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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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陽炎の月9日から12日 アルディ王子7

ちゃら、ちゃちゃらちゃらんらん♪


おまえは できない

そんなのぶっ飛ばそうぜ

じぶんの ペースで

生きてこ 速くても遅くても


人生は らせんかいだん?

上ればまだまだ 頭の上 人がいる

下をみても人がいる

押されて とちゅうで休憩

それでも のぼっていく?

いやいや おりてみる?


それとも おにごっこ?

四方八方 わっと走り出す

どこに行くかは わかんない

おにに つかまるな 笑ってけ

どこにでも いくよ!


ちゃらららっちゃ、ダダん♪


アルディ王子は、歌いながら、一生懸命、踊った。

手を伸ばし、掴んで、止まっては差し出し、足をダダンと踏んでステップ。

群舞の要素もある踊りなので、人がいれば、順々に、胸に手を当て片手は伸ばして、ピッと開いて伸ばした片足に背を折っていく、波の流れが見せられたのだが。


タンタタタンタン♪ タ ダダン♪


ルトラン達の踊りのような、高く飛んだり、何回も回転したりしない。でも、静と動、ピッと決める所は決めて、そうして歌と合わせて、足のステップも軽快に、かつ時に力強く。

何だか、見ている者達が、ふん、ふん、と身体を動かしたくなっちゃうような、荒いけれど、魅力的な。


タ、タタン!



はあ、はあ、ふ。


踊り終わって。

アルディ王子は、ふ、と身体の力を抜いて、決めたポーズから、ゆっくりと直った。


誰もが、口をポカンと開けて。


パチパチ、パチパチパチン!

ファング王太子だけが、楽しい!って顔で、拍手。


「アルディは、踊るの上手だね!」

「は、はあ、は。そ、そうかな?うん、竜樹様にも、上手だね、いっぱい色々踊ってみよ!って言われて、あいどる?の、やつとか、雨の日になると、皆で良く踊ったんだよ。」

ふは、ニコッ、とするアルディ王子に、ファング王太子が。


「あの、タブレットで夕べ見せてくれた、アルディとパシフィストの王子殿下や仲の良い友達たちが、踊りの動画?にしたやつ、あれをここで見よう!」


え、まだ何か見れるの?

と見ていた踊り手だけでなく、保護者も、そして、目をかっぴらいている、舞の監督も、固唾を飲んで。


魔法療法師のルルーが、こちらにスクリーン張りましょうか、チリ魔法院長に、やり方教わってきたんですよ、といい笑顔で言ったので、皆で大画面で。


「兄様、これ皆に見せようと思って、私が持ってきたタブレットを、貸してって言ったのですか?」

「ふふふ、もちろん!皆に刺激になるかと思って!」

アルディ王子は、体育館まで、貸したタブレットを持ってきているとは、思わなかった。


にじ、にじ、と保護者や舞の監督も集まり、床に座り込んで舞手達とスクリーンを見上げて。ルルー魔法療法師が、「では動画が始まりますよ〜。」と前置きをして、タブレットと無線で繋がったスクリーンに。


ミラン渾身のカメラワーク!アップで笑顔、笑顔、笑顔、切り替わる3王子、貴族組、寮の子供達、アルディ王子が、ザン!と立って、ドン、ドン、ドンドン・ドンドンと音に合わせて歩く。

ちゃちゃ〜ちゃぱらっぱっぱ♪

動いて動いて、ペアになって、王宮の庭で、波の踊りもちゃんと合わせて。小ちゃい子組が、キャハハ!と腕を振り決めて、ピシッと真面目から笑顔。

あんなに踊る竜樹にドン引きしていたのに、フードゥルの元王女達も満面、スカートがくるりと一回転、ふわり浮いて、すっと腰が落ちる。

ラフィネも微笑み、手をちょちょ、チョンと動かして、さあっ、とマルサへ促し、マルサは剣を腰にしたまま、軽快にピピっと足踏みして竜樹へ、竜樹は見事に、ダダンタタタン、と踏み込んで手を上に、スローモーションで跳ねる皆、エフォールは車椅子から、ピョコ!とちょっとだけ跳ねて、を順に映していきーーー。


「こういう、すごく跳ねたり回ったりしなくてもできる踊り、取り入れてみたらどうかなあ。それに、ルトラン達はやっぱり凄いから、真ん中で飛んでもらって、周りで踊って引き立てても良いよね?」


動画が終わりアルディ王子が発言すると、ファング王太子が、うんうんと頷いて。

「私もそれが良いと思う!それに、動画、アルディの踊りも、音楽にちゃんと合わせて踊ってたよね。今日あたり、音楽とも合わせたかったし、音楽に合わせての変更もあるだろうから、合わせてみたいよね。」


