表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/692

クルーの涙

「昨日は、嵐なのに1人にしてごめんね、アルディ。」


寮でみんなと朝ごはんを終え、オーブの朝ごはんも終え、ネクターが、寮までやってきたアルディ王子に謝った。

「さびしかった?」

ニリヤが、悲しげな顔して聞けば、オランネージュも。

「誘おうかと思ったけど、安全を考えて、ご遠慮くださいって、ワイルドウルフの護衛さん達にも言われちゃったから。」


アルディ王子は、ううん。と首と尻尾を振って。

「嵐の間、ワイルドウルフのお父様や、お母様、兄様達とお話してたんだ。いっぱいお話できたし、こちらについてきてくれてる、ワイルドウルフの者たちも、家族とお話させてあげられたから、良かったよ。」

どうやらまったりと、有意義に過ごせたようだ。


アルディ王子は、片方の耳をピクッとさせ、チラッと竜樹を見て、それからついてきている護衛の狐獣人、クルーを振り返って、見た。

アルディ王子を、金食い虫だと馬鹿にしていたクルーは、何だか。

今日は、顔色が悪くて、トースト色の耳も、しゅんと落ち込んで、アルディ王子の後ろで大人しく護衛をしている。


「竜樹様。あの、お願いがあるのです。」

アルディ王子が、竜樹を見上げて、手を組んでお願いをする。

「うちの護衛の者の家族が、両足を怪我して、動かないそうなのです。その家族の者は、辺境の騎士で、ワイルドウルフの辺境騎士団の団長をやっています。身体だけでなく、頭脳も秀でた、代わりのいない職業なのです。普通の治癒で治らないから、多分、足の神経がやられてるんだと思うのです。」

「うん。それは大変だねぇ。」


それで、それで。

「こちらに呼んで、神経を繋ぐ魔法を、かけてあげたいのです。もちろん、ハルサ王様にもお願いをします。カラダすきゃなーを作った、竜樹様にも、どうか許してもらいたいと思って。ワイルドウルフにその医療が来てからでは、その者が治るのに、時間がかかりすぎてしまって、まだ後継が出来上がっていないので、混乱しそうなのです。」

「うんうん。1人に寄りかかった組織は、そういう時に弱いよねぇ。もちろん俺は、王様が良いって言えばいいよ。」

竜樹がツバメの背を、ポン、ポン、とたたきながら応える。


いきなり、クルーが、ガバッと頭を下げて礼をした。


「ありがとうございます!」

ふるふると、握った拳を震わせて。


「クルーの家族なんだ?辺境騎士団長は。」

「あ、兄です。引退して、領地の経営一本をやる事にするから、私に帰ってこいなどと言って。わ、私では兄の代わりは務まりません!それに、あんなに勇猛だった兄が、歩けないだなんて!兄を、兄を、どうかお助けください!」

ポロリ、ぽたっ。礼をしたままのクルーの下の床に、一粒、雫が落ちた。


「うんうん。王様も、ワイルドウルフの中がモメるのは困るだろうから、きっと許してくれるよ。医療を受けに、アルディ王子がこちらに来ていて、不運な中にも運が良かったね。」

「はいっ!」

ビシッと背筋を伸ばして、潤んだ瞳でクルーはアルディ王子にも一礼をした。


クルーにとっては青天の霹靂であったろう。そうして、アルディ王子を馬鹿にしていた気持ちが、きっと変わったに違いない。ピンと張った耳と尻尾で、アルディ王子の後ろについて、護衛を真面目に務めるらしかった。


「それじゃ、父上に会えるか確かめてみよう?」

オランネージュが、アルディ王子の肩に手をやり、ポンポンと叩く。

「いこっ、いこっ!」

「父上のところ、私たちも行くよ!」

「電話でお父様とも話ができるように、持っていくね。」

わきゃ!と湧き立つ王子達。

「午前中はお勉強もあるだろ。俺は、新聞売りの子達を送って行きがてら、街の様子見てくるよ。午後また寮で会おう。エフォール君も来るかな?」

「嵐が止んだら、来るって言ってたよ!」

「ぬいぐるみ、持ってきてくれるって。」

「そりゃ楽しみだな。さぁ、みんな動き出そうか?ツバメは侍女さんに預けていこうねぇ。お留守番よろしくだよ、ツバメ。」

よいよい。


「サンも、行く!」

「サンも街に行ってみるかい?じゃあ手を繋いでな。他の子達は?」

「ぼく、ツバメとお留守番する!」

「押し花、やりたい!」

あいあい。了解です。


じゃあ新聞売りの今日の係とサンと、手を繋いで、街に出かけてみよう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