ギフトの御方
ギフトの御方とは。
たまーにこの世界に迷い込む、他の世界から来た人の事である。他の世界から来たから、見方がこの世界に染まってなくて、面白いそうなんである。
役に立つ事も立たない事もあるが、概ね発展に寄与する。働き盛りや知識や技術に富んでいる人ばかりじゃなくて、年寄りだったり、女だったり男だったりその間のファジーな性だったり、例えば子供で実現力に足りなくても、見方を変えてくれるだけで幸福を与えてくれるものとする。
中には犯罪者とか危ない思想の者がいなかったのかな、竜樹がうーんと唸れば、今までは大凡、性格や貢献度に違いはあれど、平和に生きて、そして死んでいったそうである。
そう、元の世界には帰れないのだ。
なぜなら、どうやってこちらの世界に来たかわからないから。
誰が悪いでもなく、事故と言ってもいい。だけども、ある程度フィルターがかけられているのかもしれない、世界渡りには。暴れたり拗ねたりしない、都合のいい人ばかりが来るなんて、ちょっと考えづらい。神様、お願いだ、帰してくれ。祈っても、届かない、とは誰も言わないが、ゴメンねの表情しながらも、もてなすからねの体制、それがこちらの世界なのであった。
「ギフトの御方は、何物にもとらわれず、自由に行動していただきたい。その手助けはこちらでするし、予算も組んである。あまりにも常識的に不味い事は困るが、その時は事前に止めさせていただく。だから何をするにも相談して欲しい、というのがこちらの意向です。」
イケオジ宰相の言葉に、王様が、柔らかく微笑み頷く。
この世界の、そしてこの国の常識、わからないよね。
竜樹がまた、うーんと唸れば、その為にお付きの者を用意しましたとの事である。
「マルサと申します。」
腰に剣をぶら下げた騎士、茶髪にたれ目。なんとなく王様に似て、ひょろりと長い。髭はない。
「マルサは私の弟である。王弟だな。騎士団の特別顧問となっている。武に秀でているから、竜樹殿を守る役割も持つ。常に付くから、何かあれば遠慮なく聞いてくれ。」
おお、王弟。恐れ多い。
竜樹がよろしくお願いします、と頭を下げる。こちらこそ、と笑う顔は、裏が無さそうで人懐っこかった。
あともう1人、生活に関する従者をつけましょうね。との事で、そそそと前に出てきたのは水色長髪を後ろで結んだ、これまた青年である。
男ばっかりな、とも思うが、異世界で見知らぬ女性に囲まれるのもなんか違う、やりづらいかもしれない。物語にでてくる、ハーレムなんて、よほどマメな男でなければ維持できないだろう。
「ミランと申します。」
ミランはそっと笑うと、従者らしく低い礼をとった。
「では竜樹様、細かい事は追々、この王宮で暮らしながらマルサ様やミランに聞いて、知っていって下さい。何をしてもしなくても、基本的な生活は保証致します。ご安心下さい。」
宰相の言葉に、長たちも頷き、竜樹は周りを見渡して、再度よろしくお願いします、と頭を下げた。
うむうむ、とウェルカムな中、竜樹はミランに案内されながら、竜樹の部屋とされた王宮の一室に下がったのであった。
謁見の間を退出する時、魔法院長官のチリが、ああぁーとこちらに手を出しているのが、ちらっと見えた。