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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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なんでもつくれる

エフォールが車椅子だから、トランプもすごろくも、机の上でやった。

ちいちゃい子は、大きい子がペアになってあげて。ババ抜きの後、7並べをやって。竜樹も混ざった。


「誰だ〜ハートの6を止めてるやつは〜!」

竜樹が唸ると、キャハハと子供達が笑う。

「私でした!あーがり!」

オランネージュが、ムフッとして、最後の1枚を出す。

「あぁ〜オランネージュ様かよ!やられた〜!」

「ヤラレタ!」

「ぼく、こんなにいっぱいもってるの。すごいでしょ!」

むふん、とニリヤが得意げに言って、あはは、うんうん、すごいねぇ、とみんなが頷く。

ここにも出せるよー。

エフォールも、ふふ、ふ。と笑って。楽しそうにしてるなぁ、と、竜樹も父親のエスポワールも、そしてエフォールのお付きの癒やしの魔法使いも、車椅子を押す付き人も、みんなニコニコとした。

アルディ王子は、エフォールと仲良くしたいようで、すごく気にしている。エフォールも、アルディ王子が何かと話しかけてくるので、和やかにお話しできてるようだ。


「は〜い、たまごぼーろとメレンゲクッキーが焼けましたよ〜!」

タカラが持ってきた。出来上がったお菓子は、大きなボウルに入れられて、ワゴンに載っている。


わーい!と、みんなが沸いて、ぴょこぴょこ跳ねたり、ぱちぱち手を叩いたり。

オーブンが足りなかったので、一部王宮の厨房にも頼んだから、運ぶ間に冷えている。

「味見だぞ〜。はい、ちいちゃい子から並んで下さ〜い!」

は〜い!とわちゃわちゃ並んで、竜樹に一種類2粒ずつ、手のひらに載せてもらう。


「•••ほんとに、お菓子、できた。」


エフォールが、手のひらのお菓子を、まじまじと見て、呟く。

じっと見つめていたが、そ〜っと、ぼーろをつまんで、口へ持っていく。


かしゅり。


さら、さら。


口の中で解けるぼーろ。

ほの甘さを、コクンと飲み込めば、じんわり、胸に広がった。


ポロリ。

「えっ、どうしたの?何で泣いてるの?どこか痛い?」

アルディ王子が、エフォールの頬に流れる涙を見て、焦って肩を叩く。


「•••初めて作れた。私も、お菓子、つくれた。」

今まで、私、みんなに色々やってもらうばっかりだったけど、私でも、つくれた。


ぐす、と涙を拭くエフォールを、アルディ王子は、きゅっとまん丸に目を見開いて、ぶん!と尻尾を振って。

それからぎゅぎゅ!と横から抱きついた。

「私も、何にも出来なかったの。何もできない子だって言われたの。でも、本当は、作れるの。私たち、ちゃんと、お菓子も何でも、作れるよ!」


ポロポロ。


アルディ王子のもらい涙に、子供達が集まってきて、美味しいよね、ちゃんとできたよ、俺たち、などと口々に慰めた。


「ほんのり甘くて、美味しいですね。」

エスポワールもほろり、涙ぐみながら、涙を飲み込みながら、息子の作ったぼーろを食べる。


「本当に、美味しい。」


竜樹は、何も言わずに、ニコッと笑った。


その後は、みんなで。蝋引きのペーパーに、ぼーろは3個ずつ、メレンゲクッキーは1個ずつ載せて、キュッとキャンディ包みにした。

明日の午後、アンケートに行こう!となって、エフォールは、初めてづくしで疲れちゃったら困るので、これで今日はお別れだ。


「また、遊ぼうね。」

「また、きてね!」

「またお菓子つくろうね!」

「私と、またお話してね。また、きてね。」

「俺たちとも遊んでなー!」

「「「遊んでー!」」」


「はーい!」

エフォールも元気に返事をして、寮を出て行く。

送るね、と竜樹はエフォールの横を歩く。タカラが後ろについて、何やら荷物を持っている。

頬を赤くほてらせて、エフォールは、お土産にもらった、作ったお菓子の包みを握っている。


「どうだった?失敗した?それとも成功だった?」

竜樹が聞けば。


「上手くしゃべれない時もあったけど、仲良く遊べた、と思います。私でも、遊べた。」

ふふふ、と笑って答えた。


「•••竜樹様。わたし、私。」

「うん、何だい?」


足の治療、してみたい。


「してみたいかい?」

「はい。•••みんなと、もっと遊んでみたい。努力してみたい。足がちょっとでも動いたら、って思います。」

父様、治療、してみてもいいですか?


「もちろん、いいとも。やってみよう。竜樹様、よろしくお願いします。」

「いえいえこちらこそ。お試し治療、受けてもらえて助かります。そしたら、後で相談して、神経を繋ぐ治療を受ける日決めようね。お試しとはいえ、多少はお金もかかるけど、そんなに高額じゃないから。」

「もちろんお支払いさせてください。」


竜樹は、一角馬の馬車を回した出口の所まで送ると。タカラから荷物を受け取り、差し出した。


「それから、これは、貸してあげるね。エフォール君、手先が器用みたいだから、これ、かぎ針編みの基本の本。この画面をタップすると、本が開くから。季節外れかもしれないけど、帽子とかマフラーが編めるよ。もっと、季節に合った、モチーフ編みをつなげたり、編み図を見ながら模様を編んだりできる、中級者向けの本も色々入ってるから。ぬいぐるみも編めるし。」


買ってダウンロードした、編み物の本が入ったタブレット型の魔道具。編み図を大きく見たくて作ってもらったものだ。


「編み物は、女の人がやるもののように思われてるけど、男もやっていいと思うんだ。一目一目、コツコツと編み込んでいくと、出来上がるところがいい。それに、精神的にも、穏やかに落ち着くしね。やってもやらなくてもいいけど、チラッと本見てみないかな、と思って。」

「ふわぁ。この帽子、かわいい。」

ページをめくり、見方を教える。ポンポンのついたニット帽。

かわいいでしょ?


「ありがとうございます!やってみたいです!」


お土産をたんと抱えて、エフォールは馬車に揺られて帰って行った。

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