ザ 音頭
オルビット伯爵家の次男カンセは、コリエ嬢をやっとこの手に抱けると、興奮しすぎて鼻血を出していた。
手下にしている荒くれ、幼い頃からの腐れ縁、バタイユに連れられて、自分の部屋へ。
カンセは、何かと興奮すると鼻血が出やすいたちだったので、自室に鼻血対応キットがあるのだった。綿で鼻の穴を詰め詰め。
バタイユは、小さい頃から、カンセに何でもくれた。
道を歩いていて、すれ違う子供がぬいぐるみを持っていれば、カンセは、あれが欲しい、と言う。バタイユは、買ってくるかぶんどってくるかは分からないが、必ず同じものを持ってきてくれた。
今度も、コリエ嬢を、何とかして呼び寄せてくれる手筈になっている。
「バタイユ、もう鼻血は大丈夫だ。コリエ嬢の所へ行こう。」
「本当に大丈夫ですか、坊ちゃん。坊ちゃんは、繊細なんだから、心配だぜ。」
バタイユは、カンセの事が心配で堪らない。
あんなコリエだか何だかという女など、どうでも良いが、カンセが欲しいと言うなら、連れてきてやる。家族のいないバタイユは、カンセの言う事を聞くのだけが喜びで、カンセが喜べば自分も嬉しいのだ。
「あぁ、コリエ嬢。驚くかな。」
「驚くかもしれねぇが、坊ちゃんちがこれだけ豪華なら、なびきもしましょうよ。」
そうだよね。
カンセは、うひ、と笑って、ドアを開けてーーー。
どどん ど どん カッ カ
どどん ど どん カッ
はぁ〜〜あぁああぇ〜♪
「何だこの音?」
「ーー何でしょうね?」
庭から、不思議な唸り声が聞こえてくる。
「そうーそうー。腕を〜右に、くるくる、流して、ぱっ。左にくるくる、流して、ぱっ。真ん中手を合わせて〜シャンシャンシャン。」
竜樹が、真ん中で、解説しながら踊っている。それを取り囲んだ子供達や、お姉さん達が、真似をしながら、くるりと輪になって踊っている。
日本人なら、耳馴染みのある、盆踊り、竜樹の元の世界の、地元の音頭だ。
スマホからは、エンドレスで曲が流れている。
活動報告に病にかかった件について、ちょろっと書きました
元気になってきました




