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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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プール開き


キラキラと水面が、天窓から午後の光を反射して、ワクワクした気持ちを誘っている。


温水プールは、今日がプール開き。


選ばれた参加者は、まずは王様に王妃様。作った水着も初々しく、お花のついたマイクの後ろで、椅子に座り、プール開きの挨拶の時間をソワソワ待っている。


それから、竜樹と3王子にジェム達。

実際に入るのは子供プールだが、今は大人プールサイドで、「およいだことある?」「ないー!」「川であそんだこと、ある!」とか、ワイワイ話している。

お付きのタカラと、カメラを抱えたミラン、子供達を見守るために、ラフィネと侍従侍女さん達もついて来てくれた。王弟マルサと、編集のメルラの夫、ルディを含む護衛の面々も、細マッチョな身体を晒して、意気揚々として。


教会の子供達の中で、参加したい子達も呼んである。王都の、竜樹が面倒みてる子達には、団体値段での年間パスポートを買ってあるのだ。

水着も、男子は紺色に鳥柄、女子は黒に花柄でシンプルな物だが、まとめて頼んだ事で、デザイナーのフィルさんに、安くしてもらった。

教会の助祭や、子供達の面倒を見てくれるおばさま達も、同じデザインの水着でスタンバイしている。


喘息もちのスポーツにいいとして、何とも主役のアルディ王子と、下肢のリハビリにも期待されるエフォールも、お付きの従者と共に、プールサイドで三角座りしている。藁色と黒の髪の毛は、それぞれ後ろに縛って。2人には待ちに待ったプール開きで、興奮を隠せないまま、「早く入ってみたいね!」「ほんとです!」と囁き合っている。


その他は、運動に興味がある武門の貴族達、親とその子女。

プールで運動をして体型を整えたかったり、遊びたかったりする、新しいものに目がない貴族達。


また、抽選で参加できる事になった庶民達は、時間交代制で貴族と入れ替わりで入れる事になっている。分けた方が揉め事も起こりにくいし、プール、2時間も3時間も入ってられないから、ちょうどいいのだ。

王様と王妃様は、貴族と庶民との2回、プール開きの挨拶をする事になっている。


スーリール達ニュース隊と、新聞記者も、報道の文字が入ったカードを首から下げて準備万端だ。


まるで極楽鳥柄の派手なサーフパンツを履いた、白髪混じり緑髪のイケオジ、ホロウ宰相が、さっと手を挙げて注目させると、ざわざわしていたプールサイドが、ピタッと静かになる。


「それでは、王都国営プールの、プール開き挨拶を、ハルサ王様よりいただきます。」


すっ と前に進み出た王様が、マイクに向かって口を開く。


今日のプール開きを迎えられて、とても喜ばしいこと。

このプールで、身体を動かして楽しく遊ぶのは勿論、身体に障がいを持つ人のリハビリや喘息の人たちの改善に、沢山役立てて欲しいこと。

体型や健康を整える為にも、大いに利用して欲しいこと。


それから、監視員が必ず常駐するが、事故には充分気をつけて欲しいこと。

特に赤ちゃんや幼児は、水位がほんの少しでも溺れてしまうことがあるから、必ず保護者がつき、監視員や指導員の指示に従うこと。


また、これについては、溺れている状態を察知して警告音が鳴る魔道具を用意したから、みんなそれを手首につけて入ること。


「事故さえなければ、楽しく水遊びするのに否やはない。みんな、今日は、注意事項をよく聞いて、その上で存分に楽しもう!私からは、以上である。」


パチパチパチ!

拍手が起こり、王様が下がる。ホロウ宰相が傍で、次は指導員の注意事項を、と紹介する。


飛び込みはしないこと。

浅いと頭を打ちます。

プールサイドは走らないこと。

すべります。

ふざけて、水を怖がっている人に、乗り掛かったりしないこと。

溺れちゃうこともあるよ。

準備運動してから入ること。

心臓がびっくりしちゃいます。

具合が悪い時は申し出てください。

休みながら遊ぶこと。無理はしない。

休憩の時は水分をとりながら。


「では子供達と、保護者の皆さんは、子供プールと赤ちゃんプールに向かってください!そちらでも、指導員が指導しながら、時々自由に遊ぶ時間も入れつつ、お水に慣れるようにしていきますからね。」


