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第六話

「ジル、聞いたぞ。魔力量の数値の記録を大幅に更新したらしいな! やはり予言は正しかった。あなたの大いなる力はきっと国を繁栄に導いてくれるだろう!」


 診断とやらを終えて、昼食をシュバルツ殿下と取ることになったのですが、彼は興奮気味で私の肩を抱きながら笑いかけます。

 どうやら、精霊術による魔力量の上昇が思った以上に大きかったらしく……それが殿下の耳に届き上機嫌になったようでした。


 と、取り敢えず誤魔化せて良かったです。

 いきなり魔力の量を測ると言われたときはドキリとしましたが……。


「しかし分からんな。53万MPもの魔力量を保持する規格外の聖女を人質として簡単に手放すことに応じて休戦協定を結ぶとは。聖女とはそもそも国の守りの要。戦争は確かに我が国が優勢だったが、聖女ジルが本格的に国土の防衛に回ればひっくり返った可能性もあったのでは?」


 シュバルツ殿下は笑顔を消して、突然考え込む仕草をされます。

 確かに故国であるネルラビア王国はジルを手放す気は毛頭ありませんでした。

 こうしてシュバルツ殿下の婚約者になることが分かっていたら一考の価値はあったのかもしれませんが、基本的には彼女のような人材を外に出すことはあり得ないというスタンスです。


「ミネア・アウルメナスだったか?」


「えっ……?」


 いきなりシュバルツ殿下が私の名前を呼ばれたので、私は思わず飛び跳ねそうになるぐらい驚きました。

 まさか、正体がバレたとか? いえ、それにしては静かというか……。


「いや、あなたの双子の姉の名前だろ? 流石に休戦協定というデリケートな話で別人を寄越すなどという非常識な行為をするとは思わんが、魔力量を測るまで少しだけ影武者の可能性を疑っていたのだ。あなたがミネアで……ジルのフリをしてこちらに来たのではないかと、な」


「……で、殿下、そんなことがあるはず無いではありませんか。ふふっ、あり得ませんよ」


 シュバルツ殿下は私がジルの偽物だと疑っていました。

 魔力の量を測ったのはやはり私がほんものかどうかを見極める為でしたか……。


 私は心臓が緊張でバクバクしていることを感じつつ笑顔で返事をします。


「いや、分かってる。姉のミネアは聖女でないと聞いているし、魔力も大したことがない事は調査済。あなたは間違いなくジルに決まっている」


「信じていただけたようで何よりです」


 あ、危ないところでした。

 あのとき精霊術を素早く使っていなかったら……とんでもないことになっていましたね。


「だが、思った以上の力だったから正直に言ってかなり驚いている。最初は感嘆したが、ネルラビアはそれを良しとしたのか、と」


「……そうですか。しかし実際に私はここに居ります。そしてシュバルツ様の妻になることも受け入れました。我が祖国、ネルラビアは約束を守った――それで良いのではありませんか?」


 あまりにも勘の良いシュバルツ殿下に内心ビクビクしながらも、私はどうにか彼を納得させようと声をかけます。

 

 危機を乗り切ったと思ったにも関わらず、力の量が多すぎるということから、こうも不審がられるとは。


「ジルはここに居る、か。うむ……、すまなかった。考え過ぎる性分なんだ。不快な気分にさせたことを許して欲しい。……そんなつまらない話よりもお互いのことを話そう。私たちは夫婦になるのだからな」


 シュバルツ殿下は顎を触りながら私に謝辞の言葉を述べました。

 今は納得していますが、これは心してかからなくてはなりません……。


 楽しそうに私の趣味趣向を尋ねる殿下の澄んだ瞳は私の心の内をいつか見透かしてしまいそうでした――。

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