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 私、復讐のために転生します!



 もう善行はしない。いいことをやっても見返りなんかない。

どうせなら悪いことをやって自分だけいい汁を吸いつくしてから死にたい。

もちろん恨まれるかもしれない。それでもいい。

いいことだろうが悪いことだろうが、結局自分にもどってくることはないのだから。

それだけが今世の学びだったと思う。


そう、高柳真理は今日死んだ。


思えばつまらない人生だった、と真理は思った。

享年は35歳で独身。

美人でも不細工でもなく普通に生きてきたが、夢だった結婚することなく死んでしまった。


「く、くやぢい…」


気が付けば泣いていた。死んだのに涙が出るとはどういう了見なのだろうか。

とにかく悔しくて悔しくて涙が出ていた。

結婚することを渇望し今まで苦手な婚活に取り組んでいたというのに

目的を果たさずして孤独に死んでしまうとはなんたる屈辱。なんたる惨めさなのだ…


「どれもこれもあいつらのせいだ…」


今度は怒りが込み上げてきた。絶対に許さない。そう誓った過去がまざまざと思い出されてきた。

歯を食いしばり、拳を握る。爪が拳に刺さる。

許さない。

許さない。

許さない‥‥。


「あいつらの×××を滅してやる!!!」


気が付けば叫んでいた。我ながら思いのたけを込めた叫びだったと思う。

恨みを吐き出すとスッキリした。


フ―と息をつき、後ろを振り向くと、全体的に白いおじいさんがぬっとあらわれた。


「えー、、めっちゃ引くわ……」


そんなことをつぶやいている。心なしか股間を押さえて内また気味だ。

白いひげが長く、白いローブみたいなものを羽織っている。


真理はすぐに合点がいった。


「え、、神様ですか?!」


白いおじいさんはうなずきながら、真理の前に近づいてきた。


「そうじゃ我は神なり。それにしても最近の女性は恐ろしいこと口にするもんじゃのう…」


「いいんです!これは私の心の叫び・・・・というか願望?」


「余計恐ろしいわ。そんな願望すぐ捨てることじゃ。おぬしは転生するんじゃから」


そうやって神様はぱちんと指を鳴らした。テレパシーで私の脳内に転生先のPR動画をながれる。


『魔法、冒険、種族を超えた友情あふれるファンタジー世界。広大な世界観にあなたは魅了され、充実した人生を送るでしょう!いまならオプションで無料スキルが三つも選べる!』


壮大な音楽とともにナレーションが流れた。これではまるでネトゲのCMだ。


「どうじゃ?なかなか面白そうな人生を送れそうじゃろう?」


そういってニコニコと笑う神様が絶妙に胡散臭い。それにもう真理の返事は決まっていた。


「いやです。転生しません」


「え!!なんで??」

神様はうろたえている。矢継ぎ早に続ける。

「いやいやいや、最近はやりの転生じゃよ?しかもファンタジー世界じゃよ?三つもスキルついてくるんじゃよ??絶対無双できるじゃろ!」


「そーいう問題じゃなくって…私もう生きるのめんどくさいんです!できればこのままでいたい」


そういって理沙は腕を組んでプイと横を向いた。

また転生していろいろ人生をかき乱されるのはごめんだ。

特にファンタジー世界とか治安が悪いだろうし、冒険にあふれられても困る。


「あー、またこれじゃ…」


そういって神様は頭を抱えた。が、すぐに持ち直して今度は強い口調で言った。

「…けどそうはいっても転生はするんじゃ。それはもう決まったことじゃ。」


「えー、イヤです。ここにずっといる。」


そういって理沙は駄々をこねその場に座ることにした。

神様は一瞬うろたえが、今度はそうかとしょんぼりした。


「困ったのう。おぬしは下界での体験がトラウマ化して生きる気力をなくしてしまったんじゃな。

最近はそういう人間が多いのう。どうすればその気になってくれるかのう」


そういって嘆きながら頭を抱えた。

神様はしばらく黙り込んでいたが、ふいにそうじゃ!と叫んだ。


「おぬしが下界で出会ったものたちは大体この世界に転生しておるんじゃ。下界にいたときに仲良かった人間たちともう一度会えるんじゃぞ。どうじゃ?転生しても会いたい友人などおらんかのう?」


「!」


真理はふと会いたい人たちを思い浮かべた。

両親、高校時代の友人、先生、大学時代のサークルメンバー…。

思えばいろんな人がいたなと思う。

もちろんいい人ばかり・・・・じゃなくて悪い人もいた。

そうだ、忘れもしない。


例えば、元カレ①とか元カレ②とか元カレ③とか…。


彼らの顔を思い浮かべるとまた怒りが込み上げてくる。


(あいつら、絶対に許さん‥‥!!!)


真理は怒りをあらわにしてもう一度心の中で叫んだ。

とりあえずそうして感情を整理すると真理はあることに気づいた。


(つまり、この世界に私が転生すれば、同じく転生した元カレどもにも遭遇することもありうるということ…)


そうおもうとげんなりした。余計転生するのが嫌になり、また断ろうと神様に伝えようとしたが、ふと真理の中の黒い思考が芽生えた。


(まてよ…)


(つまり・・・・やつらへの復讐のチャンスもあるってこと??)



「…どーじゃ?行く気になったかのう」


ふと気が付くと目の前に神様が心配そうに真理の顔色を伺っていた。

真理は自分が与えられている条件を今一度整理した。

スキルは3つ。しかも選べる。そしてそこに転生した元カレたち。


…なるほど、うまくいく気しかしない。


真理は思いっきり悪い顔でニヤリと笑いながら神様にこう答えた。


「行きます! 私、復讐のために転生します!」



「ん・・・?復讐って‥だれにじゃ??」

予想外の回答に神様が当惑の表情を浮かべた。



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