伴侶はどうですか?
竜樹が、おしゃべりしてみてね、としてから、最初は皆、戸惑い。でもちょっとずつ真剣に、魔道具を駆使したりもして、身近な人たちと話し始めた。
ざわざわ、と大勢の人が話し合う声がうねりとなって、会場内を埋め尽くす。
「あ、段々と毛氈からはみ出して、自由に他の家族達とも話し合ってるね。」
「うむ。まあ、血が近い弊害の話もあったしな。」
ファヴール教皇が、ペロリとシュークリームを2つ食べ紅茶をすすり、一つ目のシュークリームを齧り中の竜樹と、顔見合わせてダベる。
「薄々気づいてはいても、なあなあにしてきたものが、神の名において、はっきりとされてしまった。婚約者のいる者達は喫緊に話し合いたいだろうし、それ以外の者も、テレビやラジオ、教科書作りの就職を望むかどうか、誰と組むかで、今、頭はいっぱいだろう。」
「それにひても、もむもむ。」
神様の独り言を聞いた、って、皆すごく信じてくれるんですね。そんなの嘘だ!とかなくて。
竜樹の疑問に。
「それはそうだろう。神の声を騙った者は、その罪の度合いにより、雷に打たれて神罰をもらう。その場でだ。子供の嘘などでは、神もちょっとピリッとするくらいに手加減してくれるが、それでもピシャン!と、嘘を言った瞬間に、いきなり雷に打たれては、誰も嘘をまこととは言い切れない。」
故に、神の言葉に関して嘘を言う者は、この世界では、いない。
「はぁ〜!この世界は、本当に神様の存在が、皆の生活に、近いんですね。」
「神器を持つお方が、何を言うか。」
ふはは!
ファヴール教皇は、いかにも可笑しげに、口元を緩ませて笑った。
1刻ほど、自由に話してもらって、竜樹は会を締めるために、質疑応答をし始めた。
「どうやってお試しの番組を作ったらいいですか?具体的に教えて下さい。」
「自分が得意だったり、伝えたい事をなんでも、工夫して番組にして下さい。こちらで、ラジオなら音を録る録音機、テレビなら映像を撮るためのカメラを貸し出します。それで録った音や映像を、これまた貸し出す編集機を使って、まとめて下さい。何でも良いから、最初は撮って、録音して、手応えを感じてみて下さい。カメラや編集機は、ラジオ番組やテレビ番組を毎日、朝から夜まで番組を流すように将来するので、その時に使いますから、ちゃんと返して下さいね。壊したら弁償です。因みに、録音機は金貨3枚、カメラは一台金貨5枚。音と映像の編集機は金貨6枚します。」
「あにめーしょんを作る時も、そのカメラですか?」
「上から据え置きの、カメラが必要でしょうね。アニメーションを作る場合は、また機材が違うのです。できるだけ希望の表現が出来るように相談にものりますが、アニメーションを作るのは時間もかかるので、今回は見送って下さい。例外として、新設するアニメーション制作会社の社員達は、アニメーションでお試し番組を作ってもらいます。」
「教科書を作りたい人は、どうしたらいいですか?」
「試しに、これは学んでおくべき!と思う項目を、子供向けに、分かりやすく、実際に紙に書いて作成し、見本として提出してください。こちらもチームで応募しても良いですよ。枚数制限はありませんが、多ければいいとは限りません。少なすぎても、判断に迷うので、10ページ以上で、程よく、を自分の判断で。」
「ギフトの御方様は、伴侶をお求めではないですか?どんな方が好ましいと思われます?」
ぎょっ!とジェム達や、教会の子らが、わらわらと立ち上がり。
「伴侶を求めてないです。添ってくれる方がいるなら、子供達のお母さんになってくれて、子供達に好かれる方が良いです。お母さんはもういるし、子供達にも浮気する姿を見せたくないので、お父さんとして、身を律します。」
ほっとして、座った。
「米粉のパンは、どこに行けば買えますか!?」
「王都に、明日から開店するお店ができます。ルリのみせ、と言います。米粉も売っているので、ご自宅の料理人にパンを作らせたいお家の方、問い合わせはそちらに。小麦アレルギーのある子のお家優先にはなります。お店までの地図を、ご希望の方にはお渡しできます。」
「本当に伴侶はいらないですか?ギフトの御方様の、お仕事の助けになる、貴族として身分も充分な女性が沢山います。新しい血といえば、ギフトの御方様も、新しい血をお持ちでしょう?」
「すみません。家庭を壊したくありません。父ちゃんに女ができた、って子供を泣かせたくないです。」
うんうん、とジェム達、教会の子達が頷いている。
『私たち 耳が不自由な者も 視力が弱い方も 番組を作ってみて いいのですよね!』
「ぜひ!ご応募、お待ちしております。」
その後も何だかんだと話があって、ひとしきり応答する。
「では、これから申し込みを受け付けます。今、申し込みたい方は、どうぞ。これから自由解散になります。晩餐の時間までは、会場で色々な方と打ち合わせしてくださって構いません。ちょっとしたお茶とお茶菓子は出ますが、夕飯は出ないので、お腹に都合を聞いて、お時間許すまでどうぞ。」
その日、貴族たちのほとんどは、時間ギリギリまで会場から帰らなかった。
赤ちゃん連れの貴族のために、各家庭に付いてきた乳母にお乳を与えさせ、控えの間が育児室と化した。




