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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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203/692

我が精鋭達と戦うがいい!

新しく建設された体育館。

これもまた、貴族平民関わらず、貸し出しができるようになる。揉め事が起きても困るので、常時それを仲裁できる王様直属の管理人がいるし、揉め事の経緯が分かるように、神の目も色々な場所に設置済み。普通に待てば順番が回ってくるように、借りたい人が沢山いる時は、2刻ごとに時間制限をつけるし、予約もできる。

待ち時間に居られるような、カフェも併設して。


幾つかに建物が分かれている。卓球台が置いてある部屋、バスケやバレー、バトミントンが出来る大きな部屋。

今日は皆、一番大きな建物に集まる事になった。

すり鉢状に配置された観客席に、ドーンと付けられた2台の東西テレビ画面。


「は〜い。靴が汚いと、体育館を汚してしまうから、皆この浄化の魔法陣の真ん中を、一回両足揃えて踏んで下さ〜い!」

「「「はーい!」」」


竜樹と3王子とアルディ王子と、エフォールとピティエとプレイヤード、それから子供達。ラフィネと姉妹元王女も一緒である。タカラとマルサ、他護衛の者達も、ピリッとした表情で付いて。

少し増えた、いつもの面々で、ピョン、ピョコ!と1人ずつ、靴拭きマットに描かれた魔法陣を踏んで。

踏むたび、キラ!と光が出るのが楽しくて、子供達はニコッと順番を待った。

ピティエとプレイヤード、アミューズには、本日この大会だけの、解説付きのラジオ放送が入るイヤホンが渡される。


それから、応援する為の、紺色と朱赤、2色半分ずつに染められたタオル。これは任意で買って下さい、というやつなのだが、結構な勢いで売れていた。

竜樹が発案した物なら、何か面白いんだろう?と皆の期待故である。

竜樹と王子達、貴族組、子供達は、1人一本ずつ購入した。ガーゼ織りの、柔らかな生地で、手触りが気持ちいい。タオルとしてだけでも、優秀な品だ。

子供達が、フカフカ、フカ!と頬を擦り付けている。


「竜樹到着です。本番前、撮影隊も緊張してるかな。編集や音響、照明も、てんてこ舞いかと思います。司会と解説も、頼みますね!侍従侍女さん達も、アシストよろしくね!今日のラジオ仮の放送も、頑張っていこう!」


竜樹が、インカムをつけて、まずは到着した旨を撮影隊やスタッフ達に連絡。案内された観客席は、一番前で特等席だ。テレビ画面も真正面の壁に。

観客席が、段々と埋まっていく。ざわざわと、満席になる。


ハルサ王様とマルグリット王妃が到着し、皆立ち、頭を下げ胸に手を当てる。ザッ、すっ、と音が静まる。

留学や、外交官として訪れている他国の王家の者達も、頭は下げなかったが、胸に手を当てた。


観客席から、するるる、と現れた階段を、王様が降りて行く。そして体育館の床の、ちょうど真ん中に立つと、マイクを渡されて、開会の挨拶を。



「本日はまた、体育館のお披露目に、球技大会ができ、めでたい日となった。それを皆と共有できる事を、幸せに思う。」

会場全体を見渡して。


「人には闘争心、戦いたい本能がある。ギフトの御方様、竜樹殿が言うには、異世界では、4年に一度、色々な国々が集まって、それを正しい方法で使うよう、平和に、様々な運動で競い。その種目での一番を皆が目指すという。もしそれが、この世界でも出来たら、素晴らしい事だ。」


「無理に闘争心を抑えずに、競い合いつつも、平和に。讃えあい、協力をし合って。私たちもそれを目指して、今日は存分に球技で戦ってみようではないか。他国の皆様方にも、ご協力をお願いしたい。今日は1日、皆で楽しもう!それでは、第一回球技大会を、開催する!」


とん、とん、とーん。


ハルサ王様の足元に、ボールが転がってくる。王様がそれを拾って、マイクをアシスタントの侍従が回収。


ダム、ダム、ダム。


何度か、ハルサ王様がボールをドリブルする。ある壁に近づいて。スポットライトが、ハルサ王様と、そしてバスケットゴールに。

? と観客は、何が行われるのか、分からずに王様の一動に集中して。


すっ すとーん ぽす!


ハルサ王様がジャンプし背を伸ばして、綺麗なフォームでボールを投げた。バスケのゴールに、ストッと、ちゃんと、入った!


とん とん とーんんんん。


落ちたボールが、床を弾んで転がっていく。


わあっ!!

一拍遅れて、観客席が沸いた。

王様は、手を振って階段を登り、観客席に戻っていく。

辿り着き座ってニコニコしつつ、隣のマルグリット王妃にだけ聞こえる声で。

「き、緊張したぞ!入って良かった•••!」

マルグリット王妃が笑って、ハルサ王様の肩を叩く。

「沢山練習しましたものね!格好良かったわ!」

幸先のいい開会式である!


