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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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買ってあげてよ



ボンとロビュストは、生き生きとお店を切り盛りし始めた。

ニリヤが描いてもらった事により、注目されて、似顔絵描きの依頼が、ポツポツと来だしたのだ。ロビュストという、子供が描いてくれるのも微笑ましく、また同じくらいの年齢の子に、親しまれた。

既に描いてある、風景や花などの植物の絵はがきも、女性を中心に、人気である。

ボンの油絵も、様々な雰囲気の大人のお客さんに、見てもらえている。パッと見て派手な絵ではないが、だからこそ、家に飾るのに相応しいと思わせる、なんとも言えない味わいがある。


ボンの絵、悪くないじゃないか、と竜樹は思って、微笑みかけた。

ボンは、絵に描いた風景の土地の話などを、お客さんに説明しながら、チラッと竜樹を見て、照れくさそうにした。


「また肖像画工房の工夫の件や、美術館の事なんかで、相談や進展があったら、教えてね。工房に、テレビの取材もしなきゃだし、後で打ち合わせしようね。こちらからも連絡します。」

と言い残して、竜樹達はお暇する事にした。お店が順調だと、たむろしてたら邪魔にもなる。


竜樹やオランネージュ、アルディ王子にジェム達と合流した、ニリヤ達子供報道員(+ニュース隊のスーリール達)は、今度は水着のお店を見に行くというので、みんなで行く事にした。

「水着のお店を見たら、教会の屋台でたい焼き買おう。それで、他にも何か見繕って、本部でお昼にしような。サンとネクターにも差し入れしてやろう。オランネージュも本部で昼飯でいいか?」

「いいよー!屋台ご飯、楽しみだな!」

「「「楽しみ〜!!」」」


道中、食べ物の一般参加の出店を気にしつつ、面白そうなお店もひやかして。


食べ物は、焼き菓子やドライフルーツなどの、乾いた感じのものが多く、貴族ブースでは家の料理人が作ったものを、その家の子供がラッピングして売るものが流行っていた。

一見どれも似ているが、その家のレシピがあるので、結構みんな楽しんで買っている。

平民達も、今日は身分差でのお咎めなしとの決まりに、おっかなびっくり貴族ブースに足を踏み入れて、焼き菓子などを買っては、嬉しそうにしている。

誰かが、見本を一つ広げて売り始めたら、それはいい!と、真似をしだして、店を開きながら、工夫をしていくのも楽しい。


もういらなくなったおもちゃを、説明しながら売る貴族の子供。

また、貴族出店ブースでのいらないものは、一つ割れて数が足りなくなった皿や、カップ、セットだったのに1本行方不明のスプーンやフォーク。まだまだ綺麗で着られるが、成長したり流行遅れになって売りに出す事にしたドレスや靴などがあり。

皿やカップは、セットが欠けているだけで、物はいい。気に入れば平民にとってはすごくお買い得だ。ドレスは工夫して布をとれば、平民の子供のよそゆきになる。レースの端切れ一つとっても、素敵に変化させられる。


そこかしこに、商人達もちらついて、プロの目から、ゆるく子供店主がお安く出した、お買い得品を買う姿もあった。

プロの人にはほどほどにして欲しいな、と竜樹は思ったが、売れた貴族の子達は嬉しそうにしているので、あまりにも酷く買い叩いたり漁ったりしなければ、次回もお目溢しだな。と、脳内のお知らせする事メモに、竜樹は記しておいた。


見ながら歩いて、貴族ブースと平民ブースの境目の外縁にある、デザイナーのフィルさんのお店、シェリーの出張店舗にたどり着いた。

女性客が2列、平民と貴族とに分かれて、大勢並んでいて。待っている間、数台あるタブレット型の水着カタログに集まって、きゃあきゃあ釘付けになっている。付き添いの男性は、うん、一緒に女性の買い物行くには、忍耐力いるよね、という顔していたり。中には、男性とタブレットカタログを見て、どんなのがいい?なんて囁き合う恋人達も。


スーリール達が取材の許可取りにまずはフィルに話しかけ、オッケーが出た。スーリールがインカムに話しかけ、編集とのやりとりをする。中継を繋げる準備だ。

待っていると、テレビでは吟遊詩人の歌が、ちょうど良く切れて、パージュが、それではここで、子供報道員たちの中継です!と繋いだ。


テレビカメラがお客様から、竜樹に気づいたフィルにパンして、ニリヤ達が、しゅざいおねがいしま〜す!と声を揃える。

ちょうどお客様がきれた所らしく、いそいそ来るフィルに、竜樹は聞いてみた。何故か竜樹も取材班になってしまった。

「フィルさん!水着の売れ行きは、いかがですか?」

「竜樹様!盛況で、ありがたい事ですよ。初めての事づくしで、私たちも張り切って販売や予約を承っています!」

ふむふむ、とマイクを持って子供報道員ニリヤ達が頷き、子供新聞記者のジェム達がメモをとる。

それに、フィルがニッコリ、笑いかける。取材ですね、よろしくお願いします、と。


「待っている間、カタログ見られて良かったね。テレビもあるから、ただ待つより、楽しんで待てるね。」

竜樹が話の取っ掛かりを作る。


「かたろぐ、はんばい!みんなみてるやつ。」

「カタログって、水着のしゃしんがいっぱい見られるまどうぐですよね。」

はい、それが。と、苦笑いしつつ。

「待つ事に苦情が出ないのは良いのですが。皆さん、カタログを見ながら、大体決めてから販売ブースに入られるんです。でも、実際の水着や布を手に取ってみると、想像と違った、とおっしゃる方も多いんですよ。なかなか、カタログ販売というのも、難しいのですね。」

