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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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12日夕刻、アルディ王子



目尻に、スッと、朱色の筆を滑らせる。


「お支度、出来ました、アルディ殿下。」


衣装は、白、丈の長いシャツブラウスに、白のゆったりした、バルーンパンツ。足首が締まっている。

踊れば、布がはためいて、それも風情となるだろう。

うっすら、胸に留めた鬼灯が、光を放っている。


「ありがとう。他の子達のも、手助けしてあげてくれる?」


はい!と笑顔で、栗鼠獣人の侍女は、化粧筆をトレイに置くと、すぐ近くにいる踊り手の子に取っついた。ふん捕まえたとも言う。


ここは急拵えの野天の控え室。

着替えは3人くらいずつ順番に、控え室の中、パテーションで区切られて行い、お化粧はパテーションから出て男子女子合同に。

お支度手伝い隊の侍従侍女達が、アルディ王子の周りで、ガヤガヤと着替えをさせ、お化粧を施している。


ワイルドウルフ国の、おぼんお迎えの踊りは、街に造られた広場に、舞台を作って行われる。ブレイブ王やラーヴ王妃も、広場まで出てきて、魂をお迎えする。


アルディ王子は、すう、ふう、と深呼吸をする。

お日様が遠くの山間に、じわじわと沈んでゆく。魂と、魂を迎えにやってくる人々の為に焚かれた篝火の光が、空を染めつつある藍色に、一層映えて。

まだ誰も居ない舞台は、魔道具のライトで、明るく照らされている。


まもなく、おぼんの魂の迎えが始まる。支度も、皆、賑やかにやっと終わって。さあ。

さあ。


兄のファング王太子が、そわそわしている踊り手の子供達に、声かけて。


「皆!私たちは、ここまで、一緒にがんばってきた!」


ピシリ!と皆、声に整い、集う。


「やっと本番だ!帰ってくる魂たちにも、貴族や民たちにも、今こそ成果を見せる時!お迎えの気持ちをもって、精一杯に踊ろう!」


「「「はい!!!」」」


「舞台に出てから、踊るまで、少し時間がかかるが、ゆっくりと魂をお迎えしてから、程よい所で、始めよう!」

「「「はーい!!」」」


アルディ王子も、ハイッといいお返事をして。最後尾に付いて、舞台へと向かった。


ざわざわしていた、広場に集まった貴族もごったにした民達は、舞台に子供達が出てくると、わあっ!と歓声。

トントントコトン、トントトン♪

太鼓が、流れる空気に紛れて、ずっと小さくリズムを刻んでいる。


胸に、コロンと揺れる、光る鬼灯を灯して。ブレイブ王が現れて。篝火に、キリッとしたお顔に光と影。

舞台の子供達も、ブレイブ王も、じっとしてその時を待つ。


『リンゴーン・リンゴーン・リンゴーン♪』


冥界の鐘の音。

太鼓がピタッ と、止まる。


『現世に生きる者達よ、昔馴染みの魂を迎える準備は出来たか。』


ブレイブ王は、胸に手を当てて、目線は空に、跪く。

そして貴族や民達も。


『私はモール。死を司る神。ありとあらゆる魂が、この世の未練を清める為に、幾日かお邪魔する。私の可愛い魂達に、いつもの調子で暮らしながら、きっと良く迎えて、付き合ってやってくれ。私からの願いである。頼んだぞ。では。』



『今こそ開け、冥界の門。』


開かれた空の扉、冥界の門。

そこから零れ落ちる魂達。

ブレイブ王も、控えたラーヴ王妃も、舞台の上のファング王太子も、そしてアルディ王子も貴族も民達も。

跪き、はた、はた、瞬きしながら、魂達がやってくるのを見つめた。

篝火に向かって、魂達は空からやって来る。

ざあっとした魂の光の渦が、ブレイブ王を、集まった人達を取り囲む。

半刻ほど、魂達の訪れに、次第に太鼓が鳴り始め、トントントコトン、鼓動に合わせ、弾みだす。

ポロリコロン、と最後の魂が落ちて、冥界の門が閉じた所で。


スッ、とブレイブ王が立ち上がる。

倣って、他の皆も。


「良く参られた、冥界からこの世へ。私たちワイルドウルフの者は、昔馴染みの魂達も、生きていたあらゆる魂達も、おぼんのおとないを歓迎する!まずはおぼんの、お迎えの気持ちを、純なる子供達が舞いましょう。ゆったりとご覧あれ。」


手を指し伸ばし、魂達を抱き受けて、ブレイブ王が宣言する。


タンタタン!


太鼓が合図。

ピーッと笛。

リュートも鳴り出し、たん、たん、たん、ジャジャン!


子供達は踊り出した。

熊耳少年ルトラン達、踊りが上手い組が、舞台の中央で飛んだり跳ねたり。ファング王太子も、クルクルクルっと回り、見ている皆も、おお〜っと、自然に吐息と共に声を落とす。

魂達は光りつつ、ゆら、ゆら、踊りを見ているかのように、音に合わせて揺れている。

ブレイブ王も、ラーヴ王妃も、魂を寄り付かせつつ、口角を上げて、踊りを見つめている。


踊りが上手い組の周りで、アルディ王子含む、踊りが上手く出来なかった組も、自分達に合わせた、そしてピピッとキレの良い踊りで、中央メインの踊り組を、ちゃんと引き立てて。

シャツの白が、篝火と魔道具の照明を受けて、橙色に、はためく。


(いいかも、順調!このまま踊り切れば!)


アルディ王子が、そんな事を思い、踊りは終盤に。

車椅子のコリーヌ嬢も、くる、くる、と車椅子を回しつつ、アルディ王子と共に舞台の端っこで、ちゃんと魅せる踊りを見せている。


「皆、踊り上手ね!」

「真ん中の子達、すごく踊り上手いな!」

「端っこの、ちょっと太ってる子も、良く踊ってるよ。良くあんなに動けるなぁ。」

「ウチの子、ウチの子が!すごく音に合わせて踊ってる!上手い上手い!!上手く出来ないからって、家でも練習してたんだよ!出来るじゃないか!」

「皆、可愛いわね!」


あと、一節!


ジャン♪


決めた!


ガコン! カララララ



あっ




最後の最後で、コリーヌ嬢の車椅子。

ネジが飛んで、車輪が外れた!

ガタン!と椅子の面が片方下がって、コリーヌ嬢は舞台に放り出され。


しゅるる、と滑って。


舞台から、落ちる!


皆から見えやすいように、舞台は高く設られていて。

同じく端っこで踊っていた、アルディ王子に、コリーヌ嬢は助けて、とばかりに手を伸ばした。


(待って、落ちちゃう!!)

アルディ王子は、咄嗟に飛び込んで、コリーヌ嬢の手を掴んだ!


ああっ と観客達も、ブレイブ王も、ラーヴ王妃も、悲鳴もあげられないほどのタイミングで。


2人、手を繋いだまま。

コロン、コロリと舞台から落ちた。

急に涼しい日も増えてきました

途端に毎日眠いです

みなさまも体調に気をつけて

まだまだおぼんは続きますので、時折休みを入れつつも、頑張ります

どうぞよろしくお願いします

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