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大きなまほう


「お前、シャルムじゃないか。こんな所で、何してんだ?」


キジトラ猫耳冒険者のパーシモンが、茶髪に毛先が黒い長髪をくくった灰色ローブ、犬耳獣人に声をかける。

シャルムと呼ばれた獣人は、

「パーシモン?ノワール、マロン、どうしてここに?」

とアタフタして涙目のまま首を傾げる。


「どうしてじゃないよ。シャルムが転移させたんじゃないのか?俺たちは、広場にいたんだよ。ギフトの御方様や王子様達も、新聞少年と、お菓子配って話を聞いてくれたんだぞ。俺たちのためにだ。」

むん!とパーシモンが、腕組みをしてシャルムに説明する。

「そうよ。シャルム、また大雑把で大きすぎる魔法使ったんじゃないの?すみません、この人悪い獣人じゃないんです。大雑把なだけで、間違えたんだと思うんです。」

熊耳女子のノワールが、シャルムの頭を引っ掴んで、ぺこぺこと下げさせる。

「全く、困った魔法使いだなぁシャルム。俺たちに用があったのか?普通に探して声かけてくれよ。」

獅子耳男子のマロンもため息ついて一緒にぺこりぺこりと頭を下げる。


シャルムは、頭を下げながら、すみません、すみません!と周り中に謝り倒した。

「俺が転移させたかったのは、この髪飾りの女性、なんですよぉ〜!」

掲げたのは、リボンにキラキラした石の、櫛がついた髪飾り。


コホ、とホコリっぽい部屋に、咳を始めたアルディ王子、そしてルルーが、周りを浄化して、癒しの魔道具使って、としてるのを、みんなで見守っている間に。

花街の可憐なお姉さんが。

「その髪飾り、もしかして、私のではないかしら?」

見覚えがあるのだけれど。

戸惑いながら、口にした。


「そう、コリエさん、貴女を、呼ぶように脅されて、俺。」

犬耳をしょげさせて、シャルムが、くぅーんと鼻を鳴らす。


「やだ、私一人だけ選んで転移なんて、何故?その髪飾り、確かこの間、一人のお相手に、是非にと言われてお渡ししたものよ?皆さんを私の事情に巻き込んでしまったのかしら!」

申し訳ありません!

可憐なお姉さん、コリエが、頬に手を当てて驚き眉を下げる。


「いやいや、何だか、シャルム君?に、命令した人がいるんだよね?シャルム君、どういうことか、教えてくれる?」

竜樹がさっと、マルサ達、騎士団を抑えて、それでも騎士達が剣に手をかけて、ザッと周りを囲む中、首を縮めてシャルムは、うんうん、うん、と頷く。

「俺、細かい魔法使えなくて、でも大っきくは使えるから、魔法効力無効シールドかけてるとこでも、それよりおっきい範囲かこんで力技で呼べちゃうんです。」

「それで王子達や竜樹まで呼べたんだな。」

マルサが、納得する。竜樹のマントの留め具や、マルサの剣飾り、オランネージュやネクター、ニリヤにアルディ王子の服に留めてあるピンには、攻撃魔法や転移魔法無効の効果があるのだ。

「私も、お出かけの際は、誘拐回避のために、魔道具の飾りをつけていますわ。」

コリエに続いて、私も、私達も。お姉さん達が、追随する。


「その方法だと、一人だけ選んで呼ぶのは難しいって言ったのに、やらないと奴隷契約解消しないし、手首の戒め締めて飛ばしちゃうぞって、言われて。」

「奴隷ぃ!?シャルム、お前、奴隷になったのか?禁止されてるだろ!奴隷契約って!」

パーシモン、猫目をきらん!と見開いてびっくりである。

「知らないよぉ!冒険者を普通にやってただけなのに、突然、賠償金払えって手首にいましめ嵌められたんだ!痛いの嫌だし。連れてこられた先にいた、坊ちゃんと、坊ちゃんの家来に、殴られて、手首いましめに締められて、抵抗できなくて•••。痛いの、やだよぅ。」

