陽炎の月12日 午前、3王子とお祖母様たち
「スフェールおばあさま、あのピカピカほおずきは、ぼくたちも、むすぶのつくったんだよ!」
「あらまあ、そうなの?良く作ったわねぇ。綺麗ね!」
「本当だ。風情があるな。」
ニリヤが、スフェール王太后、オール先王と一緒に、2階の窓辺からつま先立ちで外を覗いた。そのオレンジ色の鬼灯は、ピカリと光っているが、まだ午前中の明るい陽の中で、その美しさは夕方から、本当に分かるだろう。
「私たちも、手伝ったよ!」
「私も!」
オランネージュとネクターも、わあわあと2人のお祖父様とお祖母様にくっついて、ふらふら、あちこちに吊るされて揺れる鬼灯を指差した。
「ええ、ええ、本当に素敵!ねえ、リベリュール様、ダフネ様、こちらにいらして見てみませんか?」
スフェール王太后、つまりハルサ王様の母だが、この部屋にはバラン王兄の母で貴族出身の、リベリュールと、マルサ王弟の母で平民出身、ダフネもいる。
オール先王にとっては、自分の妻3人が揃うという、なかなかに圧を感じる空間だろうと思うが、長年のお勤めを感じさせる気楽さで、「うんうん、2人とも、是非見てご覧。」と勧めた。
リベリュールは、貴族出身と周りの貴族達からも厳しく要望多く見られてきたので、一筋縄ではいかぬ、ピリリとスパイシーなお方だ、と王子達は知らないので、「リベリュールお祖母様〜!」「ダフネお祖母様〜!」と、2人の祖母のスカートにまとわりついた。
「オランネージュ、ネクター、ニリヤ。ご先祖様をお迎えする支度のお手伝い、偉かったですよ。これからも、仲良く協力して、お励みなさいね。」
フッ。
背の高いリベリュールは、血の繋がらない孫と話す時も、ピンと背筋を張っているから。見下ろして、ニヒルに笑うのである。
しかし、ちょっとシワがあるけれど、その細い優美な指は。オランネージュの髪をサラサラ、と撫で、ネクターのほっぺをすりすりし、ニリヤの髪をくるんと指にからめた後、鼻の頭をツンツン、とした。
細く厳しい目の力と反して、ちょっと頬も赤らみ、口の端が上がって、嬉しそう。
孫、好き。
「はーい、リベリュールお祖母様!」
「仲良く、協力!」
「ぼくたち、なかよし!」
「良いわねぇ、みんな、なかよし!ふふふ。」
ダフネは、平民出身だけあって、気安い優しさのお祖母様だ。クリッとした瞳の、前職踊り子で、貴族達には随分蔑まれたが、あまり気にせず、楽しく息子のマルサを育てた。背は低いが、スタイルはスラッと抜群で、今でも年齢に合った日課の練習を続けて、踊りが得意である。白髪まじりの茶色の髪は、キュキュ、と後ろでお団子にまとめられ、いかにも溌剌として。
「こんやも、おじいさまとおばあさま、いっしょごはんだよね!そしたら、そのあと、ぼくたちと遊ぼうよ!」
「竜樹が、おぼんは、親戚の家に集まって、みんなでご飯食べて、仲良くトランプやゲームで遊んだりする、って言ってた!」
「私たち、良くジェム達、新聞売りの寮の子や、貴族のエフォール達と一緒に、遊んだりしてるんだ!やり方教えてあげる〜!」
「トランプ?ゲーム?」
ダフネが首を捻り。
「皆様と一緒に遊ぶ、ゲームは勝負がつきますわね?」
リベリュールが、ニヤリ。
「皆様で、揃って遊んで、勝負事をするだなんて、した事ありませんわね!」
スフェール王太后が、満面、ニッコリ。
「面白そう〜!!側妃時代だったら、人の目があるから、皆でざっくばらんに勝負事なんて、絶対できなかったですものね!」
ダフネが、両手を、パン!と音させて組んで、パァア!と顔を輝かせた。
「何かと妃達を比べる割に、本当に勝負事ってなると、ぶつかって負けた方のメンツが〜とか面倒臭い事を言って、止められたりしたものね!」
「ええ、スッキリしなくて不本意でしたわ!」
「私も、凄く面白そうだと思いますわ!」
ふふ!
ウフフ!
ニッコ〜!
「お、おいおい、お手柔らかに。私たちも、息子達も、一緒にゲームとやらを、するからね?」
オール先王が、滑り止め的に話すが。
「ええ、貴方は黙っていて。大人しく一緒にゲームをやって、邪魔しないでよ!」
「正々堂々!」
「いざ、勝負!」
今日は短くてすみませぬ




