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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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繋いだ日

エフォールの傷ついた神経を繋ぐ治療の日が決まった。


竜樹も、癒しの魔法が使えるルルーも、それから今回担当する、再生の魔法が使えるというリナーシタという女性の魔法使いも、国の一番大きい治療所の主だった治療師が、みんなで準備をした。


竜樹は、繋がった後のリハビリの情報を検索しまとめ。

ルルー達、治療師は、チリが作った身体の中を見る事ができる魔道具の使い方を、治療にきた患者さんに協力を得て練習し。

チリは、魔道具の具合を聞いては、修正作業を行なった。


動かなくなってしまった、動かさないでいる身体は、関節が固まってしまうので、それを何とかする為に協議と対策を考えた結果、解しの魔法が開発された。壊す、再生する、それを同時にやるという、難しい施術だ。

また、解しの魔法は、痛みが伴うため、中毒性のない痛み止めの薬湯を飲みながら、そして広範囲にいっぺんにはできず、ちょっとずつ、マッサージやリハビリと共に行う方が良さそうだった。


そして、とうとうその日が来た。


「エフォール君、よく来たね。」

竜樹が治療所の入り口で出迎える。


今日の日のために、そしてこれを機に。真っ白だった殺風景な治療所内の施術室も、リラックスできるよう、淡いグリーンにと、温かい雰囲気に変えたり。薄着になる患者さんに、ひんやりした空気を感じさせないよう、空気を温める魔道具を入れたりした。


「エスポワールさんも、お付きの方たちも、よくいらっしゃいました。治療師の先生達も、エフォール君を待ってるよ。」

「本日は、竜樹様まで来てくださって、ありがとうございます。エフォールも私も、ちょっと緊張していますが、良く説明を聞いて、その都度相談させてもらったので、ありがたかったです。」

「今日、私もがんばります、あの、これ、持ってきたから。」


エフォールが、竜樹に見せたのは。

かぎ針編みの、片手で握れるサイズの、クマちゃんぬいぐるみ。

藁色のベースに、飴色のボタンの瞳。

手足は細く長く編まれて、たらんと気だるげなのが、可愛らしい。


「凄いね!これ、エフォール君が編んだの?」

「はい、編みました。楽しかった。」

ふふ、とクマちゃんを頬に寄せて。


「竜樹様が、貸してくれた編み物の魔道具本、すごく良くて、私、編み物大好きになって。このクマちゃん、今の私なの。歩けるようになったら、もっと足とか、太く作りたいの。今日は、一緒に頑張ろうと思って。」

「そうなの。いいねえ!」

治療所の中へ入りながらおしゃべりする。


「今度、フリーマーケット、っていう、みんながもう使わないかなーとか、作ったものとかを持ち寄って販売したり、買ったりする催ししようと思ってるんだけど、そこにお店が出せるんじゃない?子供達が主体の催しだから、あまり高いものは無理で、ちょっとしたものとか。」


「わ、私も、お店していいんですか?」

エフォールは、瞳をキラキラとさせる。自分の作ったものが、誰かに、買ってもらえる?


「もちろんいいとも。楽しい事も、いっぱいやっていこうね。」

「はい!」


施術室の、ドアを開ける。

治療師達が、こちらもちょっと緊張して、でも微笑んで、

「「「いらっしゃい、エフォール君。」」」

と迎えた。


身体の中を見る魔道具は、洋服が何であれ通すのだが、足腰の様子を直ですぐ見られるようにと、締めつけたものを着ていない方がいいだろうと、下着の上に丈が長い施術着に別室で着替えてもらう。

エフォールは、ベッドに寝て、ギュッとクマちゃんを抱きしめた。


「寒くない?緊張するね、エフォール君。」

女性にしてはしっかりした体躯の、30代1児の母、リナーシタが、施術の準備をしながら、にこりと話しかける。

「寒くないです。少し、緊張します。」

「大丈夫、痛くないし、今までの診察で魔道具で見るの、何回もしているから、すぐ終わるよ。ここの、横の画面にも、身体の中が映るからね。説明しながら繋げますね〜。」


身体を見る魔道具は、リナーシタの手元にある画面はタブレット型で、そこから無線で、身体にくっつける、レジのハンドスキャナーの形をした部分がある。

補助する治療師が、つつーと身体をスキャンする。

画面には、エフォールの身体の中が、鮮明に映っている。スキャナーについているボタンを押したり戻したりして、ちょうどいい所を止めてみると、神経の白が、ふち、と切れている所があった。

ぴっ くるりと画面に白い棒で丸を描くと、エフォールが見ている大きな画面の方も、神経が切れている所に赤い丸がついた。


「はーい、ここ、繋げていきます。ゆっくりいきますよ。」


リナーシタが手をかざして、ムムッと魔法を放つ。じわ、じわ、と、切れた神経の端が、両端から伸びていく。

じわ、じわ、じわり。

やがて。


ピタッ


くっついて結ばれた時、エフォールの腰から両足が、ビクビクン!と動いた。

「うわわ。」


「ふふ、動いたねえ、エフォール君。待ってね、念を入れて、完全に、くっつけるから、ね。」

むん。

画面では、しっかりと太く、神経が繋がっている。


「どうかな、足をちょっと触るね。触った感じ、しますか?」

「し、します!今まで、全然わからなかったのに、します!」


ここは?ここは?

順に試してみて。

足の指を動かしてみて、膝を動かして、そうして腰を動かして。

ほんのちょっとずつしか動かないけれども、だけれど、動いたのだ。


「あ、お、おトイレ、行きたい。今まで、行きたいの分かんなかったのに。ど、どうしよう?」

「大丈夫、行っておいで。トイレは出て右手に行けば、すぐにあるよ。」


付き人に車椅子に乗せられて、エフォールはトイレに。

そこで、大人たちは、ほーっと、息を吐いた。

「ひとまず、うまくいきましたかね。」

「これから、具合を良くみていきましょう。」

「ええ、そうしましょう。」


「私、トイレ、行けた•••!」

キイコロと車椅子を軋ませて、エフォールが帰ってくる。こちらのトイレは洋式だから、自分で座ってできたのだろう。

「良かったねえ!」

竜樹が言えば、興奮しきった顔で、エフォールは、

「私、絶対歩けるようにがんばる!今日から、マッサージと、リハビリ、ね!」

と意気込んだ。


「温水プールの工事、早く進めなきゃね。」

「私、みんなと泳ぎたい!おトイレできたら、プール、入れる。良かった。嬉しい!」

ベッドに寝て待っていたクマちゃんを、ギュギュと抱いて、エフォールは今日から、歩くためのスタートラインに立ったのだ。

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