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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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207/692

叱るだけじゃなく希望を


本日2度目の更新であります。

そんな日もある。




「何なのよ!」

「あぁああ。負けちゃった•••。」


シエル妹元王女と、エクレ姉元王女。思わず漏らした、本気のため息である。


もうギフトの竜樹なんて、惚れさせなくてもいいから、フードゥルの国に帰ってチヤホヤされたい。

オーブにつけられた眉間の傷も忘れ、最高に興奮しながら応援し、甘く希望を抱いたりしたが、アッサリとフードゥルの騎士達は負けてしまった。


しかも姉妹元王女が、成長したいが為に、自分で修行をやりたいのだ、と誤解したまま。


でも今更、違うとは言えない。

この、周りからの、良かったですね!理解してもらえて!という温かな視線!要らないって!放っておいてよ!


「エクレ姉ちゃん、シエル姉ちゃん、まだ一緒にいてくれるんだぁ。嬉しいなぁ!」

ジェム達新聞売りの子の中で、いつも大人しいアガットが、ふいに姉妹のスカートの裾を掴んで、言った。

下から上目遣いの、純真な、笑顔である。•••眩しい。


「う•••。うん。」

「そ、そうね、一緒にいられるわね!」


姉妹は、ふにゃ、と困り笑う。

か、可愛いじゃないの!勝てない!


仕方ないか•••と納得したところで、カメラが観客席の元王女達を捉えて。


真正面の大画面に自分達を見つけた時、姉妹は瞬時に、身についた上品な、お愛想笑い。手をフリフリと。


フードゥルの騎士達は、それを見て、感動しながら胸に手を当て、一礼した。


姉妹元王女の、退路は絶たれた。




ブラインドサッカーのコートにしてしまったので、当初予定されていた、バスケとバドミントン、バレーに卓球は後回しに。今日は、色々な球技が出来るよ、とお披露目の意味もあるから、トーナメントなどにはしなかったのだ。


竜樹の精鋭チームと、ワイルドウルフのお国の獣人達チームとで、ブラインドサッカーするつもりだった。お互い練習もして、見応えのある試合になるはず、と。しかし、竜樹チームがそんなに立て続けに試合もできず。疲れるよね。

急遽、ワイルドウルフ国の獣人同士で、2チーム作った。

アルディ王子と護衛チーム、それから獣人コーディネーター、キャマラード達と出稼ぎ冒険者獣人達の混合チーム。


「何だこの試合!さっきと全然違う!!」

「超見応えあるじゃん!!」


獣人達は基礎の運動能力が高く、大変高度な技が乱れ飛ぶ、見応えのある試合だった。

観客席の歓声が轟く。



ワイルドウルフの国、王宮では、テレビを通じて観戦していた。アルディ王子の父王ブレイブと、母ラーヴ王妃、兄のファング王太子。

アルディ王子から、「タオルを使っておうえんするんですって!」との言葉と一緒に送られた、紺色と朱色半分色分けのタオル。

3人とも、アルディ王子チームの朱色タオルを、ぶん回すぶん回す!

「いけ!やれ!走れ!!!アルディ!!」

「パスパス!ああっ、取られるぅ!」

「シュート、今だ打て、打て!」

大騒ぎの王宮なのだった。


ブレイブ王は、プールと体育館を嬉々として建てているところだ。先んじたパシフィストの国の映像で、アルディ王子が獣人達とも互角に戦っているのが見られて、帰ってきてからの準備、楽しみが増えた。

元気に走るアルディ王子を、盛り上がってワイルドウルフは、応援している。


他の球技も、他国の留学王族や外交官王族達、そしてその護衛達が、素晴らしい技を見せてくれた。

バドミントンでは、ヴェリテの国の兄妹、フレ・ヴェリテと、ナナン・ヴェリテのダブルスで、他国と試合。

身軽な兄妹は、ビシバシとスマッシュを決めて。

オランネージュ、ネクター、ニリヤも、「フレ叔父様!ナナン姉様!がんばってぇ!」と紺色タオルをフリフリした。


卓球は、何とエフォールも出場した。

日頃の遊びの結果、大変コントロールがよく、ラリーの続く楽しげな試合になった。


途中、お昼は体育館の周りに屋台の出店を呼んだ。教会からも出店して、竜樹は、色とりどりのアイスクリームを買った。交代で球技大会を観ているよ、と言う店員の教会の子、フリーマーケットでは、たい焼きを売っていた、そばかすのサクレに、偉い偉いと撫で、フリフリ握手して。レモンアイスは、暑くて渇いた喉に、しゅん、キリリと染みた。


