嵐桃会議
「俺の元いた国では、子供が少なくなっていて、高齢のお年寄りが多かったんです。お年寄りを少ない若者で支えなければいけなくて、色々と問題がおきてました。」
それは人口頼りだけではない、幾つもの解決法が必要だろうけれども。竜樹はこちらの世界に来てしまったので、こちらの世界を豊かにさせたい。
「ふむ、ふむ。」
ハルサ王が、マルグリット王妃が、顎や頬に手を当てて頷く。
「この国が子供を育てやすい国になれば、安心して子供を産み育てることができます。それは、男女が安心して恋愛できるってことでもあるし、安心して働けるってことでもある。未来のこの国のさまざまな事柄が、上手く回るひとつの要素になり得る、と思います。もちろん、それだけではなくて、関係各所で努力しなければだけれど、単純に、ここで子供を育てたい!って国は、住みやすくて豊かな、いい国でしょう?」
「ししょう、こそだて、したい!」
「ニリヤ、私達には、まだはやいよ。」
「ツバメを育てたらいいかも!お兄ちゃんだもの、私達は。」
そうだね。
ニコリ、と竜樹は王子達に笑って。
「一緒に育ったらいいよね。ツバメを、俺の養子の子を、俺たちは、協力して育ててますけど、そんなふうに、結婚した人産んだ人だけが育てなくてもいい。」
俺の元いた国の、昔、江戸時代ってのでは、長屋って集合住宅に住んでる人達の間で、子供の面倒を暇な人で見あったりしたそうなんです。
色々な人に助けられて育った子は、幸せに近いと思いませんか。
「竜樹様も養子でいらしたのよね。」
マルグリット王妃が、ニコッとして。
「はい。俺も色々な人に育ててもらいました。無事に大人になって、今も周りが賑やかで、幸せだと思います。」
竜樹は、ニコニコと返した。
「教会には掛け合ってみている。それから、ちょっと部門違いになるが、主神殿のノノカ神殿長は、竜樹殿と話をしたいようだ。」
「幾らでもしましょう。」
竜樹はこの件では、出来ることを何でもやろうと決めている。
「それから、片親や、保護者が昼間いない子にだけしか教育ができないのは、おそらく他の子達に不利になるとして、反発を受けないかな。」
「あぁ、今でも、ジェム達、新聞売りの子供達が、羨ましがられているそうですね。」
「だからだな。」
ニヤリ、とハルサ王が笑う。
「いっそ、子供みんなに、教会で基本的な文字と計算などの勉強を教えたらどうかと思うのだ。」
ざわわ!と会議場がざわめいた。
そんな事できるのですか、と出席者達で話し合っているが、竜樹にはおなじみの。
おお、義務教育!である。
まぁ、この話は、教会の関係者とも話すべきだから、今日はひとまず置いておくとして。
「他に、嵐桃の事で何かあるか?」
は、はい。と、末席の方で、恐る恐る手を挙げた文官がいた。オドオドして、周りからの何だ?という視線に小さくなっている。
ホロウ宰相が、話してみなさい、と促す。
「わ、私は、王宮内の、民からの手紙を振り分けて、内容を記録して、整理する係をしています。ドネと言います。」
う、うん。と咳払いをして。
「民からの手紙の中で、果物の産地や、農家からのものに、未熟果や落ちた果樹の、家庭内での利用法が書かれているものが幾つかありました。」
他の話題に紛れていたのですが、チリ魔法院長官が、でーたを?検索して?すまほみたいに?読んだりできる、図書館のカード検索しすてむを作った時のものを応用して?とにかく、届いた手紙を、あるキーワードで検索できるんです。
「それで、これ、使えるかな、と思って、持ってきたのですけど。手紙の写しです。」
紙が回されてきて、竜樹もスマホで翻訳しながら読む。
梨の未熟果は、時期によっては追熟できる、とか、メロンの未熟果を漬物にする、とか。
「すごい!」
ガタタン!と竜樹は立ち上がる。
え?て感じの会議の参加者達だが、これって、すごい事なのだ。
「俺、思い上がっていました!1人の情報だけで何とかなるなんて、あるものか!この国の、みんなに聞いたら良かったんだ!ドネさん、ありがとう!」
おお、おおおお!
参加者達も、やっと理解して、ホクホクと紙の資料を読み込む。
「みんなが、たすけてくれる!」
「地方のじょうほう、大事!」
「手紙、貴重だね!」
王子達も、フンス!と鼻息荒くして紙を見た。
「テレビで、みんなから利用法を募集してみましょう!この国の問題を、この国のみんなで解決する。やっぱり、それが一番いい。癒しの魔法の時もそうだったけど、知らないだけで、沢山いい情報が埋もれてる!」
そうしよう、という事になり。
「だけど、そのいい情報を掘り起こすキッカケになったのは、竜樹様の思いつきですよ。」
と、文官ドネは言って、はにかんだ。
教会と神殿のちがいは。簡単にいうと
教会は、信徒達のために教義を広めたり、儀式、礼拝をする場所
神殿は神様をまつる場所
なんですって。
調べるまで全然知らんかったです




