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第三話

「ようこそ! ベルゼイラ王国へ! 聖女ジル様……、ささやかながら歓迎パーティーの準備は出来ております。ささ、会場入りの前にまずはお着替えをどうぞ」


「ぱ、パーティーですか……? えっと、き、着替えというのは、そのう」


 馬車に乗って、宿場町で一泊してまた馬車に乗り……国境沿いの関所を越えて、さらにそこで一泊して……長い道のりを経て、ようやくベルゼイラ王国の王都に辿り着きました。

 空は既に暗くなっており、月明かりによって照らし出された立派な宮殿は故郷の城の二倍以上のサイズに見えます。

 

 その宮殿の大きさに圧倒されていますと、私の世話係の一人だというアルベルトという初老の執事風の男性が私に歓迎の言葉を述べました。


 彼によるとこの宮殿で私の歓迎パーティーをするとのことですが、にわかに信じられません。

 だってそうでしょう? 私は人質としてこの国に連れて来られたのですから。

 歓迎などされるはずがないのです。そもそも世話係なるものがいること自体不思議なことでした。


「あ、あのう。アルベルトさん……。パーティーの為の着替えっていうのは――」

「ええ、もちろん分かっておりますとも。着替えは女性の世話係に任せておりますので、私は外で待機しています」

「い、いえ、そうではなくてですね……」


 私はパーティーが開かれることについて、そもそも疑問しかないのですが、アルベルトは私の疑問を察してはくれません。

 それどころか他にも世話係がいること仄めかします。


 そして、着替えの場所として案内された部屋には小柄なメイド服を着た女性がいました。歳は15歳くらいでしょうか……。


「本日よりジル様のお世話をさせて頂く、ニーナでございます。お疲れのところ申し訳ありませんが、シュバルツ殿下がどうしてもパーティーをと切望されていますので、お付き合いをお願いします」


 女性はニーナと名乗ると、シュバルツ殿下こそが歓迎パーティーの主催者だと言われます。  

 シュバルツ・ベルゼイラ殿下といえば、この国の第二王子であり……その優れた指揮能力で故郷の軍隊を幾つも葬ったとされる戦場の天才。

 戦争は彼の活躍によりベルゼイラが若干優勢だったにも関わらず、休戦協定を飲んだのもまたシュバルツ殿下の鶴の一声だったと聞いています。聖女を人質として要求したことも含めて……。


 つまりシュバルツ殿下こそが私がこの国に来る要因を作った張本人なのです。


「シュバルツ殿下はジル様にお会いすることを熱望されているとのことですよ。……これで、完成です。お綺麗ですわ」


 鏡の中の自分の姿を見て私はあ然としてしまいました。

 見たこともないようなきらびやかなドレスにアクセサリーの数々。どうやったのか分からないくらい綺麗に整えられた髪や爪。

 化粧などさせてもらえず、オシャレなどもってのほかでしたのでこの変身ぶりに声が出ませんでした。

 ニーナは何者なのでしょう。短時間でこれほど人を大変身させるなんて――。


「さぁ、参りましょう。パーティー会場はこちらです」

「おおっ! よくドレスが似合ってらっしゃる。殿下もお気に召すでしょう」


 着替えが終わって部屋の外に出ると、待機していたアルベルトが私にお世辞を言ってくれました。

 ちょっと待ってください。流されるまま着替えましたが、これからパーティーなのですよね? 私、パーティーなど参加したことほとんどないんですけど……。


 そう思ったのも束の間、私は二人に案内されるまま……宮殿にある立派なパーティー会場へと入りました。


「ジル様だ! ジル様がパーティーに来られたぞ!」


 会場入りした瞬間に誰かの声が響き渡り、一気に私の方に視線が集まりました。

 

 ど、どうやって躱しましょうか……。そう思っていた瞬間、それどころでは無いほど混乱する出来事が起きてしまいます。


「聖女ジルよ。予言に従って君と結婚したい」


 敵国に人質としてやってきた私に対してのプロポーズ。

 その上、相手は――休戦協定の立役者、第二王子のシュバルツ殿下でした――。



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