バスケの試合の後は、他国自国参加王族達で、フリースロー対決をやった。竜樹も参戦した。一度も入らず。

マルサが3回も入れて、やんやの喝采をもらっていた。


最後には、楽しかったね、また明日から体育館、貸し出すのでよろしくね!とマルグリット王妃が締めて、拍手で終わりとなった。


竜樹は、他国の留学王族、外交官と少し交流できて、あちらも嬉しそうだったし、竜樹もまた、貴族と話した時と同じように、構えていた肩が降りた気がした。

利益が絡む関係だけど、話してみれば、それぞれ弁えてくれていたし、また球技大会というイベントの意義を感じてくれていて、ウチでもやりたい、持ち回りでやりたい、と言ってくれた。

竜樹がお話出来てよかった、これからも、よろしくお願いします、と言うと、愛想笑いじゃない笑顔をくれた。






「•••といった感じでね。」


カルネ王太子が、妻のリアン王太子妃にテレビ電話で今日の球技大会を報告し、大体話し終えたところ。


『まぁ、まぁ、まぁ!なんてこと!なんて、なんて、面白い球技大会だったのね!見たかったわ!』


リアン王太子妃が、身を乗り出す勢いで感心する。


「私は感情の上がり下がり、興奮したりホッとしたり、緊張したり笑ったりと、全く忙しい日だったよ。疲れたが、まずまず結果は良かった。」

ふー、と息を吐き、お疲れモードのカルネ王太子である。


『良かったですわ。竜樹様と我が君の頑張りで、丸く収まって。そして、騎士達も、王女達も、これで良い方向に行きそうね。その幸運を、当人達は、どこまで感じられている事かしら!というのは、傍から見ている者の感想だからかしらね。』

優しい声で、カルネ王太子を労る妻。


「父王には、球技大会が終わってすぐ、テレビ電話で報告したのだが、やはり大きく息を吐いていらしたよ。全く、良く放送を使って丸く収めたものだ、竜樹様は。私だけだったら、叱って罰を与えて終わりだったろう。希望を与える、というのは、なかなか出来ないな。」

『子供達を育てているのが、影響しているのかしらね、竜樹様のやりようは。』

「かもしれないね。私も、子供が生まれたら、叱るだけでなく希望を与えてやりたい、と思ったよ。」


『素敵なお父様になるわ。』


「君もね。素敵なお母様だ。」


ふふふ、と笑い合って。

さて、今夜はこんなところで、という終わり際になって。

カルネ王太子が、コクリと果実水で喉を湿らせ。


「パシフィストの国が、それぞれ友好国に、テレビを1台ずつ贈ってくれるそうだ。それで、今日の球技大会の番組も、記録の中から観られるはずだと。ハルサ王様は、色々な国に、見てほしいと言ったよ。それからーーー。」

『な、な、何ですって!見られるの!?』


あ、ああ。

妻の勢いに、若干引き気味ながらも、続ける。


「テレビには、チャンネル、というのがあって、色々な局でそれぞれ特色のある番組を作っていけるそうなんだ。ハルサ王様と竜樹様は、今は国内で、民間のテレビ局まで手が回らないから、他国で1チャンネルずつ、作って、友好国の作った番組を、皆で見られるようにしたらどうか?とおっしゃっていたよ。」

『な、何ですって•••!』


「そうなると、情報が選べる時代になるのだね。旅の商人や出稼ぎや旅の冒険者などでも、遠くの生国の番組が見られたり、他国の番組も見られたりする。番組作りについて、これからのパシフィストで、学ぶ事は幾らでもありそうだよ。』


『•••我が君!!』


なんだい、我が妻、リアンよ。


『子供が生まれたら、一度だけ帰っていらして!抱いてやってください!でも、またパシフィストに行って、番組作りを学んで下さい!姉妹王女なんか当てにならないわ!これは、これは、我が国が、変わるきっかけになるわ!』


「そう言うと思った。ーーー時々帰って、通うのでも良いかい?一つ月に2、3回くらい?テレビ電話で、毎日話をしても?」


子供に顔を覚えてもらえなかったら、悲しい。

眉を下げ、でも微笑む夫に、リアン王太子妃は。


『それが良いわ!もちろんよ!度々帰っていらして!そして毎日、私と子供に、楽しいお話を聞かせてください!』


待ってるわ!


うんうん。


会いたいな。

話していると会いたくなるね。

あら、私もよ!


などと話をして、カルネ王太子は、幸せのテレビ電話を、今夜は切った。




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