「それでは、始まりました第一回球技大会。司会は本日、私、アルトと。」

「私、パージュがお送りします!」


アルトは、竜樹がやはり市井で見つけてきた。野良バトルーーーこちらでの、プロレスみたいなものかーーーの司会をやっているのを見て、荒々しい次々と変わる戦況を、わっと盛り上げ、正確に伝える所が気に入ってスカウトしたのだ。

アルト本人は、何と線の細い美青年で。オレンジの甘い瞳に、儚げな表情、焦茶色の髪を肩まででバッサリ切っているのも、勿体無いような天使の輪を持っている。だが、熱々の熱な性格で、戦いがある所に行かないでは居られない、これまた難儀な人なのだった。シンプルなシャツに上着で、それでも流麗である。


バラン王兄の婚約者、パージュさんは、相変わらずの、まあるい良い声で、朗らかに司会を勤める。

熱いのと穏やかなので、バランスよく面白い放送になるのでは、と竜樹は思っている。


「今日からは、テレビが文字放送に対応しています。この体育館のテレビも、王都や地方都市の広場大画面でも、同様です。皆さん、また新しいテレビの進化を楽しんでいきましょう!」

アルトが言えば。


「また、今日は、この大会のラジオ放送が行われています。まだラジオは仮でお試し期間なのですが、王都や地方都市の商店街など、画面のない所で試験放送されています。お買い物などのついでに、聞いていただけたらと思います。ラジオ放送の司会もご紹介しましょう!こちらの2人です!」

パージュがすかさず話す。


『はいはーい!私たち、本日ラジオ放送の司会を務めます、ルムトンと。』

『ステューです!どうぞよろしくお願いします!』


ルムトンとステューは、大道芸人で、喋りを武器に街頭コントみたいなものをやっていた2人だ。ボケとツッコミで言えば、ルムトンがボケでステューがツッコミ。大男のルムトンに、背の小さなステュー。ラジオでのスポーツ中継を何度も聞いて、特訓してきた。自分達の味わいも忘れずに、楽しい放送になるだろう。

ちょっとした笑いを盛り込んで、話をしていたテレビとラジオだが、さて!というアルトの言葉で、テレビの音声を主体にしつつ、二つに分かれて放送を始める。


「最初は、バスケット、という競技から始まります。撮影隊の、スーリールさんに現場からリポートしてもらいましょう!スーリールさん!」


「はいはーい!私スーリールと、撮影隊のメンバーが、この競技の熱いところをお届けします!まずは、あっ!!」



何するんですか!乱暴はやめて!今、テレビの放送中なんですよ!



マイクがかろうじて拾う、スーリールの抗議に、揺れたカメラが、現場根性でその、乱暴にスーリールからマイクを奪った一団を捉える。

騎士服を着た、5人の男達が、スーリールを人質に。

ざわめく館内、竜樹もヒュ、と息を吸い。


「乱暴はしたくないから、静かにしてくれ。私たちの話を聞いて欲しい!ギフトの御方様に、話がある!」


お、俺か。

竜樹は、ビビる気持ちに蓋をして、インカムに、竜樹の所まで別のマイクを持ってくるよう指示した。

話をして、要求を引き延ばして、マルサに協力すべく。


確保準備!とマルサが指示を出し、体育館内にいた護衛達が、じわりと、人質をとった騎士を取り囲み。


「ギフトの御方様は、なぜ私たちの国の、大事な宝、王女達を平民扱いに蔑んで、使用人とするのか!私たち、フードゥルの騎士達は抗議する!」


あ。この一瞬で、何かカルネ王太子の胃が荒れる未来が見えた気がする。


「エクレ姉ちゃんとシエル姉ちゃん達の騎士かよ〜。」

「もしかして、姉ちゃん達、きしさんたちに頼んだの?」


ジェムとロシェが、タハっと言い、そして子供達の、疑いのまなこに、ふるふる、と顔を振りつつも。姉妹王女は期待に胸を膨らませた。

そうよ、そうよ!私たち、やんごとなき王女なのだから!もっと言ってやってよ!



「ぬはははは!」



竜樹が、マイクが届くと同時に立ち上がり、そして大笑いーー悪者っぽいーーをしたので、皆、はっ!?とした。姉妹王女も。


「フードゥルの騎士達よ!お前たちが、この王女を甘やかして、大人になるのを妨げたのだな!?」

ニンニン、と悪い笑顔をする竜樹に、会場の皆はなり行きが見通せず、ハラハラと。特にフードゥルのカルネ王太子は、腹を押さえて、真っ青になっていた。


なっ、何!?

