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鍵がない

「聞いて下さいよ竜樹様!ニリヤ様のお部屋の荒れっぷりったら、凄かったんですから!どこの強盗が入ったか、ですよ!」


ミランと従者の少年たちが、竜樹の部屋に、たたんだ服や靴下などと、こまごました装身具の箱を大量に持ち込んだ。

ニリヤが寝ているので、ミランも小さな声だが、怒りは堪えきれず、チェストに肌着などを片付けつつプンスカしている。


「荒れてた割には、洗濯してある服とかあったんだね。」


竜樹は驚かない。想定の範囲内だったからだ。


「ニリヤ様のお母様付きだった侍女たちが、ちょっとずつニリヤ様のものを隠していたそうなんです。それをみんなが渡してくれて。」

それでも、第二側妃様の息がかかった侍女たちが、相当ニリヤ様のお母様のドレスなどを着服したようですよ。

結局はニリヤ様のお母様方侍女と、第二側妃様方侍女で、物の取り合いになって、お部屋はガランです。


パタンとチェストの蓋を閉め、深呼吸。気を落ち着かせた。


「ニリヤ様はお母様と一緒のお部屋に住んでらしたのですが、お母様のリュビ様が市井にいらした時のように、時々お菓子が作りたいと仰ったので、お部屋にキッチンがあるのですよね。」

「あ、そうなんだ。じゃあそっちの部屋に引っ越しした方が良かったかな。」

材料は厨房からもらうにしても、自由に料理ができた方がいい。

「はい。ですが、ベッド周りなど、お片付けや掃除は必要ですから、しばらくはこちらから通う形が宜しいかと。」


なるほど。それにしても侍女達部屋に入り放題か。そういえば、王宮って、扉に鍵がないな。

基本的に衛兵が扉を守っているからだそうで、立て篭もりなどを防ぐ為にも鍵はつけないんだそうだ。貴人にプライバシー、ないよね。


「う〜ん、衛兵さんの裁量次第で、あんまり部屋を無防備にしておきたくないけど、まあそれは後々でいいか。」


「俺が寝泊まりしようか?」


マルサが申し出てくれるのは、大変ありがたい。四六時中一緒ではマルサも息が詰まるかもしれないが、信用できる者がいるのといないのでは、安心度が違う。

「助かるよ。でも、マルサって他に仕事ないの?」

仮にも王弟なのだから、他にも兼任していそうである。そもそも騎士団の特別顧問をやっているのでは。


タハっと肩を竦めて、マルサはソファに寝転がった。

「名誉職なんだよ。平民王弟に実権はない。有事の時に人質になるくらいかなー。まあ今は戦時中じゃないし、鍛錬はしたいが、それは信頼できる奴が幾人かはいるから、交代しつつやってもらう感じかな。」

平時は退屈で退屈でさぁ。俺、竜樹の担当になって良かったぜ。


「何か面白い事ありそうだろ。」

ニシシ、と白い歯を見せる。


じゃあそういう事で。

話はまとまり、そして他にも策は練れそうだな、その為にも。

「明日はチリさんと会わなきゃだな。スマホの充電きれるし。」


「料理長にレシピも渡さなければですよ。」

それもあった。


竜樹はミランにしばらく翻訳をやってもらうこととして、まずはスマホを見ながらハンバーグとスポンジケーキのレシピを口伝えで説明し、羊皮紙に書いてもらった。

異世界の文字は、竜樹には初めて見る文字で、喋りが通じる方が不思議だが、読み書きまでうまいことはいかなかったようだ。


「読み書きの練習、膨張剤の確認、調理器具の改造、か。」


「膨張剤と調理器具とは?」

ミランがハンバーグは成形したお肉の真ん中を凹ませて、と呟いてメモしつつ。


「そのスポンジケーキは、ベーキングパウダーっていう膨張剤、膨らし粉を使ってないレシピだからいいんだけど、その代わり卵をめちゃくちゃ泡立てる必要がある。人力ではちょっと大変。」


「魔法でできるんじゃね?」


おおう。

その調子でチリさんにも魔法で頑張ってもらいたい事があるな。

竜樹は、やる事いっぱい!とテーブルに突っ伏した。

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