同じに遊びを
黙ったまま、俯く車椅子のエフォールに、竜樹は、アルディ王子も、こんな顔してたな、と思う。
「友達になれるか、不安かな?」
コクン、と頷き、エフォールは続ける。
「私は、みんなと同じ遊び、できないから•••。それに、ぜんそくが何とかなってるから、兄様のお手伝いをするようになるために、勉強しなきゃで。」
ぽつぽつと、目を逸らして。
「遊べない?」
竜樹は、しゃがんで目線を合わせて聞いてみる。
「遊んでたら、遅れてる勉強が、もっと遅れちゃうから•••。」
ぱち、ぱち、目を瞑り、瞬きしながら、竜樹の目を見ない。
「エフォール君のお兄さんは、パンセ伯爵家の当主になる訳だろ?」
「•••はい。」
竜樹は、エフォールの、爪の先まで整った手を取って握った。
「そうしたら、エフォール君だって、色んな人と協力してお手伝いしなきゃだろ?大人になって、勉強は追いついても、人と接する勉強してなかったら、困るかも?だから、その練習をしてみないかい?」
ねえ、エスポワールさん。エフォールの父、パンセ伯爵に聞けば。
「•••そうですね。エフォールは、ぜんそくや足の事もあって、友達といえる遊び相手は、これまでにいなかったのです。エフォール、ギフトの御方様が誘ってくださるし、ぜんそくのアルディ王子殿下もいらっしゃるし、どうだろう。勇気を出してみたら?」
心配気にパンセ伯爵が促す。
エフォールは、黙って俯いたままだ。
「無理矢理はしたくないけど、今日は、午後、お菓子のたまごぼーろ作りと、メレンゲクッキー作りだから、エフォール君にもできるよ。人と接する練習だから、気を楽にして。それに。」
王子達と仲良くなる前のアルディ王子も、そんな顔してたよ。
「みんなと同じ遊び、したいんだよなぁ?」
ぎゅ、ぎゅ、と手を握れば。
ポロリ、と涙をこぼして、エフォールは。
「足が、動けばいいのに。だって、おトイレだって行けないし、は、恥ずかしい。お、同じに、遊び、できないと。」
友達に、なってもらえないかも。
ぐすっ、と涙を片手で拭いて。ギュッ、と一回、目を瞑ると。
「でも、でも•••練習だったら、失敗しても、いい?」
不安気な、でも逃げない、という強い瞳で、竜樹の顔を見た。
「いいともいいとも。大体、人と接するのに、100点満点いつでもできる人なんて、いないんだよ。最初は20点くらいから始めて、あとはなかなか良くできたり、普通だったり、失敗したり、俺だって今でも失敗するんだよ。」
ね、そうですよね、エスポワールさん。
「ああ、そうだ。私も今でもしまったな、という事があるよ。」
うん、と頷くエフォールを、ポンポン、手の甲を叩いてやって、さて!と、立ち上がる。
「エスポワールさんもご覧になっていきますか?みんなでお菓子作り。」
「はい、よろしければ。」
ニコリ、と笑った大人同士、そして、覚悟を決めた少年は、ゆっくりと子供達がいる寮に向かった。
寮には、小さな厨房がある。
子供達がみんなでお菓子を作るには、狭すぎるので、粉をこねたりするのは、交流室に折りたたみの横長テーブルを出してやっている。
その折りたたみテーブルも、竜樹がこんなの欲しい、と言って作ってもらったもので、便利だから売っていい?と何でも実現バーニー君に聞かれて、いいよーと竜樹は返事をしたから、催し物などの受付テーブルや、イベント事で使えるようになった。ぼちぼちと売れているようである。
「みんなーお待たせ。エフォール君連れてきたよ!」
お菓子作りーと、ワイワイしていた子供達が、うん?と入り口を向いて、こんにちは〜などと口々に言う。
「はーい、じゃあ、自己紹介。エフォール君から。」
「パ、パンセ伯爵家のエフォールです。よろしくおねがいします。」
戸惑いながら、ぺこり、と頭を下げて礼をする。
3王子達と、取り分けアルディ王子が、興奮した様子で、わちゃ、と車椅子を取り囲んだ。
「第一王子オランネージュです。仲良くしてね。」
「第二王子ネクターだよ。お菓子一緒作ろう!」
「だいさんおうじ、ニリヤです。あそぼ!」
「ワイルドウルフの王子、アルディです。私も、ぜんそくなんだよ!」
行こ行こ、こっち、と、取り囲んだまま手洗い場に向けて車椅子を促して。
ジェムは、「俺たちは、数多いから、段々に紹介するよー、エフォール様!とりあえず俺は、リーダーのジェムです!」とぺこり、礼をした。
「はーい、じゃあたまごぼーろ作るよ。まずは、たまごの黄身と白身を分けます。たまごぼーろは、黄身しか使わないんだよ。残った白身は、メレンゲクッキーに使うからね。まずは、俺がやってみせます。」
まずは、小さなボウルに、一旦たまごを割って。スプーンで、黄身をすくって、もう一個のボウルに移してね。
たまご割る時、ぐしゃってならないように、慎重にだぞぉ。コンコン、ぱかり、だよ。
きゃあきゃあワイワイ、たまご割り。
ちっちゃい子は、一緒にしてやって、なんとか白身に黄身が混ざらずできた。
黄身に、砂糖、片栗粉、ちょっとだけゆるめるためのミルク。
みんなで1センチの玉に丸めて。
「エフォール君上手いね!まるめるの。」
「ほんとだ!みんな同じおおきさ!」
「そ、そうかな。」
「ニリヤのは、大きすぎない?」
「むつかしいの。まるまる。」
王子達は上手くお話しながら、まるまるを作っている。ので、竜樹は、メレンゲを作り始めた。こればっかりは、子供の力ではできない。
メレンゲを、絞り袋から絞る所を、順番にやったが、ここでも。
「エフォール君、じょうず!」
「ほんとだねえ。エフォール君は、手先が器用なんだねえ。」
「そ、そうかな。上手くできてたら、いいんだけど。」
照れて、顔を赤くしているのに、横にいたアルディ王子が、私も、がんばるよ!ムフッと鼻息。
がんばろがんばろ!
「こら〜お話聞いたひとにあげるんだから、たまごぼーろの生地で、おもしろい形作らない〜。」
「はーい!」
てへへ、と子供達が笑って、まるまるを続ける。まぁ、粉こねたら粘土遊び、やるよね。
厨房までゆっくり持っていく。
オーブンで焼いて。
「焼けたら味見だよ。それまで、休憩ー。クッキーは1人2枚だよー。」
おやつを出してやり、交流室で待ち時間。トランプや人生すごろくを出してやり、ババ抜きなどをする。




