ニリヤ王子の朝
ニリヤの1日は、ベッドをゴロゴロする所から始まる。
ゴロゴロ、ごろりん。
ベージュピンクな天蓋のあるふかふかベッド、一緒に寝ている竜樹の腹に、足を引っ掛けて乗っけたり、大の字になったり。お腹いっぱい食べられるようになってから、良く眠れるようになったので、朝はあまり早くない。
お日様の光が窓の形に射して、ベッドにかかっている。ほんのり温かく、光の境目に、手を伸ばしてみる。小さな手のひらは、もう爪も汚くない。きちんと切って揃えてあるし、クリームを塗っているからガサガサも、まあまあ良くなってきた。
ふわぁ。
あくびをして、ひょこ、と身体を起こす。
髪はホワホワのくしゃくしゃだ。
「•••ししょう。オシッコ。」
ゆさゆさ、竜樹を揺らす。
トイレ、怖いのである。
1人でいた時は、仕方なく1人で行ったけれど、穴が深くて暗いし、じょわわわと浄化される時に、吸い込まれそうで、怖いのである。
手を洗う用の水が溜めてある桶も大きくて、柄杓を持ち上げると、柄の方に溢れてくる。ピシャピシャにしてしまって、冷たいのが嫌だった。
「ん〜ああぁ、もう朝か。おはようぅ。」
グワシグワシ頭を撫でて、竜樹が、よしっと起きる。
ニリヤが先に、トイレを交互に使って、手洗い場で手に水をかけてもらう。
マルサは鍛錬を終えて、朝食の時に帰ってくるから、寝起きな2人と、しっかり支度して朝のあれこれを手伝ってくれるミランしかいない。用意した温かい湿り布で、ニリヤの顔はくりくり拭かれ、さっぱりとした。
「おはなと、おみず。ごはんのまえ?」
「うん。ご飯の前だな。」
ニリヤの母様に祈る為のテーブルには、一輪、昨日差した花。花びら1つ1つが大きく、オレンジ色の朗らかな花。
おはなは、まだきれいだから、おみずかえる。
のみもののおみずは、あたらしいのにする。
かあさまのはんかちは、ぬらさない。
朝のお祈りが終われば、キッチンへ向かう。
目玉焼きを練習中なのだ。
こんこん、卵を平らなところに当てて、ヒビが入ったら、そこに指をかけて、パカっと割る。ボウルに受けて、入った卵の殻を指先でとる。
たまごをやいて、ぱんをこんがり。
ししょうがつくった、やさいのにたのと、みるく。
「今日は庭仕事してみるかぁ。」
あさごはん、おいしい。
あさごはん、たべて、うれしい。
ししょうは、いっしょにねて、あさ、おきるから、いいとおもう。