「や、やりたいです!アルディ王子殿下の踊り、取り入れてみたいです!」

私と同じく車椅子の少年も、楽しそうに踊っていた!と、コリーヌ嬢は、興奮しきりで発言する。

俺たちも、私たちも!踊り下手組は、奮起して、わあっ!と声をあげる。

ルトラン達も、自分達は真ん中で、今まで通りの踊りで良くて、フォーメーション変えるくらいなら•••と了承した。

「ルトラン達は余裕がありそうだから、変更する踊りの、上手くいかない所なんかを、一緒に考えて、皆に教えてやってくれないか?」

ファング王太子がニコニコ言えば、ルトラン達とて否やはない。

「喜んで、ファング王太子殿下。」


それからそれから。

今日これから、音楽担当を呼んで待って、となると、夕方遅くなる。うーん、とファング王太子は考えて。


「私たちには、時間がない。ここで、本番まで、合宿なんてどうだろう。」


体育館には、合宿ができる設備がある。風呂や布団など。

子供達は、一旦家に帰ってもらい、着替え持ちや、ここに保護者がいない子は、心配かけないよう、来ている保護者達がついでについて説明に回り、明日仕事がある子の、仕事先への休み連絡と補填も。


「予算はまだあるよね?」

ファング王太子が、侍従達に。

もちろん、今までが使わなすぎるくらいです、と聞いて。うむ、うむ。

食事も急遽、用意してもらって。


「それから、マネージュ。」


「はい、何でしょう、ファング王太子殿下。」

スッ、と立ち姿も麗しい、舞の監督、猫系獣人のマネージュ。


「本番まで時間がないが、コリーヌ嬢達の踊りの変更に、力を貸して欲しい。私たち自身でも話し合いながら組み立てて、アレンジしていくけれど、やっぱり本職の貴方が見てくれたら、より良くなると思うから。」

ニコッ、とするファング王太子に。


マネージュは、待っていた。

これは、子供達の踊り。大人が、やりなさいと指示するだけではダメで、自分たちで作り上げて、と最初から伝えてあるのだ。

子供達が、与えられた不自然な踊りだけでなく、自分で考え、行動し、その上で助けを求めてくるのを、待っていた。

そうならなければ、最悪、押しが強くて、上手に踊れる組だけで舞うのも、良いだろうと。


マネージュは、ファング王太子の願いと対応を、子供達のやる気と、アルディ王子の飛び入りという刺激を、とても嬉しく思って。


「喜んで!皆さんの力になりましょう、ファング王太子殿下!」

胸に手を当て、丁寧に膝と腰を折った。


それからは、わちゃわちゃと合宿して、振り付けを皆で考え、覚えて、何故かアルディ王子も一緒に泊まり込んで。


「わ、私、踊らないのに、いいのかな?」

「え!?一緒に踊りましょうよ!アルディ殿下!ねえ皆、一緒が良いよね!」

コリーヌ嬢が一緒を推す。

「「「うんうん、一緒が良いよお!」」」

と主に下手だった組が賛成して。


「じゃ、じゃあ、端っこでなら。」

とアルディ王子も出る事になった。


合宿は、体育館へ布団を敷いてのお泊まりに皆、興奮していたが、踊り疲れも手伝って、早々にダウンした。

その中で、ルトランは、中々眠れなかった。


あんなに、無理だって言ったのに、コリーヌ嬢を、舞から外す事ができなかった。


ひそひそ、と、パテーションで区切られた、女子達の部屋から、声が聞こえる。

(王太子殿下の手を煩わせてまで、車椅子で踊る、下手な者達が踊るなんてーーー。)

(そうよね。でも、アルディ王子殿下もいらっしゃるし、もう、外す事はできないわね。ちゃんと踊れるのかしら。)

納得できてない者達の、愚痴だ。


眠っているだろうコリーヌ嬢に、聞こえているんじゃないか、とルトランは、ヒヤヒヤした気持ちになった。

ほら、やっぱり、こんな風に悪口言われてしまう。


ルトランは、コリーヌ嬢を守りたかったのだ。だから、踊りをやめて欲しかった。でも、アルディ王子殿下が、誰にも悪くないように、踊る方向に話をもっていったとき。


(あんなにも、嬉しそうだったーーー。)


自分では、あんな顔を、花が咲いたような顔を、させる事ができない。


モヤモヤを飲み込んで、ガバッと布団を頭から被って。熊耳をはた、と折ったまま、寝よう、寝よう、とルトランは努力するのだった。


そしてファング王太子は、アルディ王子と隣同士に眠れて、上機嫌でスヤスヤしていた。

なんて私の弟は、頼りになるのだろう!と幸せに。




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