まつりのおわり
「はい〜シャンシャンシャン♪」
くるりくるりと手を返し、シャンッと手を打って、一歩進んで月を見て〜の、盆踊り。単純な踊りを繰り返すので、小さな子でもできて、好きな時に輪から外れて休めるので、気楽に楽しめる踊りだ。
王子達も一生懸命、竜樹の真似をして踊り、ニリヤが、キャハ!と笑っている。
串焼きの屋台ごと転移したから、親父は屋台買い切りとなって、そこで串焼きをし、踊り疲れた人が食べに来たり。オルビット伯爵ドネが、召使いに出させた飲み物のコーナーもあり。
屋台の煙もうもうと、お祭りムードで。
「何なんだ、これ。ち、ちちう、え?」
カンセが、飲み物コーナーで座っている父、ドネに、恐る恐る話しかける。
バタイユも、そして街のごろつきだった3人の家来も、カンセに合流して庭に出てきた。
「ふふ、ふふふ。カンセ、盆踊りだそうだよ。」
ドネが、目だけ笑ってない顔で、カンセに振り向く。
「ぼんおどり???なぜ、うちの庭で?それに一体、この大人数は?」
「それはお前が、よーっく、知っているだろう?」
ふふふ。
笑う父に、カンセは、ゾッとして後ろに一歩下がった。
まさか。まさか、コリエ嬢を呼んだのが、バレた?でも、そのくらいで、こんな顔するかしら?
こんな、今まで怒られた中で、笑ってるのに笑ってない、一番表情が怖い顔で。
さわ〜っ、と騎士団の騎士が、カンセ達を自然に取り囲む。
がし、と腕を取られて、カンセは声を上げる。
「なっ!お前達、なんなんだ!ここはオルビット伯爵家だぞ!俺を誰だと思ってるんだ!」
「あー、そこの3人と、手強そうな1人、それから弱っちそうな1人、確保したかー。」
「確保完了!捕縛します!」
マルサが、指示出ししながら、両腕を掴まれて後ろに回されたカンセに、ニヤリとする。騎士団員は、手慣れた様子で、カンセ達に縄をかけてゆく。
「奴隷契約したんだって?魔法使いのシャルムと?」
サーッ、とカンセは青ざめて。
「してない!してないよ!なぁバタイユ、してないよな!」
「してません。」
バタイユは、抗っていたが、カンセに呼ばれると、縛られたまま即座に返事をした。
「あいつ、バカだから、奴隷にしたとか言ってちょっとシメたら言う事きいたんで。」
「それにしちゃー、この手錠。魔法使いになかなか取れない手錠を、どこから手に入れたのかな、とか、色々聞くことがあるんだよ。カンセ君。」
ニヒヒ。
マルサが笑う。
カンセはジタバタするが。
「魔法使いシャルムが、王子達とギフトの御方まで転移で呼んじゃったのさ。お前の命令でだ。そうなると、いくらオルビット伯爵家といえど、次男を庇えないと言う訳で、お前達は連れて行くから。」
応援が来るまで、盆踊りでも見てなー。
「え、な、王子様、たち?ギフトの?」
「ちょっと悪い事しようと思ったら、思いの外大きくなっちまったな。獣人を奴隷に、なんて、ワイルドウルフの王子様が知ってしまっちゃ、きちんと調べてキリキリ吐かなきゃ、国際問題になるつっう話だ。」
「え、えええええぇ!!?バタイユ、バタイユ、俺たちそんなに悪い事してないよな!?ちょっと獣人脅したくらいで!」
「そうです、坊ちゃん!」
「脅すなって。」
バタイユは苦り切った顔をして。
「坊ちゃんは関係ない!俺が全部指示したんだ!」
「それをこれから聞くんだよ。」
どどん ど どん カカッ
「はい〜くるりと回して月を見て〜♪」
竜樹も王子達も子供達もお姉さんも。獣人の出稼ぎ冒険者パーシモン達も。いい感じにノリノリで、踊りを踊っている。
それはカンセ達を引き取りに、騎士団の応援がきて。
