13日 ジェム達の人生経験と三角巾
「ヘェ〜。エフォール様は、午前中、お手紙書いてたんだ。」
「うん、まだ、お手紙の、元の考えの表だけど。でも、おかし食べて、お茶をのんで、いっぱい考えて書いてたら、何だか、落ち着いてきたの。私は、やっぱり、今のお父様とお母様が、大好きなんだな、って思って。」
新聞売りのお仕事を終えて、帰ってきたジェム達と、和やかに話し合っているエフォール。瞼を涙で擦って赤いけれど、さっぱりとした表情だ。
ホッとした見守る大人達、3おばあさまにオール先王、チリとバーニー君、ミランとマルサと、そして竜樹である。
ピティエはお茶の片付けをやりながら、嬉しくも気がかりに、全身を耳にしてエフォール達の会話を気にしている。
ラフィネは慈しみの笑顔で子供達を見ているし、エクレ、シエルの元王女コンビは、何だか、大変なのね!と思いつつ、物語のような展開に、ドキワクしている。
「そうなんだ。でもあれだよ、別に、今の父ちゃんと母ちゃんが好きで、新しい父ちゃんも、好きになっても良い訳だろ。俺たちみたいに、死んだ父ちゃん達と、竜樹父さんと、どっちも好きで良いんだな、って感じで。」
「あ、そうだね。ーーーそうだよねぇ。」
ハッと、うむうむと、エフォールが納得する。
ロシェが、腕を組んでムムム。
「新しい父ちゃんが、ワルじゃないと良いなあ。街では、再婚したおねえさんと、連れごの子供が、新しい、ろくでなしの父ちゃんに殴られたり、働かされたりって、あるんだよ。周りが殴るなって言っても、しつけだとか、家の事に口出すな、とか、本当ろくでなしなんだぜ。」
アミューズも、見えない目をとんがらせて。
「やさしいけど、働かないヤツとかも、いるよねー。」
「いるいる。」
「事情があっておねえさんに働いてもらって、家の事やるダンナもいるけど、そういう真面目なやつは、贅沢しないし、ちゃんとおねえさんと子供を大事にするんだよな。」
「けっこんもするしね!」
「そういえば、コリエさんと、新しいお父様、きっと結婚してないーーー。だって、花街にいる女の人って、結婚してないよね?」
「人によるんじゃん。」
「花街関連で、かせいでる夫婦いるよ。」
「でも、エフォール様の新しい父ちゃんは、貴族なんじゃないの?エフォール様の家に来れるんだからさ。」
うーん、と首を傾げる子供達である。
仕舞いには、ジェムがしたり顔で。
「仕事何やってるか、とか、どこに住んでるか、とか、エフォール様が今の家から出ないで、時々会うだけでも良いか、とか、かくにんした方がいいぜ!」
いつも大人しいアガットまでも。
「会う時は、エフォール様の家で会った方がいいよ。そこなら味方がいるから。どっか連れてかれたら、ヤバいじゃんね。」
プランも、人差し指を立てて。
「お金貸してくれ、って言われたら、持ってない、って言った方がいいよ。」
「うん、分かった!良く聞いてみるね!」
神妙に頷く、エフォールなのである。
3王子達も、そんな事が!と目を見張り、真剣に、ジェム達やエフォールを交互に見て、ウンウンしている。
気をつけるに越した事ない、と辛めのアドバイスをするジェム達に、大人はタハっとするのだった。
うん、まあ、新しいお父さんがどんな人かはまだ分からないから、的外れでもない。コリエさんの元婚約者だったのなら、そして彼女が別れる前に身を任せようと思う人物なら、それほど悪い人でもないのでは、と推測できるがーーー色恋は目にフィルターをかけるし、人は変わるし、真実は、確かめてみるまで、分からないのだから。
「まあまあ、手紙は午後に続きを書くとして、お昼にしようか?今日は、オール先王様と、王太后様、先王妃様達が一緒だよ。オール先王様方、この寮では、配膳は、セルフサービスとなっております。ご自分で並んで、お料理を受け取るんですよ。いつもはご用意されて、でしょうが、お楽しみに、やってみられませんか?」
「うんうん、やってみたいな!」
「やってみましょう!」
「その土地の皿を食べよ、と言いますもの。」
「私は昔やってたわよ!懐かしいわね〜!」
なかなか良い反応のオール先王様達である。
子供達が配る係になって。
「今日から、配る人は、お鍋やお皿に髪の毛が落ちないように、この三角の布で頭を隠してね。初めてだから、竜樹父さんが結んであげるよ。」
はいはーい、並んで。
竜樹が三角巾を子供達に結んでやっていると、王様と王妃様に報告をしに行っていたタカラが帰ってきて。
「ハルサ王様と、マルグリット王妃様が、お昼を一緒に、とこちらに向かっております。」
と先触れした。
その後ろに、ひょこりと顔を出したのは、ゼゼル料理長。念の為に余分に作っていた食事を足しに、先ずはやってきた。子供の分を減らす事は、絶対にしないと決めて、余分はいつも、時止めの倉庫に保存して、後日賄いとして消費している。
今日の献立は、ソフト麺を使った、具沢山の五目ラーメンである。冷えた麺を入れると、熱々ではなくなるということで、麺を温めて、時止めの番重に入れてある。あの独特の麺の美味しさを、主に竜樹が注文をつけ、ゼゼル料理長が味を追求したもの。
それから、デザートに、神たまごとミルクを使ったプリン。箸休めのきゅうりの浅漬けに麦茶。
テレビ電話もつけて、きゃいわい、どこの教会の子供達も、大騒ぎで。
「えー、しんぶん寮の子たち、頭にぬの、かわいいねー!」
針が上手で、王都の教会で、花街の踊り子さん達の小物を作る手伝いをしている女の子、フィルが目ざとく褒めてくる。
てへへ、と笑うジェム達。
「皆の教会にも、ちょっとずつ三角巾配るね〜。お菓子を売ったりする出店の時にしても、良いかもねぇ。」
竜樹が言えば、キャキャッと主に女子が喜んだ。
「可愛い布があれば、私たち自分で作ります〜。」
「皆の所のやつ、作ってあげるよ〜!」
「うん、それも良いね。無理はしないで、ゆっくり作ってね。布と針と糸を、支給しよう。見本の三角巾も。必要な数、後でまとめさせてね。」
竜樹がタカラに目配せすれば、ニコリとタカラは了解した。
「今日は、王様と王妃様がみえます。それから、オール先王様、3人の先王妃様達、3人の王子達も来てますよ。あと、貴族のお友達、ピティエとエフォールが来てます。皆、よろしくね〜!」
竜樹が紹介をすると、オール先王と3おばあさまは、笑顔でチラリと手を振った。子供達は、えーっ!と驚いて、えらいひと、いっぱい!のお口あんぐりになった。
3王子達は、笑顔で両手をブンブンである。
エフォールとピティエは、照れてチョコ、と手を振る。
そこにハルサ王様とマルグリット王妃様も来たので、竜樹は2人を皆に紹介した。
ちょい長くなりそうなので、まずは前半投稿します。
明日も寮でのお話し合い、兼お昼ご飯です。




