第一話
12/15から、六日間連続で毎日【完結作品】を投稿しています。
今日はその三作品目となります。
それでは、出来れば最後までお付き合いをよろしくお願いします。
アウルメナス家は代々聖女を輩出してきた名家であり、生まれつき高い魔力の者が多い家系です。
その中でも双子の妹であるジル・アウルメナスはアウルメナス家の歴史の中でも特に強い魔力を持って生まれており、最高の聖女として名を馳せました。
逆に私ことミネア・アウルメナスは双子の妹とは違って魔力が乏しく、生まれてすぐに聖女になる素質はない落ちこぼれだと烙印を押されます。
アウルメナス家では魔力の量こそが価値観の全て。
妹のジルは幼いときより持て囃され、姉の私は死んでも構わないと言わんばかりの扱いを受けていました。
少しでも妹の機嫌を損ねると食事抜きは当たり前。魔法の実験台として何度も痛めつけられたり、両親に何か気に入らないことがあると、真冬だろうと一日中外に出されたりしました。
そんな私は何とか家族に認めてもらおうと、必死で努力します。
古代文字を独学で勉強して、古文書に書いてある精霊術という自然界のエネルギーを少しずつ分けてもらって自らの力に変換する術を、血の滲むような努力をして修得したりしました。
これなら聖女に匹敵するだけの力量を発揮することが出来る。そんな自信を持って両親に術を披露しようとしたのですが――。
「弱者の考えた工夫など見るに値しない」
「生まれながらの落ちこぼれであるお前には何の期待もしていない」
両親たちは少しも私の精霊術に興味すら持ってくれませんでした。
こんなに悲しいことがあるでしょうか。家族の一員になりたいと考えていたのは私の独りよがりの夢で、既に両親たちは私のことを虫けら以下の価値としてでしか見ていなかったのです。
最高の聖女だと名高いジルがいれば家族は幸せ。
生まれてすぐに落ちこぼれの烙印を押された私は只の邪魔者でした。
そんな折、私の卑屈な考えを更に肯定するような出来事が起きます。
長く我が国と争っていた敵国であるベルゼイラ王国が休戦に応じると表明したのです。
ある一つの条件がつきましたが――。
「休戦に応じる代わりに聖女であるジルを寄越せですって? それは何と無茶を仰る。ジルは我が家の宝ですよ。そのような申し出が受け入れられますか」
「まぁまぁ、アウルメナス伯爵。落ち着いてくれたまえ。休戦協定で年間に何万人の犠牲が無くなるか君も分かるだろう?」
「しかし、ジルは……あの子は自慢の娘でして。この国にとっても無くてはならない人材ではありませんか!」
妹の聖女ジルが人質になることこそベルゼイラ王国の出した休戦協定に応じる条件のようです。
最高の聖女だと名高いジルを手にしておけば、この国もおいそれと手を出さないと読んでの条件なのでしょう。
まさか、あの子を人質にしたいと言い出すとは。父も声を荒げて王宮から来た役人に承服出来ないとします。
「だから、ほらジルには双子の姉がいるではないか。見た目だけは瓜二つだし。替え玉に出来ないかと聞こうと思ってな」
「あー、ミネアのことですか。なるほど、あれにも利用価値がようやく出来たか」
役人がジルの代わりに私を替え玉として差し出せと父に提案したとき、彼は両手をポンと叩いて納得するような仕草をしました。
まさか、父はあっさりと私のことを敵国への人質にしても良いと決断したのですか……。
胸にポッカリと穴が空いたような気分になりました――。