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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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242/692

陽炎の月9日から12日 午前、アルディ王子

本日、本番である。


アルディ王子は、生国ワイルドウルフに、おぼんの里帰りをしていた。

余裕をもって、おぼんの3日前には。


その短い3日間に、練習を必死でして。

おぼんに、ご先祖様達や、動物や植物、全ての命あったものの魂をお迎えする為の、子供達の舞。

その端っこに、色々あって参加する事になっていた。


失敗しないか、不安もあるけど。

ドキドキ、ワクワクする。


これから、舞をする貴族や平民の子供達と、早めに集まって、お昼ご飯を一緒に食べる予定だ。そして昼寝もした後、舞のお化粧や、衣装に着替えて準備をする。

初めての試みだから、何があるか分からないので、早め早めの予定が組んである。


ふー、と息を吐いて、喘息対策の癒しの魔道具、首からぶら下げて、これは本番にも持っていく。ぎゅ、と握れば少しホッとする。黒い狼お耳がピコピコ前後に、尻尾が、ゆら、ゆら〜、と揺れている。

そうして、落ち着く為に他の事を考える。


ワイルドウルフに帰り着いた時の、迎えてくれた家族3人を思い出す。




3日前。飛びトカゲから、アルディ王子が、ピョンと飛び降りた時。

父王ブレイブと母王妃ラーヴ、兄王太子ファングが。一番王宮の入り口に近い部屋で、3人共がソファに座ったり立ったり、ぐるぐる室内を歩いたりして、ソワソワ待っていた。


アルディ王子は、魔法療法師ルルーと護衛のクルーを連れて、案内のリス獣人侍従の後ろを、たんたん、たかた♪ と廊下を歩いてゆく。お土産を持ってくれている、他の侍従も続く。


心逸る、会ったら何を言おう?

4人が4人とも。


コンコン。

ハッ と室内の3人が立って、ドアの前に集合する。

「入りなさい。」

ブレイブ王が入室の許可を出す。

ガチャリ。

「失礼致します。アルディ王子殿下にございます。」

案内侍従が、ドアを開け、入らずそっと隣に控えて。


一歩。

タタ。タン。

「お父様、お母様、兄様、アルディです!ただ今帰りました!」

まだ細いけれども、国を出る前より全体的に少し大きくなり、そして、健康そうに頬をふくふくと、赤らめたニッコリ、耳はピン!と、尻尾ブンブン。


「アルディ!良く帰った!」

「アルディ、おかえりなさい!」

「おかえり、アルディ!」


ふー、すー。

待ち構えていた3人、顔が笑う、深呼吸して、はやはやとアルディ王子の元へ歩き、囲うように、部屋の中へ中へ。

ブレイブ王は、背中にそっと手を当てて。

「元気そうだ、少し背が伸びたかな?」

と、国を出る前の、弱かったアルディと比べて、嬉しく。


ラーヴ王妃は、しゃがんでアルディ王子と目線を合わせ、頬に手を、当てても、良いのかな、と不安に、一旦止まって惑い。

アルディ王子がその手を取って、頬をすりすり、すると、ゆらゆらしていた涙の視界が、完全に海になった。

「アルディ。びょ、病気のこと、分からなくて、酷いことして、ご、ごめんなさいね。鍛えれば治るかも、だなんて。全然見当違いなのに、辛い事ばかりさせて、ダメな、酷いお母様だったわね。」

ぽろぽろ、と海が溢れる。


「ううん。誰も分からなかったのだもの。お母様、私、もう元気だよ!病気と上手く付き合うの。だから大丈夫なんだよ!」

朗らかに。

ラーヴ王妃を見るたびに、咳の発作を起こしていた、そんなにまで嫌な緊張させる象徴だった母が、触れても良いものかと、頬をそうっと、そうっと撫でるのに、アルディ王子はジッと目を合わせて、そして抱きついた。

良いのかな。大丈夫かな。と恐れながらも、胸に腕に感じる、アルディ王子の温かい体温、子供の吐息に、ラーヴ王妃は、震えながらゆっくり、ゆっくり力を入れ、確かめながら抱きしめた。

深いため息、嗚咽、溢れた海は、部屋を満たしそうな勢いで。


「アルディ、ブラインドサッカーの試合、すごく面白かったよ!皆で観たよ!あんなにアルディが凄い選手だなんて、誇らしいよ!」

ファング王太子は、家族の共通した心配事だったアルディ王子が、それを喜びに変えて里帰りした事に、家族全員の喜びに、そして自分を慕う弟を、可愛く、何と言っていいのかわからない興奮をもって、アルディの頭を丹念に何度も撫でた。






短いですがお許しあれ

次回もアルディ王子話です

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