その後、竜樹達を迎えに来た、二頭立て一角馬のマイクロバス型馬車で、まずはお姉さん達を花街へ送り。
折り返した馬車で、ジェム達と一緒に王子達と竜樹が王宮へ帰るまで続いた。
串焼きの屋台の親父は、屋台を畳んで荷車にして、歩いて帰って行った。パーシモン達は、話しも聞いてもらってタダでお菓子も串焼きも食べられて、得したなー!とホワホワ小走りに帰る。
魔法使いシャルムは、被害者で加害者という事で、身柄は確保されたが縛られずに、騎士団と一緒に事情を聞かれに行った。
蝋引きのペーパーに、20本ずつ包まれた5束のお土産の串焼きは、寮の管理人夫婦や、撮影隊、侍従侍女達にとても喜ばれた。
「今日は、お疲れだったね、みんな。」
ジェム達の寮で寝ることになり、お風呂を済ませた竜樹と王子達。
疲れてムニムニ目の辺りを擦っているニリヤの、濡れた茶髪をクリクリと拭いてやりながら、竜樹はジェム達や王子達に声をかけた。
「ぼんおどり、おもしろか、た。」
むにゅ。ほわぁ〜ぁぅ。
ニリヤはねむねむだ。
「踊り、楽しかったねえ。」
うふ、うふ。
ネクターも、踊りは下手じゃなかったので、楽しめたようだ。
「犯人たち、すっごく驚いてたね!」
ニシシシ。オランネージュも、混乱作戦がうまくいって嬉しそう。
「ほんとに奴隷じゃなかったみたいで、良かった!」
アルディ王子は、気になっていた事が解決したので、ニコニコ顔である。プルルン!と濡れた耳尻尾を振って、ルルーにガーゼ布で拭かれはじめた。
そう、魔法使い犬耳シャルムは、奴隷契約で従属されてはいなかった。魔法で描かれる奴隷の紋もどこにもなかったし、契約書も交わしていない、とのこと。騙されたのだ。
あの手首の戒めだけは、強固なもので、出所を突き止めなくてはならないが、まずは良かった。
「明日は、またお菓子作ろうか。お菓子作るのに、パンセ伯爵家のエフォール君、一緒しようーって、呼んでみる?」
ぜんそくの、足が悪い、コリエ嬢の息子さん。
「おともだち•••!あそぶー。」
「呼ぼう呼ぼう!」
「足、治るといいね!」
「おんなじ病気の、こ!」
「じゃあ午前中は、いい子でお勉強。ジェム達はお仕事だしな。明日は〜、たまごボーロと、メレンゲクッキー作りだ!どっちも、また新聞のアンケートで使うぞ。場所や聞く人変えて、聞いてみるだろ?」
「「「は〜い!」」」
「貴族や商人達にも聞きたいけど、どこ行けば聞けるかなぁ。」
「王宮で聞けば、文官達や第一騎士団は貴族の出身の者たちですよ。」
教えてミラン君。いつでも情報、ばっちりである。
「商人達は、商店街でいろいろなお店に順繰りに伺って聞けばいいですかね。」
「なるほど。そんな事してるうちに、カンセ達の調べも、進むだろうしね。」
ふむ。竜樹は、交流室に敷かれた布団に、王子達とぺたんと座り。
「じゃあ〜、今日のうちに、パンセ伯爵家のエフォール君においでよ明日、って送ってもらっていい?夜仕事で申し訳ないけど。」
「大丈夫ですよ。承りました。」
タカラが、一礼をして、お誘いの手配をする。
「もう、何もかも明日だ明日!今日は〜、疲れた。寝よう!」
パタリ。竜樹が布団に倒れ込んで毛布を掻き寄せると、王子達もアルディ王子も、そしてジェム達も、パタパタ、キャハハと布団にダイブしていった。
もそもそ、集まって眠る。
布団は干されて浄化され、お日様の匂い。
アルディ王子も、知ってるみんなと一緒で、人肌に、落ち着いて眠りについた。
次の日の朝。
バラン王兄に叩き起こされた竜樹は。
「酷いじゃないか竜樹君!私のいない所で、知らない音楽に踊り!ぼんおどりとは何だい!?私にも教えてくれるだろうね!」
バラン王兄様。
ブレない。