うぐ、うぐ。ポロ、ポロ。


「おにいさん、いたいのやなの、かわいそうだよ。」

「どれい、いけないんだ。」

「父上が禁止してるのに!」

ニリヤがポンポン竜樹のズボンを叩き、ネクターが口をとがらし、オランネージュが、ふん!と怒りを示す。

「ワイルドウルフの国の冒険者、どれいにしたら、この国とモメちゃう。そんなのだめだよ!私、助けてあげたいよ!」

アルディ王子も、国の関係を慮って、キャスケット帽を脱いで手に、眉を下げ、耳をピコピコさせた。


「そうだな、みんな。所で坊ちゃんて誰?それに、何故シャルム君以外、今、ここにいないの?」

竜樹は、この、地下室的な所にシャルム一人、というのが不思議に思える。


「うっうっ、坊ちゃんは、オルビット伯爵家の次男、カンセ様です。俺、大きい魔法で、何か壊したらしいです。花街のコリエさんを、愛人にしたくて、呼べって。坊ちゃ、カンセ様に、コリエさんだけ呼べるだろ、て言われたけど、出来ないって言ったのに。」

グスリ、と涙を拭いて。

「今、カンセ様は、もうすぐコリエさんが来るってなったら、興奮し過ぎて鼻血が出て、大騒ぎして出て行った所です。家来達も、呼んでおけよ!て言って、カンセ様を運んで行っちゃった。言われたから、魔法かけてみたけど•••。」


王子様達に、ギフトの御方様まで。

グスン、グスン。

「出来ないって、言ったのにぃ。」


ガタン、ガチャン。

キイイイ。


みんなが、一つしかないドアを、振り返って。


「•••獣人?子供まで?肉の匂い???ウチの地下室で、大勢で、何を?大きな魔法の波動が、感じられたが。」


あ、だんなさま。


シャルムが、ポツリと呟く。

ガッシリした、また動作に品がある、黒褐色に銀毛、ちょびひげ熟年のおじさまだ。ドアから、身を半分出して、不思議そうな顔をしている。


「旦那様とは?私は君を知らないが。」

「カンセ様に、旦那様にバレるな、って言われて、俺、チラッとお顔見た事が、あの、王子様達とギフトの御方様もいて。」

「えっ!?」

はた、はた、と顔を巡らせて、竜樹のマントの留め具と、王子達の顔を見て、くわっ!と口を開け、旦那様は。


「申し訳ございません!私、オルビット伯爵家の、当主ドネと申します!当家の次男、カンセが失礼を!私の首で済むものならば、どうか、どうか!」

ガタガタ震え、真っ青になり、跪いて平身低頭だ。


「あー。首はいらないので。あのー。喉乾いちゃったなぁ、ドネさん。みんなも、お茶をいただこうか?」

「はいっ!ただいま支度させます!」


「おちゃ、いただこー。」

「お話、しましょう!」

「お話、クフフ。」

オランネージュが何だか黒いが。

アルディ王子も、

「お話できそうで、良かった。」

ホッとして。

「普段偉そうにしないけど、竜樹ってやっぱり、偉い人なんだな!」

ジェム達は、感心している。

お姉さん方は、お淑やかに、お出かけ後に、お茶もいいわね、なんてニコニコだ。


「王宮に、みんなで喉が渇いたから、たまたまテレビを観に来て広場にいた、オルビット伯爵様にお呼ばれして、お茶してる。と、誰かに報告させて下さいますか?心配してると困るから。竜樹が言ってる、と。」

「はい、すぐ!ありがとうございます、ありがとうございます!」

「私達の館にも、誰かをやって報告させて下さいますか?逃げたと思われたくありませんの。」

コリエさんが言い、そうねそうね、とお姉さん達も。


そうして、竜樹達は、騎士団に守られながら、人数が多いので、広間に移動した。

屋台の親父も、貴族様のお屋敷なんて、初めて入りますぜ、と、何だか嬉しそうだった。






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