第七話(ジル視点)
「聖女としての仕事は無くなりますし、ミネア姉さんでいるのも退屈ですわ」
「まぁまぁ、ベルゼイラ王国の獄中よりもマシだろう。人質生活は惨めだぞ。なんせ人として扱われないのだからな」
双子の姉であるミネア姉さんが私の身代わりとして隣国の人質になって一週間が経過しました。
当然、私がミネアということになりますので、聖女として魔物の駆除や結界の生成などの仕事はお休みとなります。
ミネアが無能なせいで仕事が無くなるなんて、と愚痴を溢したのですがお父様は人質生活よりマシだと当たり前のことしか言ってくれません。
そうではなくてですね。もっと良い縁談を持ってくるとか、色々とあるでしょう。
以前、そろそろ私も身を固めたいと希望を話したときは乗り気でしたのに、話が違います。
「お父様、私の縁談の話はどうなりました?」
「いや、だからお前は一部の役人を除けばミネアということになっているから。ワシもついお前を持ち上げるためにミネアの評判は下げてしまったからな。どこの家もミネアと縁談と聞くと嫌な顔をしてな」
「どれだけミネア姉さんは嫌われてるのですか。まったく居なくなっても私の足を引っ張るなんて。イライラしますわ」
何ということでしょうか。
ミネア姉さんの評判が最悪なせいで私の婚期が遅れるなんて……。
あの女は本当に生まれて来なければ良かったのに。
まぁ、私の身代わりになってくれたのだからその一点だけは感謝しています。
ミネア姉さんはこの先、死ぬまでの間……女としての幸せどころか人としての尊厳も手にすることが出来ずにいるのですから。
それも私の足を引っ張った償いとしては当然のことですけど。
「旦那様、ベルゼイラ王室から手紙が届いております」
そんな会話をしている中、使用人のハンスが手紙が届いたとお父様にそれを手渡します。
差出人がベルゼイラ王室から? 何でまた、隣国の王室から手紙なんて……。
まさか、あの無能極まりないミネア姉さんがヘマをしたとか? あり得る話ですが、どうなのでしょう。
「べ、ベルゼイラ王室からだと? 一体何事だ? ……ふむ、ベルゼイラ王国の第二王子シュバルツ殿下とジル・アウルメナスの結婚式への招待だと!? ど、どういうことだ!?」
「わ、私とシュバルツ殿下の結婚ですか? な、な、何て素敵なお話でしょう! お父様、こんなにも素晴らしい縁談を何故に隠していたのですか?」
「違う、違うぞ、ジル。ここでのジルはミネアのことだ。ミネアがジルとしてベルゼイラに行っているのだから。シュバルツ殿下はジルとして人質となったミネアと結婚すると言っておるのだ。ええい! ややこしいな!」
「……つまり、ミネア姉さんがシュバルツ殿下と一緒になると? はあああああああっ!?」
一ミリも意味が分かりません。
なんで、私の代わりに惨めな人質生活を送っているはずのミネア姉さんがシュバルツ殿下と結婚することになっているのですか?
ちょっと待ってください。そもそも、身代わりなどしていなかったら私がシュバルツ殿下と結婚する話になっていたということですよね。
あの女、私の幸せを掠め取ったということですか。
――絶対にゆるしませんわ!




