第八話(ジル視点)
「お父様! 絶対におかしいですよ。なぜミネアが私のフリをしてシュバルツ殿下と婚約しているのですか!?」
「知らんよ。そんなことは。ワシにも何が何やらさっぱりだ。知っていれば替え玉なんてことをするはずがないだろ」
「あー! 考えるだけで腹が立ちますわ! お父様! 私がシュバルツ殿下と結婚する方法を考えてくださいな!」
どう考えても理不尽極まりありません。
私の婚期が遅れて、ミネア姉さん如きがベルゼイラ王国の第二王子の妻になるなんて。
どうして真面目に聖女として活動してきた私がこんな仕打ちを受けねばならぬのか……責任者を出せと言いたい気分です。
「無茶を言うな。ミネアがジルでないこと、つまり人質として別人を差し出したなどバレれば我が家の責任追及は免れない。ワシが爵位を失えばお前も路頭に迷うことになるのだぞ」
お父様は私がまるで駄々っ子がわがままを言っているような感じの口ぶりでまともに取りあってくれません。
そりゃあ、人質の替え玉がバレると国際問題に発展しそうなことくらい私だって理解しています。
ですから、替え玉がバレることなく私とミネアを入れ替えて欲しいと願っているのですが、お父様にはそのニュアンスが伝わらないみたいです。
「お父様、こうは考えられませんか? 無能なミネア姉さんがシュバルツ殿下と婚約をしているこの状況――これは大ピンチであると」
「大ピンチ……だと? どういうことだ?」
「ですから、ミネア姉さんがボロを出す可能性が非常に高いということですよ。魔力が貧弱ということが知られれば一発で彼女が偽りの聖女であることが白日に晒されるとは思いませんか?」
そうです。ミネア姉さんの魔力はカブトムシよりも貧弱。
それこそ魔法の一つでも使わせたら粗が見えること間違いなしなのです。
何やら怪しげな古代の術とかの勉強はしてたみたいですが、そんな小手先芸で乗り切れるほど聖女は軽くありません。
「そ、それは確かにあり得る。ぬぐぐ、まずい、まずいぞ、それは。ミネアがちょっとでも魔法を使わざる得ない状況になるだけで我が家は終わりではないか!」
ようやくお父様は危機感を感じて下さいました。
まったく、どうしてこんな簡単なことすら想像が出来ないのでしょう。
我が家が助かる道は私とミネア姉さんを誰にも気付かれずに入れ替えることだけですのに。
「何とか、何とかならないものか。どうにかしてミネアを連れ戻さなくては」
「結婚式の前にベルゼイラに行くしかありませんよ。家族なのですからミネア姉さんと面会くらいは出来るはずですわ。そこでスキを見て私がミネア姉さんと入れ替わります」
「な、なるほど。さすがはジルだ。瞬時に我が家を救う方法を考えてくれるなんて。ワシは聡明なお前が誇らしいよ」
お父様があまりにも考えなし過ぎて呆れてしまいましたが、何とかミネア姉さんと入れ替わる作戦を実行するように誘導することが出来ました。
シュバルツ殿下と結婚するのは私です。ミネア姉さん、あなたには引っ込んで貰いますよ――。




