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元カレを地獄に落とせる最適スキル

「えーと、つまり元カレ三人に復讐しに行くんじゃな?・・・

まあ行く気になったならよかったよかった。結果オーライじゃ。

じゃあ気が変わらんうちにさっさとスキルを選ぼうかの」


簡単に事情を説明すると神様は困惑しながらも、協力してくれるようだった。

というより、あまり理由は気にしていないようだった。

事情に突っ込まずにサクサク話を進める。


「これは習得できるスキル一覧と簡単な説明のリストじゃ。」

そう言って文字びっしりと書いてある二、三枚の紙を渡した。

しかもよくよく見るとエクセルで作ったような一覧表になっている。

PR動画の出来と比べるとえらい差だ。


「これ超見にくいんですけど…」


「しょうがないんじゃ。まだこの世界はできたばかりで住人も少ない現状…

こういうところで経費削減するのじゃ。さっさと気になるスキルを選ばんか」


そう言って神様は叱咤してきた。

なるほど、この世界に強引に転生を勧めてきたのはこういう事情があったのか。

それにしても新規ユーザーを増やすためとはいえ、PR動画には予算さけるのにいざ行くのを決めるとスキル選択の段階でこの仕打ちとは、なかなかの悪徳商売である。

そう思いながらリストを見ていくと初めに飛び込んできたスキルがあった。


「『不老スキル…成長がある程度で止まり、老いません』…!

なにこれめっちゃいいスキルじゃない!!私これがいいです!!」


「おー、目の付け所がやはり女性じゃの。じゃあ一つ目はそれでいくかの。他二つはどうじゃ?」


「どうじゃと言われても…もうちょっとまって」


そう言ってもう一度リストに目を通す。

せっかく転生するんだったら強いスキルがいい。

復讐という目的を達成するためといえばなおさらである。

しかしこんなに種類がある中で選べと言われると迷ってしまう。


「ふむ。この火を扱うスキルとかどうじゃ?

火だったらいろんな技の応用が利くし、なにより少年漫画のようでかっこよかろう」


迷っている私を見かねて神様は、紙のページの真ん中あたりを指さした。

なるほど火属性スキルはよさそうに思えた。しかし…


「うーん、熱いのは苦手なんですよね」


「そうかの・・よいと思ったのじゃがの~」


残念そうに神様は顔をゆがめた。

もう一度リストに目を落とす。

すると火属性スキルのひとつ上に書いてあるスキルが気になった。そのまま読み上げてみる。


『「消滅魔法(小)…黒魔法の一種で敵の一部分を消滅することができる。※取扱注意』

って、なにこれ!めっちゃ強そう」


「あーそれかの。あんまり応用が利かないのでおすすめはしないんじゃが…。

とりあえず相手の腕とか足とかを消滅できるんじゃ。

ただ強力な魔法じゃから簡単な発動条件がある。」


「(小)っていうのはどういう意味なんです?」


「あんまり大きい範囲で町が消滅してしまっても困るじゃろ。

範囲が決められていて消滅できるものはこれくらいじゃ」


そういってグレープフルーツぐらいの大きさを手でジェスチャーして示した。

ふーん、と真理は相槌をうった。


「それじゃあ、男の×××も実際に消滅できるわけね」


そうやってさっき叫んだ言葉を思い返しながら、にやりと笑っていった。


と、同時に冗談でいった言葉がふいにいいアイデアだと思えてきた。


「いやいや、まさか・・そんな恐ろしいことしないじゃろ・・??ね・・?」


神様はさっきのように内またになりながらこちらを見てきた。

が、真理のなかでは黒い思考がむくむくと膨らんでいた。


元カレたちに振り回されて棒に振った約10年間を思い出してみる。

浮気し、二股し、そして最後にはボロ雑巾のように自分を捨てたクソ男ども。

思えば元カレどもすべての悪行はあの股間についているイチモツのせいだったように思える。

復讐といってもただ殺すだけでは私の気が済まない。

彼らの股間を消滅させ、生き永らえながらも男としての喜びがない地獄のような人生を送らせる。

これこそ私のなすべき復讐の形だと真理は思った。


(そして、そのみじめな生活をおくりながら死ぬのをみて最後に私が笑うのである…!)


真理は心の中で高笑いをした。これで完璧だ。

真理の中で復讐のシナリオが完全に出来上がったのを感じた。


「きめた!私この消滅魔法にする!」


「えー…めっちゃ引くんですけど…。」


神様はまた女子高生のようにつぶやいたが、最終的には反論しなかった。


「じゃあ最後のスキルは自動的にきまったようなものじゃの」


そう言って三枚目の後ろあたりのスキルを指さした。真理がそのまま読み上げる。


「『スキャンスキル…相手の体の状態を把握し、弱点を見つける』」


「これがなくては消滅魔法も宝の持ち腐れじゃ。ほぼ消滅魔法とセットといっても過言ではない。」


なるほど、たしかに復讐のことばかり考えていたがファンタジー世界では敵と戦うことだってあるだろう。

スキャンスキルは弱点がわからないモンスターに挑むときに大いに役に立つかもしれない。

消滅魔法と組み合わせれば鬼に金棒だ。

けれど、なんだかしっくりしなったので違うやつにしようと反論しかけたとき、神様はまた口を開けた。


「それにいい男を見極めることにも役に立つはずじゃ。

‥‥おぬし下界では相当男運がわるかったようじゃからな」


そういってあきれて笑いながら再度勧めてきた。

真理はそれを聞いて釈然としないながらも、スキャンスキルを三つ目に決めた。


「じゃあこんなもんかの。あとは転生した後自分でなんとかしなされ。」


「え?もう終わり?もう転生するの?」


「そうじゃ。あんまりウダウダ言って転生する前に気分が変わられても困るからの。

さっさと光の方面にあるきだすのじゃ。

あの光の向こうで新たな人生が始まる。」


そういって真理の後方の遠くを指さした。

なるほど振り向いてみると、光がさしている。


真理はとまどいながらも、光の方面に一歩ずつ踏み出した。





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