朝ごはんと報告会
意見交換会は、ファヴール教皇にお出まし願ったのもあって、不穏な事もなく、活発に意見交換しつつも、順調に終わったと言える。
それだけ貴族達も真剣にこれからのことを話したし、ラジオ番組とテレビ番組、教科書作りに申し込みもぼちぼちあった。申し込みの期間中話し合って、また参加が増えるだろう。
次ぐ日の朝、王様一家と竜樹とで、朝食報告会を開こうと集まって。モグモグと食パンにベーコン目玉焼きにパクつく。
「昨日の意見交換会は、テレビ電話で参加した方は、少し取り上げられにくくなってしまいましたね。あと、お子さん達に、もっと意見を言って欲しかったかな。」
竜樹が、ナイフで切った目玉焼きを、つるんとパンに乗せて。
「まぁ、仕方がない所もあろう。テレビ電話で参加した者達も、食い入るように画面を見つめていたな。発言も少しは出来たし、まあ、使いながら、やり方も改良していこう。子供達は、意見を言うまでいかなくても、大人と同じ待遇で、後々に良い芽が出ようよ。しかし、次々と新しい情報の発表で、愉快なほどだった。先に聞いてはいても、実物を見て、皆の反応を見ると、会議に慣れた私でも、ふわっとするな。」
王様が、むふふ、とくぐもった笑いを。
「あれから、まだ非公式にだが、優秀な平民達を、まずは試しに貴族の学園に特待生として1クラス分くらい受け入れを、という声が出ていてな。それに合わせて、平民達向けの高等学校を作ろうとも。どちらも採用される案だろうな。」
あーんと大きな口を開けて、目玉焼きの半分を口に入れた。
「それから、聾唖学校を作っても良いのじゃないかとーーーー。」
「一度表に出したし、予想外の人数の多さに、隠していられないと思ったのだろうな。竜樹殿が教えてくれた、魔道具の事も後押ししたろうし。」
「やはり、自分達に直接関係がある、となると、動きが素早いですわね。なかなか議決しない、いつもの会議はなんなの、と思います。でも私たち王族にも、近い血の問題は関係しますから、ね。他人事みたいに言っていられませんね。」
王妃様が、ミックスジュースをコクンと飲んで。
「がくえん、ぼくもかようの?」
ニリヤが、たまごの黄身を、てかっと頬にくっつけて。竜樹はそれをナプキンで拭いてやった。
「ニリヤはもう少し大きくなったら、だ。」
「まずはオランネージュからよね。16歳になったら、よ。」
「まだ猶予があるね。それまでに、お勉強しておかないとなぁ。」
オランネージュが、もぐもぐごっくんした後、後6年〜と指を折る。
「ネクターもサンセール先生に、段々と学園に行く準備の勉強を習うのですよ。真面目に勉強しているから、心配はしてないけれど、何か困った事や足りないものがあったら、いつでも言ってね?」
王妃様が気遣うと、ネクターも食パンにマーマレードを塗りながら。
「はい、マルグリット様!」
良いお返事をした。
「それにしても、平民と貴族とが、こんなふうに混ざり合う事になったのは、想定外であったな。リュビなら何と言うか聞いてみたかった•••いや、失言である。すまない。」
ニリヤの母、亡くなったリュビ妃の事を思い出して、王様はふと、顔を俯ける。
「良いじゃないですか。かの方の事を思い出せるのは、関わりのある家族ならではですよ。きっと、やったね!って言うんじゃないかな。王子達のお友達も、リュビ様と同じような立ち位置の方も、増えるかもだし。」
竜樹のニッコリした笑顔に。
そうかな。ーーーそうだな。
王様は、しんみりと、だが微笑みを浮かべて頷いた。
「それに、これでニリヤの事を、下に見る風潮が、大分減るんじゃないかな、って俺は期待してますね。でも番組は、続けるけども。」
「ばんぐみ、いっしょね!ししょう!」
一緒な。くりくり、と頭を撫でてやると、ニリヤは張り切って、黄身のかかったパンに、モグッとかぶりついた。
「今日は、この後、視力の弱いルフレ公爵家長男プレイヤード君と、同じくアシュランス公爵家ピティエ様が遊びに来ます。王子達、仲良くするんだぞー。」
「「「はい!」」」
「アミューズ、みたく、いっしょあそぶ。」
「私たち、おめめが見えにくい人たちと一緒の時、どうするか勉強したもんね!」
「任せて!」
ふふふ!と王様も王妃様も、ニコッとする。
「頼もしいな、3人とも。」
「頼りにしてるわ!」