「大人プールの皆さん、泳ぐ指導を受ける人は第一コース側。無理なく水の中を歩く運動をする人は、第六コース側へ。」


竜樹達はゾロゾロと子供プールへ向かった。

指導員と監視員とは、重々打ち合わせをして、徹底的に事故対策と指導のやり方を準備している。

この王都では、川はあるが深くはないので、ほとんど泳げる人はいない。それを踏まえて、最初の一歩からだ。


子供は身長差が大きいので、子供プールの片方を浅く、反対側を深くしてある。背の順に並ばせて、浅い方へ小さい子を。準備運動をした後。プールサイドに腰掛けて足を水につけ、まずはバタバタ、足で水を蹴ってみる。


キャキャ!と子供達は、水をバシャバシャするので楽しそう。アルディ王子とエフォールは、慎重にバタ足している。

次は胸に水をかけ、順々に水に入る。

エフォールは、従者に支えられながらだが、すとんとお水に入って、そうして。


「あ、水の中、なんだか立てる!」


ビート板を持てば、従者なしでも、浮力で立っている事ができた。


「それでは、歩いてみましょう。ゆっくり向こうに行って、帰ってきますよ。」


じわり、じわり。

足を動かして。


「あ、あるける!水の中、歩けるよ!」

「やったね、エフォール!」

うん、とアルディ王子と頷き合い、ふわ、ふわ、足を前に出す。


水はキラキラして子供達を誘う。

水に顔をつけて、目を開く。

水底に落としたビー玉を、潜ってとる。


水の中は、外よりも、ずっとエフォールにとって動きやすかった。

自分が行ってみたい方へ、自分で行ける。

それがこんなにも、嬉しい。


ふふっ!と顔が笑っちゃう。


「エフォール様、あるいてるね!」

「すごいね、プールって!」

「ぼくも、ビーだま、とるの!」

「ニリヤは、水の中でおめめを開けるの、がんばらないとだよ。」

「がんばうよ!」


みんなにビート板を持たせて、顔はあげたまま、好きにバタ足で泳がせる。自由時間には、ニリヤはあぷあぷしつつ、目をつむって底の方までもぐったり、ジェムの背中にロシェが掴まって移動したり、アルディ王子が、トンッと壁を蹴って、すいーっと器用にお魚みたいに水の中を進んだり。


「はーい、休憩でーす!みんな上がってねー!」

「「「はーい!」」」


「うわ、からだが、重い!」

「おもたいー!」


従者に掴まって、プールサイドに上がったエフォールも、陸の世界での身体の重さに、全身を纏う筋肉を動かした気持ちよさと気だるさに、はふはふした。


子供達は、プール側が用意したレモネードを、小さいコップで一口、ごくんと飲む。


「私、水の中のが、うごけるみたい!ずっとお水にいられたら、良かったのになあ!」

「プールで動けるようになったら、段々外でも歩けるよ。がんばれ、エフォール君!」

竜樹が応援する。

「うん!」

それはそうと。

「アルディ殿下は、すごく泳ぐの、うまいですね!」

「そうかな?えへへ。」


休憩が終わると、またパチャパチャやって、1時間くらい遊んで寮に帰った。

寮に帰ると、おやつのスイカを食べながら、みんなうつらうつらと。


「プールの後って、眠いよねー。」

竜樹の言葉に。

「ねむくない。」

「ねむ、ない。」


子供達は、コロコロし始めて、みんなでお昼寝。

エフォールも、初めて寮でお昼寝するくらい、全身を動かした快い疲れで、スヤスヤと。



王様と王妃様は、泳ぐのを教えてくれるコーナーで少し遊んで、大変楽しまれたらしい。

貴族にも、庶民にも。この夏、温水プールは、熱い遊び場となって、大繁盛した。

もちろん、リハビリ目的や、喘息の病気を持つ人達にとっても、いい運動になり、気分転換にもなった。

エフォールもアルディ王子も、年間パスポートを買って、ちょくちょくプールに行くようにした。


「ししょう、ぷーるかーどに、はんこください。」

「どれどれ。ニリヤはー、お水の中で、おめめが開けられるように、なりましたか?」

「す、すこし。いっこ、くらい、ビーだまとれる!」


ではでは、はんこ、ぺったん!

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