スキル発動
クロロは華麗に食物庫にしのびこみ、オレンジような果物を盗みだした。
庭にいるマリのところへそれらを届けるとマリは明るい顔でお礼を言った。
「助かったあ。食物庫へは子供は入れないからどうしようかと思ってたのよね。」
「これくらいはなんてことないにゃ。それよりこの果物なににつかんだにゃ?」
「練習に使うの。いままであたし自分の能力を怖がってばかりいて、知ろうとしなかったでしょ?
どこまでできるか試してみたいの。」
そういってマリはフルーツを地面に置いた。少し離れて、フルーツに向けて手をかざした。
全神経を集中し、フルーツをスキャンしようと念じる。
「スキャンスキル発動!!」
と声に出していってみる。
…が、何も起こらない。
「あれれ?」マリは首をかしげてみる。
今度はもっと手を近づけて、もう一度叫ぶ。が、何も起こらない。
「どゆこと???」
そういえば、スキルの発動はどうやったらできるか神様に聞くのを忘れていた。
「スキャンスキル使ったのって最後はいつだったっけ?」
マリがクロロに聞いてみた。
うーんと、とクロロは考える仕草をした。
「一昨年くらい?
新しい先生が来た時にプロフィールみたときにゃん」
そういえば、それ以来使っていないことを思い出した。
しかもその時はたまたま見れただけで、どんなきっかけで見れたのか分からずじまいだった。
「うーん、、どうしたものかな。」
そう言って今度はフルーツを手に取ってみた。
「スキャン発動!」ともう一度つぶやいた。
と同時にフルーツのプロフィールが目の前に広がった。
フルーツの名前、取れた場所やもぎ取った日にちが読める。
それと合わせてフルーツの中身もイメージ画像として読み取れる。
さすがにフルーツなので弱点はなかったが、果実が詰まっていることや種の位置などは把握できた。
今度はふっとフルーツを手から離した。ぱっと目の前から情報がなくなる。
(なるほど…触れないと発動しないのか)
「よめたのかにゃ?」
クロロが聞いてきたので、マリはうなずいた。
もう一度触れてみる。今度はつぶやかなくても、意識を集中するだけでスキャンできた。
「…まてよ?嫌な予感がする」
ふと、神様の言葉を思い出した。
『消滅魔法には発動条件があり…』
『スキャンスキルとセット』
(たしかそんなこと言っていたような…)
マリはあわてて、消滅魔法を使おうとフルーツに手をかざした。
今度はフルーツに触れていない。
消滅魔法特有の呪文を唱えてみる。
「バラス・・・!」
案の定、何も起こらない。
今度はフルーツに触れて消滅魔法を使ってみる。
スキャンスキルで把握していた種に焦点を合わせる。集中してつぶやく。
「バラス・・・!」
すると、今度は種の位置の果実が一瞬強く光った。
急いでもう一度スキャンしてみる。種は消滅していた。
「つまり…まとめると‥」
「スキャンスキルも消滅魔法も触れていないとできないってことかにゃん・・・?」
言わんとしていたことを先にクロロに言われてしまった。
「発動条件、めんどくさ・・・」
マリは思わずつぶやいてしまった。
「まあそんなこといわず練習続けるにゃ」
クロロはにやにや笑いながら、マリを元気づけた。
「そして種なしフルーツになったらクロロに食べさせてニャン♪」
マリはしょうがなく、フルーツの種がなくなるまで消滅魔法の練習に没頭することにした。