ただ、欲しい感じのものを、大まかに絞っておくには、良いみたいです。


「なるほど〜。」

「それに私達も、お客様の肌色や体型に合う色柄をおすすめしたいですから、あまりハッキリ決めて即決なさると、何となく拍子抜けしてしまう、という事もありまして。」

お探しの物に、こちらからのご提案も合わせて、お持ちしたりしていますよ。


ふむふむ。へー、と子供報道員。


「どんな、みずぎが、にんきですか?」

はい、一番人気をお持ちしますね。とフィルが、すすす、と店の中を泳ぎ、幾つか商品を持ってくる。

「貴族の方には、中は新しい大胆な柄物のビキニ、明るい色が人気です。上に羽織ったり履いたりするラッシュガードは、竜樹様が見本に見せて下さった黒い色のものは、デザインの段階で人気がなくて、色とりどりなものにしています。ビキニに使われている色の内の一色と合わせると、統一感が出て、素敵ですよ。」

「おはなのがら、きれいね。」

「貴族のじょせいの水着は、上と下に、ながそでとながいズボン?をはくんですね。」

「そうなんです。腕や足を見せるのは、はしたないとされますからね。」

「へいみんの、じょせいのみずぎは?」

「この、膝上スカートの、ワンピースが人気です。柄は、小さな小花柄なんかが良く出てますね。上は肩が出ますが、ちょっと半袖の上着を合わせる人が多いです。下には膝上のショートパンツを履きます。チラリとショートパンツが見えるか見えないか、くらいが、色っぽくて、人気なんですよ。」


ちなみに男性用は、生地が高機能で高価なものは貴族に、お手頃なものが平民に出ていますね。柄物より、ワンポイントが入った黒や青などの、シャープなものが売れ筋です。

ピッタリしたものではなくて、腰を紐と伸縮性のある布で縮めた、ゆるみのある半ズボンですね。


「しってる!ぼく、かってもらったの。あさって、ぷーるびらき、ね!」

「俺たちも、かってもらいました!くろいのに、名前いり。」

「楽しみなんだ、プールびらき。名前も、たのむと入れてくれるんですよね。」

「はい、そうですよ。」

「おねだんは、どのくらい?」

「貴族の方は、大抵オーダーメイドですから、生地やデザインの組み合わせ次第ですが、平民の女性用は、銀貨5枚くらいの価格帯が売れていますね。川遊びにも使えますし、長持ちしますから、お高くはないと思いますよ。平民の男性用は、布地も少ないので、銀貨3枚いかないくらいです。」

「じょせいようのが、たかい!」

「男性が一見得なようですが。男性と一緒にご来店のお客様は、一緒に選んで男性にプレゼントに買っていただいたりと、結構男性もお買い物を楽しまれておりますよ。」


子供達の視線が、ハッと竜樹に集まる。


「竜樹父さん、ラフィネ母さんに水着かってあげた?」

「ん?」

「かってあげた?」

何だい子供たち。その問い詰めるかんじは。


「いや、一緒に行くから買いますか、ってちょっと言い出せなくて。」

竜樹は何となく、ラフィネにお色気が絡む事を言い出しにくいのである。いや、別に、一緒にプール行くだけだから。別にお色気でも何でも、なんだけど。

あの、小さな女の子のような、不安な顔を見てしまったから、かもしれない。


「ダメーかうのー!」

「買わなきゃ、ダメ!」

「可愛いの、かうの!」

ブーブー!

かうー!かうー!


「えーっと。わかった、わかりました。今日お昼から、お店の手伝いしなかった小ちゃい子組を連れて、本部にラフィネさんも来るから、水着みてもらおう。」

「ぷれぜんとだよ。いっしょえらぶ。」

「絶対だよ!」

「姫さまにまけてらんないんだからね!」


姫さまと勝負はしてないと思うが。ラフィネさんは。


「ひめさま?がいるの?」

姫さま話の時にいなかったニリヤが、ジェム達に聞く。

「いるらしい!竜樹とけっこんしたら、こまるだろ!?姫さまは、俺たちの母ちゃんには、ならないだろ。やだもん。」

「やだー。」

「ししょう、けっこん、ラフィネ母さんとしないの?」


何でみんな、うるっとしているの。


「竜樹お父さんは、浮気はしません。安心してください。」

大丈夫だよ。

ラフィネが、どう思ってるかは分からないが、お母さんを楽しくやっていてくれていると思う。竜樹だって、お父さんをやめるつもりはない。

だったら、心配する事は何もないのだ。


「さあ、ほら、テレビの取材だよ。午後も水着を買いに来ますね、フィルさん!ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました〜!!」」」


竜樹はテレビで、何となく自分のお相手がいる事を宣言した、と、まだ気づいていない。




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