13日 寮に集まるいつもの皆
おぼんの迎えも終わり、次の日13日。
魂達のふわふわ漂う空間に慣れて、寮の子供達は、いつもと同じように、朝ご飯を食べ、オーブ達めんどりおんどりの世話をし、新聞売りの担当は街へ、押し花担当の小っちゃい子組も仕事を始め。
竜樹はその中で、なんでも実現バーニー君に、ピャーッ!と怒られていた。チリと一緒に。
バーニー君が、たたた竜樹様ぁ!?と大声を出した時、竜樹が抱いていた赤ちゃんツバメが、ビクン!ビエエ!と泣いたので。バーニー君は囁き気味になりつつも。
「転移の魔法陣!直ぐにでも、ハルサ王様、マルグリット王妃様に相談すべきです!公の援助がなくば、この大事業は、完成させられません!極秘なんて無理!だから、上層部で、情報をいい具合に流して、コントロールすべき!それには、この国の最高権力者が必須!自分の胸だけにしまって、なんて、後援もなしに誰かに嗅ぎつけられたら、地面に落ちた飴にたかる、赤アリンコみたいに、有象無象がやってきます!隠されるのが、一番人の興味をそそるんです!」
実務に伴うあれこれを、鮮やかな手腕でやり遂げるバーニー君が、そう言うなら。うんうん、と竜樹とチリ魔法院長は、深く頷くのだ。
「それに、そういうプロジェクトがあると、民達に知らせ、関係してくる者達にも、心構えや考えておく事をさせる、っていうのも、重要だと思います。こちらの懸念を、広めて、皆で考えて行きましょうよ。個別に相談に乗れる機関も、発足しましょう。竜樹様は、どうせ、小さな商いや仕事を、頼みにしている者達にも、変化を受け入れてもらいつつ潰れないように、させたいのでしょ。あと、エルフに協力を頼むなら、国単位でのやり取りがあった方が上手くいきます。エルフのいる、悪名高いジュヴールの国だって、足元を見てくるかもしれませんが、個人が頼むより国として頼んだ方が、可能性は高まるでしょう。」
まあ、どんだけ吹っかけられるかは、分かりませんが。
秘密でやり取りしといて、横槍を入れられ、魔法陣の秘密も奪おうと寄ってたかられるよりは、マシかと思います。他国にも、便利な反面、使い方に注意が必要と、神からの懸念もあると、トップに分かってもらう必要があります。
国と国の間での検問も、必要ですし。
「その上で、チリ魔法院長!貴方が、魔法陣を、絶対に制限なしでは動かないようにさせる組み方を開発する必要があります!制限が解除されたら動かない、そんな、ルート神様の名を入れた描き方で。」
「うん、やっぱり、君に相談して良かった、バーニー君ありがとう!」
「うんうん、い、いつもありがとう、バーニー君!」
赤べこになりつつある竜樹とチリに、ふす!と鼻息を吹くバーニー君である。
「褒めるなら、美味しいご飯をおごってください!燃料がなくちゃ、動けません!」
ははー、バーニー様、おごらせていただきます!とひれ伏す2人なのである。
ミランとタカラは、くすくす、と笑って。
「王様と王妃様に、報告して参りますね。」
タカラが、笑顔でそそそ、と下がる。
そこに、元気な声が響いて。
「ししょう!あそぼ!」
「竜樹〜!おばあさま達も一緒だよ!」
「何して遊ぶ〜?」
3王子、ニリヤ、ネクター、オランネージュがやってきた。おぼんの間は、午前中にある、お勉強が免除なのだ。
そして、しずしずと。
高貴な3おばあさま、スフェール王太后様、リベリュール先王妃様、ダフネ先王妃様が、現れた!
「遊びに来たわよ、竜樹様!」
「何やら面白そうなお話ね?転移の魔法陣とか。」
「良いわね良いわね、私、行ってみたかった所があるのよねぇ!」
コホン、と咳払いがして。
「王であるハルサより、先に知ってしまったのは申し訳ないが、大変興味ある事を話しているね、竜樹殿。」
新しいもの好きのオール先王も、ニン、と笑顔で登場である。
シパシパ、と小さな目を、王族、眩しっ!とさせる竜樹は、うん、うん、所詮自分の小さい考えでは、やりきれなかった、信じて託す、それ大事。と礼をした。
「なるほど。お花を、綺麗に新聞紙に置いて、重しを乗せるのね?」
スフェール王太后様が、やってみるわ!と白い可憐な、お花を一輪取って。
「うん!おうたいごうさま、上手!」
サンの声に、あらあら、そうかしら。満更でもない声だ。ラフィネ母さんが、失礼がないかしら、と若干不安になりつつも、見守っている。エクレとシエルは、流石に元王女、控えてはいるが、普通の態度だ。
サン、セリュー、ロンの小さい子組が、得意顔で教えた押し花を、3おばあさまも、3王子も手伝う。
「おこづかいくれるんだよ。おしごとなの。」
ニリヤが、精一杯、重々しい顔で、ねー、とサンに同意を促す。
「ウン。おしごと。」
サンも、コクコクして、大分慣れた、美しく並べるお花達に、古新聞を被せた。
あらあら、私たちも、お小遣いもらえるかしら?と高貴なおばあさま達が笑うので、ネタとしてお小遣い渡そう、と竜樹は決めた。銅貨を手にして、ひと笑いして欲しい。
「そういえば、古新聞の扱いはどうなってるんだっけ。ただただ家庭で増えていたら、やなんだけど。」
「商店などで包装紙として役立っていますよ。冒険者も、野外での焚き付け用に、小さく切った古新聞を買いますし。回収もしています。竜樹様が、新聞事業を始める時、元の世界では、回収して再利用していた、と仰ったので、工夫しています。インクを分離で剥がして、また紙に梳きなおして、もやっていますね。」
ミランが言ってくれて、竜樹はホッとした。
「ん?分離?」
「はい。分離。」
「それって、思ってる成分を、取り分けられる、魔法だったりする?」
「だったりしますよ。薬師が良く使っています。薬から、不都合な成分を抜いたり、材料から使いたい成分を分離したり。」
そ、そ。
「そ?」
ミランが首を傾げる。
「それだぁああ!ノンアルコール飲料、作れるじゃん!」
竜樹の叫びに、オール先王がびっくりして、のんあるこーる? 目をピカリン、とさせた。
「竜樹様、皆、こんにちは。誰か、知らない方も、いるかな?」
ひょこ、と交流室に現れたのは、ピティエである。
「おぼんだけど、玉露のかふぇいんの分離が出来たから、嬉しくて、きちゃいました!」
今日もオシャレに、銀の玉のついた朱色の髪紐で後ろ髪を纏め、紺のセットアップに、胸には銀の、小さな花のブローチ。
「え、分離!?」
竜樹が、何とタイムリーな。ガタリ、と椅子から立ち上がった時。
カラ、カララ。
あ、あの車輪の音は、エフォールだ。
交流室の入り口を、皆が見て。
「た、竜樹様ーーー皆、私、私。」
竜樹を見て、途端にくしゃ、と顔を泣き顔にさせたエフォールが、いつもの従者に車椅子を押されつつ、やってきた。
「私、お父様が、増えちゃった!!」
ひん、とコロリ、涙を溢し。
手を広げて縋り付くエフォールを、竜樹は両手広げて迎え、胸に、ギュッとしてやった。
ひん、ひん、と、今まで皆の前で泣いた事などない、エフォールが鼻をすする。
おぼんの2日目も、どうやら、賑やかに騒動ありそうな気配である。




