だって、お休みなんですもの。子供達と一緒にいたいわ。」

「おぼん休み、だよなぁ。」

お昼寝から覚めて、目をショボショボさせ、瞼を擦るニリヤを抱き、クッションに身体をもたせかけて、顔を見合わせ、頷き合う夫婦である。


つくづく、余分にお菓子を持ってきて良かったピティエである。ちなみに、沢山ものが入る、例の、4次元ポケット的な魔道具カバンを、コンコルドが持って道具とお菓子、お茶を入れてきたのだ。流石にそのまま手持ちでは、これだけの道具やお菓子を持って来られない。

竜樹にも用意されて持っているが、それはタカラが代わりに持って何でも出してくれるし、貰った花なども、しまっておいてくれる。

転移の魔法陣で輸入や輸出、運送をする際にも、役立ちそうなアイテムである。

そして、中に入ってる物リストを他人に見えるようにも表示する事ができるので、荷物の検査時に中身を取り出さなくても大丈夫。


「この、一本の木の楊枝で、切ったり刺したりして、上品にお菓子を食べるのが、お茶のやり方だよ。皆、おじょうひん、出来るかなぁ〜?」

「「「できるぅ〜!!」」」


すました顔して、テーブルの上の黄身しぐれを切っては、食べる子供達に、大人はニコッとしつつ、お茶と甘味のマリアージュを楽しんだ。

ぽろっとお皿に崩れて、こぼれたカケラを、短い指で摘んで食べる子供達は、ご愛嬌。手も洗ったから、良いでしょう。


「美味しいよ!ピティエ様!」

「おいし〜い!あんこ、入ってる!」

「おちゃも、合うね!」

「緑のお茶、きれ〜い。」

「ふふ、良かった!私のお店で出す、お菓子とお茶だよ。こんな感じ、って、分かってくれた?」

ピティエがニコニコ、自分もお茶を啜って、黄身しぐれの味を確かめて。


「うん!美味しいし、きれいだし、おしゃれな喫茶室なんだな、って伝わった!」

「大人になったら、絶対いくもん。」

ねー!と仲良し。


「これ、ねむくならないのがない、お茶なのね?」

「ねむくなるのがない、のがない?えーと、眠れなくならない!」

「カフェインレス、なんだって。」

王子達も、眠れなくなった事など全然気にせず。まあその時は竜樹がよいよいし、お話しをしてやり、それも楽しかったようなので、嫌な気持ちがしていないのだった。


ほうほう。

うまうまお菓子を食べてゆっくりしていた、しかしここで、ピン、と閃くバーニー君。

「それ、分離した後の、カフェインという物質は、もしかして、眠っちゃいけないお仕事なんかの時に、役立ちませんか?」

「う〜ん、バーニー君、きみがカフェインを使ったら、仕事しすぎて身体をボロボロにする未来しか予測できないけど、まあ確かにそういうお薬ですよ、カフェインは。」

普通にお茶なんかに入ってるから、紅茶を飲んで頑張ったり、そういう事してるんじゃない?


「ふむ。用法、容量に注意、という事ですね。何でもそうだけど、便利なものも万能ではなくて、使い方ですよねぇ。所でそのカフェインは、売る気ありますか?」

ピティエに商いを持ちかけるバーニー君。彼は、何でも実現の名に恥じず、未完成で関わったものを、形にせずにはいられないのだった。

だから使われてしまうのだよ、バーニー君。という哀れみの目のオール先王とハルサ王様に、含み笑いを受けつつ、こういう人、壊れないように、危ない所にツッコミすぎないように守りつつ、ちゃんと休ませて、そして気持ち良く働かせてあげないとな、と竜樹は思った。


その辺、チリ魔法院長が睨みをきかせているらしい。時に大人のやり取り、駆け引き、常識をぶっ壊してでも剛力で守る、のだそうだ。ミラン情報。

だから魔法院長をやって、めちゃくちゃでも、心の底では部下に慕われている、との事。ぶっちゃけ長なんてのは、気持ち良く働かせてくれて、大事な所の責任をとってくれれば良いのである。

チリ魔法院長は、その上で発明丸投げ案件があるが。


カフェインを鑑定で詳しく調べて、その上で薬局にて、薬師からの指導を受けた者にしか売らない、という確約をつけつつ、ピティエとの商談を済ませて、バーニー君は黄身しぐれを美味しくパクつく。今日はチリと一緒に、寮で美味しいご飯をいただき、ゆっくりしようという算段のようだ。王様達が一緒でもくつろげる、バーニー君とチリ魔法院長は、たぶん心が強い。


「賑やかなおぼんになるね。所で、その分離が出来る親戚、俺に紹介してもらう事、できる?お酒から、アルコールを分離したくて。」


ピティエは、一瞬で、硬い表情になり、ふるふる、と首を振った。

「その家の者が、竜樹様に紹介してもらえ、と下心満載で送ってよこした親戚なんです。」


ピティエの、正直で信頼できる性格を、竜樹はやっぱり、可愛いな、と思って微笑んだ。



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