ざわめくフードゥルの騎士達。

「あ、甘やかすとは何だ!エクレ王女殿下と、シエル王女殿下は、大切な宝石ともいえるお方。私たちが大事にお守りして、望みは何であろうと叶えて差し上げる価値のある方!平民出のギフトなどに下付かせるなど、言語道断!」


フッ

ニヒルに返す竜樹である。

「そのお前たちの、甘やかして気に入られたい私欲に塗れた扱いで、王女達は、私の前で失敗をしたのだ!詳しくは、言わないけど!そしてそれを悔い、自ら平民扱いとなって、私の子供達の寮で働き、大人の女性になる一歩を歩き始めた!」


え。私たち、別に自分からじゃ。

王女達は思ったが、竜樹は堂々としている。


「お前たちは、王女達をチヤホヤして良い気持ちにさせ、そして自分達は希望通りの敬愛を注ぐ事で、囲い込み、王女に失敗をさせた!それをキッカケにと、反省した2人の王女の、成長したいという願いを断つつもりか!それは愛ではない!愛とは、ただ願いを叶えるのみにあらず!時には自分が嫌われようが厳しく叱ることも、煩わしがられようが失敗しそうな事に進言するのも、必要なのだ!ぬはははは!」


悪そうに言ってるけど、普通の事である。


「くっ•••!そ、そんな!信じられない!王女殿下達は、蝶よ花よと育てられたお方!下賎な者のような事をしたいなどと、思われるはずもない!一生を安楽に暮らして頂くだけで、私たちは本望!ギフトなど我が国にいらぬ!王女殿下達を返していただきたい!」


クックック。

わるーい顔をした竜樹は、腰に手を当てて、騎士達に。

「やーだね。」


ああ!私たちを男どもが奪い合って!

何だか姉妹元王女達は、両手で頬を挟み、フリフリと顔を振っているが、なんか赤くなって興奮している。恍惚。


「姉ちゃん達•••喜んでる場合じゃねえだろ。これ、フードゥルのお国、何か悪いことになるだろ?」

「姉ちゃん達の兄ちゃん、また謝らなきゃだろ。」

ふすー、と鼻息を漏らすジェム達に、あらそうお?などと非常に軽い、姉妹元王女なのだ。カルネ王太子、可哀想。


オランネージュとネクターとニリヤは、何かあったら自分達も手伝う!と、キリリとした顔で竜樹を見ている。


はっはっはっ

「私は神の鳥、オーブから直々に王女達の成長を見守り指導する、という役目をもらった!中途半端で投げ出す訳にはいかない!お前たち、自分の女を返して欲しければ、勝負だな!」

竜樹が提案する。


「しょ、勝負とは!?剣か!?」

騎士が色めき立つ。まさか本当にそこまで、命をかけるほどの!?騎士達はいいが、勝つに決まっているのだから。だがその後、国同士で揉める事に。流石に顔色の悪くなる騎士達である。


「何言ってんだ。王様が言ってたろ。闘争心を、運動で平和的に、って。私は騎士じゃないから、ハンデがある。だから、何で勝負するか、私が決めても良いだろう?」

「ああ、構わない。」

ふー、すー、と荒い息を吐くフードゥルの騎士達に、マルサは何だか、ぷふ、と笑いたくなり、唇を噛んだ。いや、竜樹、何する気かわからんけど、面白い事する気だろ。



「ブラインドサッカーで勝負だ!そして、我が精鋭の、子供達のチームと対戦してもらう!」

ビシ!と言い切る。


えぇ!?子供とぉ!?

騎士達は拍子抜けだ。

「自分では戦わないと言うのか!?卑怯だぞ!いたいけな子供達が、私達と戦って勝てる訳がないだろう!?」


スーリールも、はがいじめにされながら、ムフ、と笑った。

ジェムちゃんやアミューズや、ピティエ様にプレイヤード様。と、素人が戦って、勝てるですって!


竜樹は相変わらず悪い顔で。

「ボスは最後まで戦わないものよ。普段、他のことで戦っているのでな!」


金策とかである。


「さあ!怖気付いたか!フードゥルの騎士達!私の精鋭達と戦って、見事王女を奪還してみせろ!!」

ふつ、とマイクを切って、インカムに指示。


「アルト!煽れ!腕の見せ所だぞ!」


はっ と気を取り戻したアルトは、ヌフ と笑う。ギフトの御方様、やっぱりあんた、面白れぇ!


「おーっと!!パシフィストのギフト、竜樹様の精鋭がフードゥルの騎士達をコテンパンにやっつけるのが見られるのか!?それとも、フードゥルの騎士達が、勝って王女達を取り返せるのか!?男達の戦いが、今、始まろうとしている!!!!!」


パージュも。

「皆さん、お手持ちのタオルを持って、応援してください!竜樹様と子供達を応援するなら、紺の方をぐるぐる回して!フードゥルの騎士達を応援するなら、逆に朱色を!さあ、あなたはどちら!?」


どっ!

ブンブンブンブン!

観客席は歓声の渦となり、紺色と朱色の花が、激しく咲いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 騎士も正々堂々と戦ってほしいですね コテンパンにはなるだろうけどw カルネ様が倒れませんように わくわく♪o(*゜∀゜*)o
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