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料理長と小麦粉と

厨房へ向かう。

途中、すれ違う侍女さん侍従さんなど仕えてる職務の人も、朝早いから(体感。スマホの時計がこちら時間に合ってるかわからない)貴族ぽい人はあまりいないが、稀にいる文官らしき人々も、そして騎士兵士の皆さんも、全員微笑しながら目礼してくれるのである。

返しながら、ちょっといい感じ、と竜樹はほっとした。挨拶で話しかけられるのも大勢だと疲れるし、まだ分からない事ばかりで何を話していいかもわからない。でも無視はなんか寒い。ちょうど良い塩梅なのである。

人柄が良いお国なのかなあ、そうだと良いなあ。店員さんに挨拶しなくても大丈夫な国出身の竜樹だが、都会出身ではないので、割と人との距離は近い。


ミランが案内しながら、厨房に辿り着くと、まずはバーンと扉を開けて大声で言った。

「ギフトの御方、竜樹様が参られました!お話して下さるそうです!料理長、手が空いたらご挨拶を!」

アワワ。

仕事中!な料理人達が、ストップ掛けられた。一瞬目を見開いて、あたふた礼をとり、また一瞬で仕事に戻った。そうですよね。朝ごはん準備中ですよね。火も使ってるしね。


「料理長の手が空くまで、こちらで待ちましょう。賄い食べる用のテーブルですけど、こちらなら料理人達の様子も見えますでしょう。」

ミラン、忙しい料理人さん達の暇な時で良かったんだよ。こっちは、ほら、のんびりなんだからさ。囁くが、ん?すみません聞こえませんでした!何ですか?と大声で返ってきた。

そうですよね。厨房、炒める音や水音で、割とうるさいですよね。そしてミランは、お淑やかそうな見た目だけど、マイペースなんだね。


「お待たせしたね。俺が料理長のゼゼルだ。話とは何かな。」

白髪に茶褐色、珍しく短髪強面のイケジジ。短髪なのは職業柄だろう。料理人達は皆そうだ。料理長は穏やかそうだが押し出し強い。偉い人って穏やかそうでもオーラある。あれ、王様は?

朝食の準備も終わり、ミランが料理長と、片付けの終わった料理人達から賄いテーブル席に着く順にお茶を出す。


「小麦の話なんです。こちらの小麦粉って、全粒粉だけなのかなと思って。」

全粒粉て何?から始まり、スポンジケーキとは?の流れが再び。

「皮ごと挽いても食べられるし味があるから、皮を剥こうと思った事はなかったな。ふわふわのケーキとはそそられる。このすまほの絵も大変美味そうだ。是非作ってみたい。」

「ふわふわのお菓子って、薄力粉で作るんです。」

「薄力粉とは?」

ウィキ◯ディア巡りの旅である。一つ調べて、その中の単語を調べて、そしてまた永遠に続く。知りたい事が終わらないのだ。


「薄力粉は、出来上がりが軽く仕上がる小麦粉で、中力粉、強力粉とあります。パンに使うのは強力粉です。」

「軽く?そういえば産地によって膨らみや食感に、バラツキがあるんだよなあ。うちでは混ぜて均質になるように使っているが、そうか、軽いのは軽くするものに使えばいいのか。」

混ぜたら、中力粉では?と思うが、割合が違うのかもしれない。

「そうですそうです。多分、産地毎にかもっと細かくか、品種の違いがあるんでしょうね。」

こちらではハードで焼き締める菓子しかなかった様で、軽く白い小麦のお菓子は、目新しい一品となるだろう。ニンマリする料理長に、

「でも全部白い小麦にしちゃうのは、勿体無いと思いますよ。全粒粉栄養あるし。これはこれで美味しいし。」

元からそうだったものには何らかの理由があるかも。この世界の味だし。

多分、生の野菜を食べないのにも理由があるのだろう。寄生虫とか。

竜樹は、あんまり改革派じゃない事を言い募った。

変えるのはやればできる。元に戻すのは難しい。変え続けて息を切らせる時代の流れは、のんびりさんを生きていけなくさせる。

だから、色んな物が残ってそれぞれ生きている状態がいいんだよね。

走り続けたい人もいるし、王宮はトップランナーとして引っ張って行く役割があるかもしれないが、伝統を残す役割もあるだろうと思うのだ。


「何だか今度の御方は、慎重なんだな。勿論伝統ある味は残していくさ。言われなくても求められる。そしてそれ以上に新しい技術を欲している。」

料理長はニヤリと片頬を引き締めて笑った。この世界の人は、良く微笑む。微笑みの国ってあったよね、印象が良いのは、好感度上がると思います。


「それじゃあ、白い小麦粉をまずは、えっとどうやるのかな。」

スマホスマホ、調べ始めるが。

「魔法で出来るかもですよ?」

と料理人の1人が口を挟んだ。


何と。料理人さんは魔法が使えるのだそうである。そして、小麦はここで挽いている。皮ごと。挽きたて小麦使ってんのか!麻袋に詰められた小麦粒(皮つき)をボウルに入れ、料理長がウム、と頷く。料理人さんは受け取って、「風の魔法かなあ。」手をかざす。


シャパパパっ。


「出来ました。」

うん、剥けた皮と中身が混じってるけどね。


それからどうやって皮と分けるか試行錯誤し、そういや胚芽も取るんだった、てことになり、男どもがあーでもないこーでもないやりくりした結果。


まず皮を剥く。ザルに混ざって皮と身が出る。ザルをふわっと上下に振って、空中に中身を浮かせる。風の魔法で横から皮だけ飛ばす。その後胚芽をとり、ちょうどいい目の篩でこす。

これで二種類の粒と皮ができた訳である。


「皮も挽くと使えます。家畜の餌にもなるし。胚芽は栄養満点です。」


うわー白い粒から白い粉〜!

テンション上がった男ども。

3時のおやつがこの世界にもあるので、それに合わせて仕込みをする事になった。

しかし、その前に昼食である。

料理人達は切り替えて食事の支度を始めた。

竜樹は、赤身の肉に脂身を少し足して、叩いて丸めた簡易ハンバーグを作ってもらい、全粒粉パンに挟んで、芋を揚げた。食べたかったのである。弟コウキが焼いちゃったハンバーグが。

玉ねぎ入れたりパン粉入れたりは、次回。料理長に暇な時間にレシピ見せますね、レシピサイトに投稿したやつ。スマホを傾け写真を見せる。

「その文字、こっちのじゃなくて全然読めないから、説明してくれよな。後で。」

昼飯は部屋に戻って摂ることにした。






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